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May 09, 2004

年金問題と閣僚辞任:そろそろ本題に入ろう

年金未加入問題で、福田官房長官が辞任した(記事)。民主党の管代表の辞任論も強まっている(記事)。年金未加入・未払いのある国会議員はまだまだ出てきそうだ(記事)。マスコミは「まだ辞任しない」「なぜ辞任しない」と責め立てる。・・・もういいかげん不毛な議論はやめて、本題に入りませんか?

最初にことわっておくが、私はどの政党の味方でもないし、敵でもない。年金保険料はきちんと支払っている(勤務先の年金基金が、だけど)。それを前提としていうが、この問題で閣僚や議員を辞めさせようとするのは不毛だ。年金法案を推進したり、それに批判を加えたりするのに、自身が年金保険料を支払っているかどうかは、もちろん関係はするだろうが、彼ら(彼女ら、もあるのだろうか?)が辞めても問題は解決しない。問題は、年金制度を持続可能にするためにはどうしたらいいか、という1点だ。法案を審議する立場にいる人々は、辞めるかどうか、辞めさせるかどうかを議論することに時間を使うより、法案をどうするか、制度をどうするかを議論してもらいたい。

さらに根の深い問題はマスメディアのポピュリスト体質だ。マスメディアの多くは「一応」政治的な中立性をもつ報道機関だ「ということになっている」。(一部には政治的に中立でない機関も、報道の名に値しない機関もあるが。)しかし実際には、売上を伸ばそうとしてか、「大衆の声を伝える」と称して、大衆の低俗なほうの声ばかりを拾って政治や政治家、官僚などへの感情的な批判に明け暮れる場合が少なくないように思う。「嫉妬」に訴える情報の流布は、国民の財布を開かせ自社の売上を伸ばすにはいいかもしれないが、問題の解決へと向かうエネルギーをそぎ、かえって社会全体にとって悪い結果を招くことが少なくない。

今回の未加入問題ではっきりしたのは、年金制度がユーザーフレンドリーではない、ということだ。たしかに国会議員やら閣僚やらは、他の職業から転職してくる人が圧倒的多数(おそらく全員)なわけだが、それでも職業柄、この種のスキャンダルには一般の人よりはるかに気を使うはずだ。「わざと保険料納付を逃れた」などという論調の記事を見かけなくもない(たとえばこれ)が、報道などによって簡単に職を失いうる立場にある彼らが、わざとそのようなことをするはずもないし、いかに不注意であったかを書き連ねても、年金制度がよくなるわけではない。

ここで考えなければならないのは、彼らに未納者が続出しているということからみて、会社を辞めたり職業を変えたりした一般の人々が手続きを忘れたり怠ったりすることも当然ありうる、ということだ。過去の未納をとがめるより、今は将来の未納をなくすために何ができるか、議論すべきではないのか。

制度の議論をするとき、既存制度を司る人々は、過去に自分たちがした意思決定の責任を問われるのを警戒して守りに入る。変えたいと思う側は責任を問うことで攻撃する。このように「過去」にこだわった議論に終始していると、いたずらに問題を泥沼化させ、結果的に「間をとる」あいまいな決着に終わりやすい。過去は変えられないからだ。私たちが守らなければならないのは、過去ではなく未来だ。未来をよりよいものにするために、未来をどうするかについて、真剣に議論しよう。議論に必要な情報の中には、負担増が不可避であるなど、私たちが「聞きたくなかった」都合の悪いものも含まれているかもしれない。そうなった「責任」やら、その陰で社会保険庁の役人が贅沢をしたかどうかは、確かに重要な問題だが、最も重要な問題ではない。

最も危惧するのは、国民がこのまま「年金問題疲れ」してしまって、さしたる議論もないままなしくずしにものが決まっていく図式だ。そうした例を、私たちはいくつも見てきたではないか。そろそろ「本題」に戻ろう。過去ではなく未来のために。

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Comments

hmm

Posted by: sports betting | October 14, 2004 03:26 AM

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