デフレ対策…ホントですか?
4月16日、谷垣財務相は、韓国済州島で開かれているアジア開発銀行(ADB)年次総会の総務演説の中で、「日本は依然として緩やかなデフレ状況が継続している」との認識を示したうえで、「政府・日銀一体となって、デフレ克服を目指して強力かつ総合的な取り組みを行っていくことが重要だ」との考えを示した(記事はこちら)。 現在のいわゆる量的緩和政策を継続することを指しているのだろうが、これは本当に「デフレ対策」のためなのだろうか。
もちろんデフレ対策としての意味があるにはちがいないだろう。日本の物価は、部分的には横ばいないし上昇に転じたところもあるようだが、全体としては未だゆるやかに下落傾向が続いているようだし。しかしもともとこれまで「デフレ」と騒がれてきたものは、ごく低率のものであって、どうにもならない破滅的なデフレスパイラル状態とは言いがたかった。デフレはすでに終わったという意見もあり、またもともとデフレという表現自体がミスリーディングだったという人もいる。いずれにせよ、デフレへの懸念は、政策課題としての重要性が少なくとも以前よりは大きくないはずだ。
むしろ量的緩和の関心事は、低金利を維持することにあるのではないか。今金利が上昇すれば、まだまだある借金漬けの企業や、貸し出し先に困って国債を大量に抱え込んだ金融機関の経営を直撃するからだ。現在の低金利状態を考えれば、ほんの少し金利が上がっただけで、企業の利払いが滞って新たな不良債権が大量に発生したり、金融機関が保有する国債の相場が暴落する結果となるおそれがある。政府として真に困るのはこちらのほうのはずで、したがって量的緩和策の最大の狙いは金利を上げないことにあるとみるほうが適切だと思う。
公式な場での閣僚の発言であるから、もちろん建前が入るのはある程度やむをえないのであろうが、もう誰もがわかっている図式なのだし、今さらとりつくろうこともなかろうと思うのだが。
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