年金問題:本題はこれから
年金改革関連法が、5日午前の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数によって可決・成立した(記事はこちら)。衆議院での強行採決の後、参議院では野党の牛歩戦術や長時間の演説などの抵抗があったが、結局野党欠席(共産党は出席)での採決となった。
なんだかもう終わったような論調が少なくないように思うのだが、ちょっと待ってほしい。本題はむしろこれからではないのか。
どの党に肩入れするかの問題ではない。ここでいいたいのは、社会保障制度の全般的見直しこそが最大の懸案事項ではないのか、ということだ。確かに法案は成立したわけだが、これで問題が終わったわけではないことは首相自身も認めている。だからこそ三党合意なるものができたのだろう。
そもそも今回の法案を出された時点で、成立そのものを阻止することができないことはわかっていたはずだ。牛歩や長時間演説も、それで廃案に持ち込めるようなものではない。そういうことに時間を使うのは、有権者向けのパフォーマンスのつもりなのかもしれないが、問題の解決には無力だ。むしろ弊害のほうが大きいかもしれない。最もこわいのは、「これで年金問題は片付いた」という言い訳がまかり通る事態、「もうどうしようもない」というあきらめが支配する事態だ。
終わったことを蒸し返しても始まらない。これからすべきことは、年金制度検討の前提となるデータの開示を求め、囚人監視の場で検討を重ね、将来あるべき年金制度の姿を描き出す作業だ。木村剛氏がやっていること は、この方向性に近いのではないだろうか。めげずにこうした作業を続けて、議論を進めて、声を上げ続けていくこと。それが必要なことなのだと思う。
ちなみに「三党合意」と呼ばれるものは、以下のようなものであるらしい。一連の騒動で「三党合意は反故になった」という向きがあるようだが、反故になったかどうかはともかく、年金に関する議論は続けていってもらいたい。
三党合意
年金制度改革に関し、下記の通り合意する。
1.社会保障制度の全般的見直しについて
〔1〕衆議院と参議院ののそれぞれの厚生労働委員会に「年金の一元化問題を含む社会保障制度全般のあり方に関する小委員会」を設置し、年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的見直しを行い、平成19年3月を目途に結論を得て、随時実施を図るものとする。
〔2〕〔1〕にあわせ、与野党により、平成16年度から年金の一元化問題を含めた社会保障制度全般の一体的見直しのための協議会を設置し検討する。
〔3〕年金保険料については、社会保障全体の在り方の検討状況や経済社会情勢の変化などの事情を勘案して、必要に応じ検討を加えていくこと。
〔4〕上記を踏まえ、5月11日衆・本会議において政府案に別紙の付則を追加する修正を行う。
〔5〕衆・厚生労働委員会において、年金に関する委員会決議を行う。
2.年金の未納問題について
〔1〕国民年金の未加入者及び未納者に対する通知、督促を適正に行うための措置を講じさせるものとする。
〔2〕錯誤等による未加入、未納者について、今国会において一定条件の下で、事後納付できるようにするための法的措置を講ずるものとする。
〔3〕民間人から登用される大臣等について、今国会において、国家公務員共済年金に加入できるよう政令改正を行うものとする。
自由民主党幹事長 安倍晋三
民主党幹事長 岡田克也
公明党幹事長 冬柴鉄三
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