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May 19, 2004

年金問題:いいかげんにしてくれ

年金問題はいよいよ混迷の度を深めている。やれ未納だ未加入だと数十年前にまでさかのぼって加入歴を調べ、少しでも未納やら未加入やらがあれば辞任だ辞退だと大騒ぎする。急務のはずの年金制度に関する議論はいったいどうなったのだ。私たちはこんな議論のために議員報酬を支払っているのか。もういいかげんにしてくれ。

未納、未加入問題を政争の具にした政治家の問題はいうまでもないが、それを煽り立てたマスコミの「罪」はさらに重い。特に、マスコミの人々が年金問題を「自分たちには火の粉の及ばない問題」として扱っていることにはこの上なく腹立たしさを覚える。センセーショナルな見出しと世論を煽る挑発的な論調を、自らの意見としてでなく「国民の声」だの「有識者の意見」だのの衣を借りてでかでかと掲載したり放映したりする。いざ何かいわれても、都合の悪いことが起こっても、自分のせいではない、といえる巧妙なエクスキューズだ。

テレビの有名キャスターは、返り血を避けられなかった。幾人もが自らの未納だか未加入だかを暴かれ(自ら調査したのかもしれないが)、謝罪したり出演を見合わせたり。しかし、その中でも田原総一朗氏の対応には疑問を禁じえない。田原氏は、「申し訳ない」としながら、番組降板は考えていないとした(記事はこちら)。そのわずか数日前に同氏は、テレビ番組で民主党の管代表に対して「自分の未納を棚に上げて閣僚を未納三兄弟呼ばわりしたのだから辞任せよ」と声高に主張していたのだ。これと同じ論理がなぜ自分には適用されないのか。テレビ番組でみた田原氏の弁明は、「未納も未加入も脱税のようなもの」と熱弁で管氏を追い詰めた人とはとても思えない歯切れの悪いものだった。私は別に田原氏が辞めるべきだと主張するものではない。そもそも未納・未加入を進退問題に結びつけるほうがおかしいのだ。そんなことを放映する時間があるなら、あるべき年金制度の議論をもっと放映すべきだ。常に消化不良に終わるあの番組の討論の時間をこんな後ろ向きの問題のために使うなど愚かとしかいいようがない。まさにその意味で、田原氏には大きな責任がある。管氏の進退問題に対してではなく、国民をミスリードした主張に対して、である。

新聞やら週刊誌やらも含め、名が知られていないマスコミの人々にも同じことがいえる。政治家の中に未納者・未加入者を探すひまがあったら、年金制度とそれに関わる議論についてもっとわかりやすく、ていねいに伝える努力に資源を使うべきだ。百歩譲ってどうしても政治家の未納者・未加入者の問題をとりあげたいなら、自社の社長から現場の記者に至るまでの年金加入歴をすべて調べて公表し、少しでも(もちろん学生の期間も含めてだ)未納・未加入歴のある者は即座に会社を退職させてからにしてもらいたい。そこまでする覚悟がないなら、中途半端な「正義の味方」面はやめることだ。私たちに必要なのは、「悪」を裁くヒーローではなく、私たちの将来を私たち自身が作っていくための建設的な議論だ(そのヒーローとやらが未納者・未加入者の年金保険料をすべて支払ってくれるなら別だが)。

何度でも繰り返すが、もう後ろ向きの中傷合戦やら暴露大会やらはやめよう。自分に累が及ぶからではなく、将来につながらないからだ。誰かに任せれば何とかしてくれるわけでもない。自分のこととして考え、自分たちのために、自分たちの次の世代のために議論しよう。政治家を非難して溜飲を下げているようでは、この国の将来は危うい。

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Comments

年金改革法案の審議も最終段階に入り、政府与党は明日の委員会で(強行?)採決に持ち込もうとしているようだ。何故法案成立を急がなければならないのか、その真意の裏には厚生官僚、族議員、厚生労働省外郭団体、特殊法人等によって食いつぶされた年金の運用実態があるからだ。
年金に関するデータベースはすべて厚労省の大型コンピュータに隠されたまま、情報は全て厚労省官僚がコントロールし、坂口大臣でさえも実態が知らされていないそうだ。厚生労働委員会が正確な情報なしで何を議論してきたのか、全くの茶番としか言いようがない!
今回の政府案の保険料、将来の給付水準のシミュレーションには重大なウソが隠されている。今の内閣、閣僚レベルではそのからくりを見抜けないだろう。
議員の年金未納、未加入だけがマスコミに大きく取り上げられているが、そんなことより国民にとってもっと重要な年金そのものの中身について、時間をかけてでも具体的な数値をもって実態を徹底的に検証しなければならない。政府は来年4月施行を決めているようだが、万が一この法案が成立すれば、国民にとって取り返しのつかない大きな代償を支払うことになる。
野党は結束し明日の採決を阻止しこの法案を是非廃案に持ち込んでもらいたい。

Posted by: 大和  尊 | June 03, 2004 01:36 AM

コメントありがとうございます。強い問題意識を私も共有します。そのうえであえていいますが、官僚や議員を責めても問題は解決しません。「責任がある」という非難が先に立つと、彼らは過度に防衛的になり、かえって問題の解決を妨げる結果となるからです。私たちがめざすべきは「よりよい年金制度」を通じた「よりよい生活」なのであり、官僚やら議員やらが頭を下げても辞職に追い込まれても、問題の解決にはなりません。Forward-lookingである必要があると思います。

ところで、この「http://何が問題なのか/」というURLはアクセスできませんがどういうことなのでしょう?入力ミスなのでしょうか。本blogは、匿名(メールアドレスやホームページURLなど、コンタクト先を明らかにしないもの)のコメントは受け付けない設定にしてあります。自分の書くことに「責任感」を持ち、議論をしようとする方に限りたい、という趣旨です。次回コメントを下さる機会があれば、ぜひ正しいURLを記入してください。万が一、この設定をかいくぐるために虚偽のURLを入力したのであれば、本blogの想定する読者ではありませんので、以後書きこみはご遠慮ください。

Posted by: 山口 浩 | June 03, 2004 10:52 AM

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