APPLESEED vs. INNOCENCE
もちろん、「INNOCENCE」にも熱心なファンが無数にいる。定かではないが、興行的には、上映館の数からみて、おそらく「INNOCENCE」のほうが多く売り上げているのだろう。ならばウェブで流れている評価の傾向に差があるのは何なのか。士郎正宗氏自身も、両作品に対する態度には微妙な温度差があるようだ。
どちらも原作マンガから設定や物語の骨格を受け継いでいるが、原作とは色合いの違う作品だ。「INNOCENCE」は押井守監督の趣味を存分に発揮して押井テイストでまとめあげたのに対し、「APPLESEED」は、原作マンガからうまく「映画的」な要素を抽出して(誤解を恐れずにいえば)ハリウッド的な娯楽作品に仕立てている。どちらも、コアな士郎ファンには不満が残るようだ。「APPLESEED」の場合には、原作の設定とちがうことへのダイレクトな不満が目立った。原作ものにありがちな不満だ。
にもかかわらず、「APPLESEED」への評価には、どこか「まあいいか」という寛容さがあるものが多かった。「INNOCENCE」への評価では「ついていけない」といった態度が目立ったのとは毛色がちがう。ひょっとすると、娯楽作品と芸術作品の差なのか。「APPLESEED」は娯楽作品としての要素が強く、「INNOCENCE」は芸術作品としての要素が強い。当然観客層も少しちがっていて、評価する基準もちがう。娯楽としてなら許容できるものも、芸術としては許容できない、ということかもしれない。
あるいはもっと単純に、押井守監督に対する「期待」の高さの反動かもしれない。なんにせよ、さまざまな作品が楽しめることは、それはそれで悪くない。ぜいたくな悩み、ということか。
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