September 16, 2023

和製「国際」マナーとしての「ノックは3回」とマナーメディア:Part 3:マナーメディアと日本社会

「ノックは3回」は少なくとも1980年代には日本現代作法会が作り提唱していたもので、その後元客室乗務員たちが広め、近年就活界隈を中心にビジネスマナーとしてゆっくりと広まりつつあるようにみえる。Part 1、Part 2に続き、Part 3では、この背景にある、日本社会とマナーを伝えるマナーメディアとの関係について考える。

Part 1:「ノックは3回」はマナー違反(公開済)
Part 2:女性の「呪い」もしくは「武器」としてのマナー(公開済)
Part 3:マナーメディアと日本社会

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September 15, 2023

和製「国際」マナーとしての「ノックは3回」とマナーメディア:Part 2:女性の「呪い」もしくは「武器」としてのマナー

Part 1では、「ノックは3回」という謎マナーが「国際プロトコール」でも「国際マナー」でもないという点について書いた。引き続きPart 2では、これがどのように生まれ広まってきたのかについて考える。

Part 1:「ノックは3回」はマナー違反(公開済)
Part 2:女性の「呪い」もしくは「武器」としてのマナー
Part 3:マナーメディアと日本社会(予定)

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September 14, 2023

和製「国際」マナーとしての「ノックは3回」とマナーメディア Part 1:「ノックは3回」はマナー違反

職業柄、大学生と就職活動に関する話をすることが少なからずあるが、そこで気づかされることのひとつは、彼らが就活に対して強い不安を抱いていて、それがゆえにどうでもいいと思われるようなことにとらわれていることだ。

その中のひとつに、「ノックは3回」がある。就活における重要なプロセスの1つである面接の際、面接室に入る前にノックをする(なぜかそうすることに決まっているらしい)。それは2回ではだめで、3回であるべきだというのである。ゼミ生に聞くと、全員がこれを知っていた。それだけではなく、「2回ノックだと面接で落とされる」と恐れているのだ。この謎マナー、少なくとも一定以上の年齢の人にとってはあまりなじみがないかもしれない。私もそうだった。そもそも意味がわからない。

私のゼミでは毎年テーマを決めて本を作りコミックマーケットで売るという活動をしている。今年出た著書『就活メディアは何を伝えてきたのか』(青弓社刊)もそこから生まれたものだが、そんなこともあって、2023年度のテーマは「ビジネスマナーとメディア」とした。そこでまっさきに取り組んだことの1つがこの「ノックは3回」だった。学生たちが意味のないおそれを抱いたまま就活に臨むのはよろしくない。

このために古今のマナー本などを調べていくうちに大変面白いことがわかってきたので、「ノック3回」は国際マナーなのか、「ノックは3回」はどこから生まれたのか、及び「ノックは3回」が広まった背景とメディアとの関連について、3回に分けて手短に紹介する。これから就活に臨む大学生にとっても意義があるだけでなく、どうしてこのような謎マナーが広まったかを知ることは、社会についてよりよく理解するうえでも有用かと思う。

Part 1:「ノックは3回」はマナー違反
Part 2:女性の「呪い」もしくは「武器」としてのマナー
Part 3:マナーメディアと日本社会(予定)

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August 23, 2023

映画『バービー』を経営学的にみる

※注意
以下では映画『バービー』に関するいわゆるネタばれ的な情報が含まれる。既に公開日からかなりたっており、個人的にはネタばれを問題視すること自体どうかと思っているが、念のため。

この夏、北米はじめ世界各国で大ヒットを飛ばしている映画『バービー』、日本でも都市部では好調のようだが、全国的にみれば、世界での状況と比べいまひとつという感があるようだ。

『バービー』の興行収入、女性監督作品の史上最高額を更新(2023/8/4)
映画『バービー』全世界興行収入1700億円を最速突破、日本でも週末公開作品で1位の好スタート(2023/8/14)
世界的大ヒットの映画『バービー』、日本では滑り出し低調 それでも見ておくべき2つの理由(2023/8/19)

日本での状況に関しては、日本公開直前に批判を浴びたいわゆる「バーベンハイマー」事件(『バービー』と、同日公開でこれも北米で大ヒットとなっている『オッペンハイマー』とを組み合わせたファンアートの中に原爆を軽く扱ったものがあり、これを配給会社ワーナーがソーシャルメディア上で好意的にシェアしたことに対して日本国内で反発が広がりワーナー日本法人が謝罪に追い込まれた)の影響もいわれているが、そもそも下記リンク先にもあるように、バービー人形自体が日本では㈱タカラトミーのリカちゃん人形と比べ必ずしもポピュラーではない(そもそもバービーは一般的な日本の家には大きすぎる。そのうえリカちゃん人形と大きさがちがいすぎるので、バービー人形を持っていてもリカちゃん人形を持っている子といっしょに遊べないというネットワーク外部性が働く)ことが影響しているように思われる。

「バーベンハイマー」のミーム、日本で物議 配給会社が謝罪(2023/8/1)
北米で記録的大ヒットも日本では不振の『バービー』 理由はバーベンハイマーではない(2023/8/17)

世界的にみれば、この大ヒットは作品自体の面白さもさることながら、作品全体を貫くフェミニズムが評価され、また同時に一部の批判を呼んでもいることによるといえるだろう(批判もまた映画を見る理由にはなる) 。このあたりについては語りたいこともあるが、多くの人が言及しているし、そもそも専門外なのでここでは触れない。

『バービー』の上映禁止、ネットミーム炎上、バービー人形燃やし騒動…世界中でアンチ旋風が吹き荒れたのに全世界興行収入約12億ドル達成ヒットのナゼ(2023/8/20)
フェミニズム映画『バービー』が政治的配慮の末に犯したミス(2023/8/16)
映画『バービー』に戸惑う日本人…「フェミニズム臭」消した宣伝で困惑の声も(2023/8/18)

ここでは、映画『バービー』を、バービー人形のメーカーであるマテル(Mattel Inc.) の経営という観点からみてみる。

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February 24, 2023

「就職戦線」から「就活」へ:就活の大衆化と個人化

「就活」ということば

いま、就職活動に言及するとき、「就活」と略すことが多い。このことばがいつごろ生まれたのかは定かではない(おそらく「就職活動」とそう変らない時期にその略語として生まれたのだろう)が、メディアで多くみられるようになったのはそれほど古いことではない。

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February 14, 2023

なぜ「就職協定」は破られるのか

まもなく3月1日、企業の大学新卒者採用活動の「解禁」日を迎える。いよいよ今年の就活シーズンを迎えて云々といった調子の報道がまもなく出てくるタイミングだろう。

といってもこれは正確な表現ではない。政府が2022年3月28日付で経済団体等に対して行った「要請」では、この日は採用活動にかかる「広報活動」の開始日だ。

内閣府「2023(令和5)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請



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September 17, 2021

新聞はHPVワクチンをどう報じたか

いま「ワクチン」というと新型コロナウィルス感染症のワクチンがまず頭に浮かぶが、もう1つ、今話題になっているワクチンが、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウィルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチンだ。2008年のWHOの報告によると、子宮頸がんは全世界で年間約50万人に発生し、約27万人が死亡しているとされる。

WHO (2008) “Cervical cancer, human papillomavirus (HPV), and HPV vaccines: Key points for policy-makers and health professionals.”

その主な原因はHPVの感染であり、有効な予防方法としてHPVワクチンの接種がある。世界の多くの国で接種が行われており、日本でも行っていないわけではないが、政府が積極的勧奨を行っていないこともあり、接種率はきわめて低い。

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September 11, 2021

「45歳定年制」を実現させたいなら

サントリーホールディングスの新浪剛史社長が経済同友会の夏季セミナーで、45歳定年制を提唱したとして一部で話題になっている。
45歳定年制導入を コロナ後の変革で―サントリー新浪氏(時事通信2021年9月9日)

記事だけでは具体的な内容はわからないが、上記報道では「社会経済を活性化し新たな成長につなげるには、従来型の雇用モデルから脱却した活発な人材流動が必要」「会社に頼らない姿勢が必要」と述べたようなので、よくある「給料の割にパフォーマンスが悪い中高年社員を追い出して若い元気な人と優秀な一部の人だけ残したい」という類の考え方であるようにみえる。

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September 06, 2021

結果か機会か

ツイッターで書こうと思ったらちょっと長くなってきて連投ツイートだと長すぎそうなのでブログ記事にしてしまえ、というわけで以下ひとくさり。

きっかけはこれ。ここ数日話題になってる「高市氏を女性が支持すべきか」問題、個人的には「女性の社会進出を望む立場なら政治的立場にかかわらず高市氏が首相になることを支持すべき」などとは思わない。そもそも高市氏に首相になってほしくないし、性別より政治的立場の評価が優先するのはむしろ当然だ。

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September 02, 2021

CoeFont CLOUDを試してみたのだが

CoeFont CLOUDというサービスがある。自分の声で音声合成ができるというサービスで、面白そうなので試してみたのだが、結果からいうと、少なくとも自分で作ったCoeFontは実用にはならなかった。

自分のCoeFontを作るにはたくさんの文章を読み上げる。3つほどプランがあって、自分のは松竹梅の竹。確か400くらいの短い文章を読み上げたかと思う。それから一晩待つとできあがりというわけだ。

文章はこないだ書いた自分の記事から抜粋したもの。おおむねよくできていて、ああ自分の声はこんな感じなのかと思ったが、自分の発音が不明瞭なのか知らんが、一部がことばになっていない。音がおかしくなっていたところは「空襲の心配がなくなり」ということばなのだが、崩れ方がちょっと変で理由がよくわからない。あと「お茶」も一部発音がおかしかった。もともと自分自身が発音不明瞭であることは自覚していて(だからこそこういうものがあるなら利用しようと思ったのだ)、かなり意識してはっきり読んだつもりだったのだが、だめだった。

自分のオンライン授業動画にこれで声を入れられないかと思って試してみたのだが、これではちょっと使いものにならない。運営に質問しようとも考えたがサイトを見る限りどこにも問い合わせ先の記載が見つからないので、とりあえずここに出してみる。

このサイトはプロの方のCoeFontのほか、一般人もCoeFontを作って収益化できるようで、いろんな人たちが作って売っているわけだが、こういう人たちのは大丈夫なのだろうか。YouTubeとかにはいろいろ作品も上がっているようなので大丈夫なのだろうが。

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August 15, 2021

『草生す屍』よりよい余生

お茶を少々かじることもあって、骨董というほどではないがいくつか古いものを持っていたりする。親が遺したものもあるが、多くは買ったもので、江戸時代の茶碗だのといった茶道具的なものもあるが(むろん特段値打ちものでもないのでふつうに使っている)、それとはやや離れたものもけっこうあって、まあそういうものが好きなんだろう。もともと子どもの頃から古銭を眺めてニヤニヤするタイプだったので、三つ子の魂百までとはよくいったものだと思う。

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June 26, 2021

『映画大好きポンポさん』感想

気になってた作品。超よかったのでもう一度見てきた。いろいろ語りたくなるが、映画作りがテーマなだけあって、ネットをざっと眺めたらすんごい詳しそうな人たちがけっこう突っ込んだレビューや論考を出しているようなので、ちょっとだけ個人的な(偏った)感想と、あと連想をいくつか。

 

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March 12, 2021

「子供・若者育成支援推進大綱(案)」パブコメ書いてみた

いま一部で話題になってる内閣府の「子供・若者育成支援推進大綱(案)に対する意見募集について」パブコメ、ちょこっと書いてみた。
締切は3/15。募集期間がやったら短いんだがよほど意見されたくないんだろう。というわけで皆さんもぜひ。

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August 28, 2020

ジブリアニメにみる日本女性のあゆみ

毎年、夏はジブリアニメがテレビ放映されるわけで、今年も例によって放映されたわけだが、2020年8月21日(金)に放映された『コクリコ坂から』(2011)を見ながらふと頭をよぎったことがある。

それは登場人物、特に女性キャラクターたちの世代差だ。それぞれの物語の中ではその時代設定の中で登場人物を追うわけだが、一歩引いてみると、「この人は自分とどのくらい歳がちがうんだろう?」「この物語のこの人物とあの物語のあの人物は何歳ぐらいちがうのだろう?」などと思うことはないだろうか。まあそういう話だ。

というのも、ジブリアニメの中には、『コクリコ坂から』もそうだが、昭和あたり以降の現実の日本社会を舞台にしたものがいくつかあるからだ。もちろん現実そのものではないにせよ、それらの作品群はそれぞれその時代の空気をよく伝えているように思われる。それらに登場するキャラクターも、典型的かどうかは別として、その時代に生きた人間像として現実味がある。あの作品のあの人物はこの作品の時代には何をしていただろう?などと想像してみたくなるわけだ。

以下の計算はWikipediaその他のネット情報によるところが大きいので正確性は保証しない。ネタ程度にご覧いただければ。ジブリ作品の舞台となった時代の背景については5年ほど前に書いたものがあるのでそちらもご参照(この記事の記述と一部異なるところがある)。

ジブリで振り返る20世紀日本
http://www.h-yamaguchi.net/2015/01/20-2fa8.html

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March 20, 2020

『Fukushima 50』感想

Fukushima 50』については別記事で書いたのだが、そこで書かなかった映画自体の感想についてごく手短に。

 

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