通貨としての「認知」を「通貨」に:メディア編
ウェブにおける「認知」を通貨として考えられないかとの議論から連想したのだが、blog型のジャーナリズムをビジネスとして成立させることはできないだろうか。Blogのジャーナリズムに与える影響については、一種のオープンソース的な見方や、ジャーナリズムの未来形の可能性を見出す意見、プロの特権を奪う「mass amateurization」だとの見解などいろいろあるが、これらはいずれも「見識あるアマチュア」の非営利活動としてのblogを前提としている。金銭をからめることは、少なからぬblog信奉者にとって「邪道」なのかもしれない。しかしだ。
価値あると読者が思った文章に対して何らかの貢献をしたいと思うことがあってもいいとは考えられないか。少なくとも、商業サイトなどで有名ライターを起用してblogを公開している例(本blogが採用しているニフティの「ココログ」もそうだ)は、おそらくライターに原稿料なども支払われているのではないかと推測する。
こんなことを思いついたのは、既存のジャーナリズムに対してかなり幻滅しているからだ。販売量増加狙いで扇動記事を濫発する「もどき」メディアは論外としても(それらの中には貴重なスクープ記事が混じっていることもあるにしても、だ)、特定の政治的な主張を「中立的なジャーナリズム」の皮をかぶって堂々と展開し、批判すれば「報道の自由」を盾にとって強弁するなど、目に余ると感じることが多い。「事実」の報道に関しては、こうしたプロのメディアに頼らざるを得ないとしても、意見を押し付けられるのはごめんだ、と思っている方は他にもいるのではないだろうか。
(Blogと既存ジャーナリズムの「対決の構図」についてはこちらを参照)
具体的には、何らかのかたちで、コメントやらトラックバックやらに金銭的価値を載せることはできないか、ということだ。技術的には充分可能だろう。金額を自分で選べるようになるといいかもしれない。たとえば私はインターネットへのアクセスサービスの対価としてニフティに対して料金を支払っている人が、その一部を「予算」として与えられて、それを気に入った記事に付与するような方式をイメージする。今気づいたが、以前書いた「苦情市場」の考えに似ている。分類すれば、「mass amateurization」の世界に将来があるという考えに近いだろう。ここでの「アマチュア」は素人という意味ではなく、専門的な教育やら言論界での経験やらを経ていない、という意味である。
もちろん、ビジネスモデルとして成功するためには幾多の工夫が必要なはずだ。ひょっとしたら、金銭を導入しようなどという考えはとんでもない勘違いで、未来のジャーナリズムは現在のblogのような非営利blog型が主流となるのかもしれない。または、現実通貨では難しいが、ウェブ上でだけ使える仮想通貨のようなものを導入しないといけないのかもしれない。わからないのだが、社会を動かす言論がblogの中に生まれるなら、それを支援したいという気持ちなのだ。なんとかならないものだろうか。
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Comments
METAMIX!さんが記事へのdonateを受け付けてますね。また、有料メルマガなどは既に金銭的な還元を実現しているといえるかも。yamaguchiさんの意図するところが記事単位の金銭導入ということだとちょっと違うかもしれませんが。ただ、すぐに金銭に還元できない価値というのもあると思います。例えばGREEで考えると、現状あのサービス自体では金銭を生むのは難しいかもしれませんが、あのサービスを一人で立ち上げた田中氏の人的価値は飛躍的に上がったはずです。
Posted by: so | May 25, 2004 04:04 PM
山口さん、こんばんわ、
おもしろいですね。私も著作権とか、コラボレーションとか、金銭的な価値を超えながら、金銭的な価値をもちうる仕組みがないか、考えています。ビジネスになりそうだし...(はっ、いかん、ここはブログだ!)
その中で、ぜひ山口さんのご意見をお聞きしたかったのは、ウェブ上のコンテンツの価値って、アクセス数とか、コラボの権利とか、数がはければはけれるほど、価値がたかまっていくという感じがするんですよね、なんつうか、逓減でなく、逓増というか...まだ、全然あたまがまとまってないんですけどね。
認知貨幣とリアルの貨幣の接点をぜひさがしたいです。
Posted by: ひでき | May 25, 2004 09:57 PM
blogとjournalismの関係というのはけっこうメジャーなテーマですね
んで、ぼくがぼけ~っと追っかけているやつですが..
とりあえず、
blog関連の研究としてはこんなの始まってるみたいです
「Scholars Discover Weblogs Pass Test as Mode of Communication」(@OJR)
http://ojr.org/ojr/glaser/1084325287.php
(っていうか、まとめということかもしれませんが..まだ読んでません)
で、weblog as journalismとしてはこの辺りがけっこう強いです↓
J.D's New Media Musing
http://www.newmediamusings.com/blog/weblogs/index.html
世界新聞協会のeditor blog
http://www.editorsweblog.org/a_is_blogging_journalism/index.html
・・まぁ、ぼちぼちみていこうかと..
あと、weblogのbusinessとしての可能性について
ぼくがいまのところ持ってるresourceはこんな感じです↓
http://business.seesaa.net/article/149391.html#comment
Posted by: m_um_u | May 28, 2004 05:50 PM