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May 14, 2004

ネット通貨としての「認知」:さらに修正

平山氏のblog「HPO:個人的な意見」に対するトラックバックとして書いた「ネット通貨としての『認知』」、およびその「修正」をさらに修正する。(平山さん、何度も申し訳ありません)もし「認知」がネット通貨として成立するなら、インフレーションとなる可能性が高いのではないか。

ただし、「インフレーション」の意味は、平山氏の言われるものとはやはりちがう。インフレとは、モノの価値に対して通貨の価値が下落することだ。今回の場合、単なる認知の交換は物々交換に近いが、もしそれに何らか別の通貨単位をあてはめ、「認知」通貨を作ったとしてみよう。この通貨は、①交換の媒体であると同時に②価値の基準であり、また③価値保存の手段である。この「認知」通貨が保存され、しばらくたってから使われた場合を考えてみる。

「認知」の効果は、通常あまり持続的なものではない。いっとき認知されても、それは急速に忘れ去られるのが普通だ。たとえネット内に記録は残っていても、過去の膨大な記録のほとんどは、振り返られることはない。したがって、ネット経済における財としての「認知」の量は、時間とともに減少していく。これに対し、「認知」の価値を表象する「認知」通貨は、それが価値保存の手段である以上、減少しない。よって、時間の経過とともに、財としての認知の量に比べて「認知」通貨の量が多い状態、すなわちインフレが発生する。

実はこの問題は、地域通貨一般に共通する問題点だ。皆が地域通貨を長期間にわたって保管するようになると、地域通貨を使った取引は減少し、やがて保管された地域通貨の価値自体が下がってしまう。これを防ぐには、地域通貨を流通させ続ける、つまり地域での地域通貨を使った財の交換の流れを継続させていくしかない。いくつかの地域通貨は、負の利子率を設けることでこれに対処しようとしている。つまり地域通貨の口座管理に料金を課することで、消費を促進し、もって地域通貨の価値を保持しようというものである。

これを敷衍すると、ネットの「認知」通貨の価値減少(インフレ)を生じさせないためには、そのコミュニティの中で認知の交換をさかんにするしくみを設ける必要がある。さて、そういったことは果たして可能だろうか、と考えると、インフレーションが起きる可能性の方が大きいのでは、というのが私の理屈である。

つまり、最初のトラックバックで、「『認知』通貨の場合、財と通貨の量に差が出ないからインフレにはならないのでは」と書いたのは、誤りだと思う。同質の「認知」を交換する物々交換なら、インフレにはならない。だがもし「通貨」として成立したとすれば、その際にはインフレになる可能性が高いのではないか。

通貨として成立するかどうかは別として、ネットにおける「認知」の交換活動は、もっとさかんになっていい。その意味で、平山氏のblogはたいへん面白い思考実験だと思う。

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