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June 22, 2004

年金タスクフォース:過大な期待は禁物

木村剛氏の請求により厚生労働省が公的年金関連の文書を開示すると決定したことから、関連の専門家、およびこの動きを支持する人々の動きが活発化している。木村氏のblogでは、「公的年金タスクフォース発足!」とぶちあげ、賛同者からのトラックバックが相次いでいる。

別に水を差すつもりはまったくないのだが(全文をお読みいただければわかるはずだ)、過大な期待をしている人々が少なくないのではないか、とやや危惧している。

賛同者の意見をみてみると、。「下手なドラマなんかより、よっぽどリアルタイムでワクワクするような展開になっている。きっとマスコミ関係者も含めて、多くの人達が固唾を飲んで見守っているのではないだろうか」とか、「6月25日が楽しみだ」とか、「熱い」思いが伝わってくる。発言に至らない賛同者たちにも、同様の意見は多いのではないだろうか。

こうした方々は、この種の問題の本質がわかったうえであえて書いていらっしゃるのだと思うが、私の危惧は、6月25日を境に年金制度をめぐる動向が変わり、日本が変わるかのような期待を抱く人々が少なからずいるのではないか、ということである。これまで数十年間聖域とされてきた領域に口をはさみ、流れを変えようとする場合、ものごとはそれほど簡単に動くものではない。客観的なデータ分析、まっとうな判断が無視されたり曲解されたり、または悪用されたり骨抜きにされたり、ありとあらゆる「障害」(あえて「抵抗」とか「妨害」などとは呼ばない)が待ち受けていると考えるほうが自然だ。このタスクフォースがこうした「障害」に直面したとき、「なあんだやっぱりだめなのか」と失望され、立ち消えになってしまうおそれはないだろうか。

年金制度のあり方の議論は、それほど簡単に、短期間にまとまるものではない。今の制度とて、専門家たちが数十年をかけて作り上げてきたものだ。大きな船を方向転換させるには、それなりの時間がかかる。木村氏の「専門領域」である金融機関の不良債権処理について、ごく最近までの数年間、「竹中-木村が日本を破滅に追いやる」だの「外資に日本を売り渡す国賊」だのといった批判を受け続けたことを思い起こすべきだ。現在金融情勢が比較的安定しているのは、少なくとも一部には、こうした批判をしのいで不良債権処理を進めてきたことの成果といえる。年金問題についても、似たようなすったもんだは避けられないだろう。それまでタスクフォースは「熱い」思いを継続できるだろうか。

Blogの皆さんを信用しないわけではないのだが、日本の政治の動向をみていると、どうもそうした風潮があったように思われる。「改革」への期待が、成果を待ちきれず、あるいは骨抜きに失望してしぼんでしまい、結果として状況は何も変わらず、という繰り返しだ。以前の記事で「熱しやすくさめやすい」と書いたのはこのことだ。別の言い方をすれば、木村氏と年金問題をとりまく現在の盛り上がりは、2ちゃんねるの「お祭り」と似てはいないか。「お祭り」のようにあっという間に終息してしまっては困るのだ。何せ年金という超長期の問題なのだから。

ついでに付け加えれば、木村氏の周辺で支援の動きが盛り上がっているとしても、それは日本全体からみればまだほんの一部にしか過ぎない。木村氏のblogへのトラックバックやコメントの数が必ずしも増加傾向にはないこと、木村氏からのトラックバック(「かめはめ波」というらしい)先のblogがかなりの程度固定化していることなどをふまえれば、まだまだ「マッチ1本の火」といったところだろう。

要は、過大な期待は禁物であり、結果を急ぐべきではなく、「微熱」を保ってねばり強くとりくむ必要がある、ということだ。不良債権処理問題のときには、blogはなかった。Blogの力が試されるのはむしろこれからだ。「盛り上がり」を作る力があるのはわかった。「継続」する力になりうるか、賛同者を増やす「周知」の力になりうるか、見どころだ。

他人事のように評論しているのは無責任なので、自分に何かできることがあるのか、考えてみることにしよう。

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Comments

大きな期待はしていませんが、一国民として意思表明をして、何か出来ることをサポートしたいと考えています。
その期待を達成できなかった時の失望感から、マイナスの効果があると困りますね。そのためにも、幾つかのレベルの目標設定をして、その目標を何らかの形で表明すべきですか・・・などと自分の出来ることを考えています。

Posted by: maida01 | June 22, 2004 09:02 AM

Tバックをいただきまことにありがとうございます。
山口さまのご意見はいつも示唆に富んでおり、謹んで拝見させていただいております。

たしかに、山口さまがおっしゃるとおり、今回の「公的年金タスクフォース」は、視点によっては、
木村氏を中心としたある種の「浮かれ騒ぎ」のように見えるかもしれません。

私は、以前の自身の blog エントリ
http://www.dmtj.net/pm/comments.php?id=126_0_1_0_C
にて、blogger とは、全市民の中でもごくごく限られた存在である、と書きました。
そして、木村氏が、その存在を市井に解き放つ役割を果たそうとしているとも書きました。

しかし、その木村氏の意図も、blogger たちが動かなければ、なんら意味をなさないものとなってしまいます。
私は、今回のプロジェクトにご賛同し、参加のご表明を個々にいただけた皆さまのメッセージを拝見するに、
この方々は、まさに「動く」ことのできるアクティブな人々であるとの確信を強くしました。

とはいえ、皆さまはそれぞれの職業・生活をお持ちです。本プロジェクトがそれらに差し支えるようであれば、
それは「苦痛」となり、遠からずプロジェクトは破たんしてしまうでしょう。

私は、Linux の最初の開発者であるリーナス・トーバルズがその著書『それがぼくには楽しかったから』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4796880011/mcdmaster-22
で触れているごとく、「楽しむ」ことも、本プロジェクトでのモチベーションを保つ上で欠かせないものと考えます。

もし差し支えないようであれば、山口さまも、ぜひ本プロジェクトにご参画なさいませんか?

Posted by: McDMaster | June 22, 2004 09:04 AM

トラックバック読ませていただきました。山口さんのご指摘もっともと思います。ただし、みんなそれほど過度の期待をしているということでもないと思います。

今回のプロジェクトに賛同を表明している人たちは兼ねてから木村氏のブログを読んでおり、生データ開示も木村氏の蟷螂の斧を振り上げた結果であるのも知っているし、厚生労働省の優秀な方々が長年かけて作り上げたものをそうおいそれと簡単にどうにかできるとは思っていないと思いますよ。

或いは、木村氏に賛同するタイプの人たちは一般より前向きな方が多いと思うので、ブログの文面もそういった心情が出る傾向にあるのだろうと思います。煽ってもいけませんが、鼓舞する気持ちで書いている方も少なくないと思います。

今回の出来事は単なる市民運動ではなく、一種専門家と普通の市民がタッグを組んで考えようというプロジェクトなのでそういう点で意味があると考えています。そういう意味では日本発なのではないでしょうか。

うまく行くかもしれない、うまく行かなくても何らかの形で次につなげることはできると思います。そういう意味もあって私はこの動きに注目し、関わろうと思っています。

そういった中で山口さんがような冷静なコメントを寄せてくださることに意味があるのかな、と思いました。

Posted by: Hiroette | June 22, 2004 03:39 PM

 はじめまして。3104と申します。
このエントリを読ませてしただき、自重するじゃないですが、改めて「年金問題」を真摯に扱わないといけないと思いました。
 Tバックさせていただきましたので報告がてらコメントを書かせてもらいました。

Posted by: 3104 | June 22, 2004 09:58 PM

皆さま、コメントありがとうございます。さすがに年金問題は関心が高いですね。皆さまのことを懸念しているのではないことはおわかりいただけると思います。一般的にというか、これまで何度か、政治シーンでの「お祭り」を見た記憶があるものですから、それと同じようになってほしくないとの思いから、あえて書いたものです。

出生率データの公開を故意に遅らせるなど、いかにもという対応の目立つ厚生労働省ですが、彼らの個人個人(少なくとも多くは)は「悪だくみをする代官」やら「わいろを渡す越後屋」やらではありません。だれか「悪い人」を見つけてそれを叩くことで溜飲を下げ、実態は何も変わらない。こうしたプロセスを、私たちは何度も目撃してきました。今度はそうならないようにしたいものです。怒りに身を任せるのではなく、できるだけ冷静に将来を考えていきましょう。それぞれができることを積み重ねて、大きな流れを作っていけたらいいですね。

Posted by: 山口 浩 | June 23, 2004 10:02 AM

山口さんはじめまして。くりおねと申します。年金オープンプロジェクトに賛同の意を示している者です。
Hiroetteさんがコメントされているように、ある意味「鼓舞する気持ちで書いている」部分も正直あります。そういった部分だけが一人歩きして、祭り的になることは、山口さんのおっしゃる通り本意ではありません。
もしこのムーブメントがマスコミに取り上げられたりした時に、美談仕立てになったりネットワークの可能性とか言って必要以上に持ち上げられ、一時的なネタとして消費されて終わることも実は危惧しています。そのあたり実行メンバーの中でミッションについての意志統一が必要かもしれません。

Posted by: くりおね | June 23, 2004 12:04 PM

ウチの記事へのTBありがとうございました。

 私も同じような懸念を持っておりました。正直言って、「5000枚の紙でキター!」といってそちらにばかり目が向けられ、笑い飛ばそうとする風潮や、役人批判をする風潮が多く見受けられますが、大事なことは、我々が対案を示すことができるか、だと思ってます。

 「対案を作るのは政治家の仕事だろ」と言われそうですが、まともな対案を作った政党があったでしょうか。そこに怒りを感じて、対案をつくるべく資料請求したのだと思ったので、私はその先の、対案を考えているところです。

 木村氏は対案となる考えを示されましたが、bloggerのみなさんはそれについていけてない状況にありますね。

 私も少ない脳みそで一生懸命考えているところです。専門家のようにはいきませんが、木村氏や私の先輩である国会議員に、私のつたない案がなぜダメなのか、その理由を開示してもらうだけでも、ムーブメントになるかなぁ、と考えています。

 

Posted by: cogno_eb2 | June 23, 2004 08:43 PM

ウチの記事へのTBありがとうございました。

 私も同じような懸念を持っておりました。正直言って、「5000枚の紙でキター!」といってそちらにばかり目が向けられ、笑い飛ばそうとする風潮や、役人批判をする風潮が多く見受けられますが、大事なことは、我々が対案を示すことができるか、だと思ってます。

 「対案を作るのは政治家の仕事だろ」と言われそうですが、まともな対案を作った政党があったでしょうか。そこに怒りを感じて、対案をつくるべく資料請求したのだと思ったので、私はその先の、対案を考えているところです。

 木村氏は対案となる考えを示されましたが、bloggerのみなさんはそれについていけてない状況にありますね。

 私も少ない脳みそで一生懸命考えているところです。専門家のようにはいきませんが、木村氏や私の先輩である国会議員に、私のつたない案がなぜダメなのか、その理由を開示してもらうだけでも、ムーブメントになるかなぁ、と考えています。


 

Posted by: cogno_eb2 | June 23, 2004 08:44 PM

山口浩さん、こんにちわ、

記事を書いてみて、あらためて私が山口さんに影響をいかにうけているか実感しました。トラックバックさせていただいたので、お読みいただければ幸いです。

昨晩、トラックバックいただいた件についても、逆トラックバック用記事をただいま準備中です。

Posted by: ひでき | June 25, 2004 11:51 AM

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