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June 30, 2004

米大統領選市場:共和党リードを広げる

アイオワ大学が非営利で運営する「米大統領選先物市場」の最近の動向をお伝えする。前回、6月7日の記事で、今後情勢が「大きく動く可能性がある」と書いたが、その時点での予想通り、共和党のリードが広がりつつある。(2004年初頭から6月27日時点までのチャートはこちら

代表的な「予測市場」として知られるこの市場では、各候補を先物の銘柄と考え、大統領選における得票率が最終的な価格となる。たとえばケリー候補が45%の票を獲得すれば、「ケリー」の価格は$0.45となる。したがってこの先物の現在の価値は、現時点で予測される当該候補の得票率である。作成したチャートは、共和、民主両党の全銘柄の合計価格、いわば「共和党ポートフォリオ」と「民主党ポートフォリオ」の価格だ。

この米大統領選先物市場の動向だけでみる限り、5月下旬を境に共和党側は再び民主党側に対してリードを広げはじめたが、今回のチャートでは、この傾向が6月下旬にきてはっきりとしてきたようにみえる。チャートをご覧いただければわかるが、どちらかというと、共和党の優勢というより、民主党の劣勢といったほうがいいかもしれない。

この傾向は、ニュースなどでみる世論調査などとの結果とは必ずしも整合しない。たとえば6月22日付のニュースでは、米ABCニュースとワシントン・ポスト紙の21日付世論調査の結果として、「ブッシュ大統領の職務全般についての支持率は47%で、不支持は51%に上った。支持率が50%を割り込んだのは、2001年12月以来で初めて。支持率が50%を下回ると、大統領選での再選が危険領域に入った兆候と考えられている。」と伝えている(記事はこちら)。確かにこの世論調査は、同時多発テロ特別調査委員会が、米政府の対応に不備があった点を追求し、イラクとアルカイダ過激派組織に密接な結びつきがあったとする政府の主張に疑問を投げかけた後のタイミングだったので、現政権を担う共和党側に不利な状況ではあった。しかし米大統領選市場では同じ時期に逆に共和党側がリードを広げ、民主党側は大きく値を下げている。

一方、米CBSテレビとニューヨーク・タイムズ紙(電子版)が6月28日夜に報じた世論調査結果によると、ブッシュ米大統領の実績への支持率が42%と低水準にある一方、11月の大統領選挙候補者としての人気では、ブッシュ氏は民主党のケリー上院議員とほぼ互角になっているという(記事はこちら)。つまり、ブッシュ大統領の実績を支持する人は42%(前回5月の調査では41%)、不支持は51%で1カ月前からほとんど変化していないが、大統領候補としての支持率はケリー氏45%(同49%)に対し、ブッシュ氏は44%(同41%)と追い上げているのだそうだ。CBSはこの結果について、経済に楽観的な見方をする有権者が増えたことが一因と指摘した。この見方は米大統領選市場の動向と少なくとも一部は整合的とみることができる。現職大統領としての支持率は低下していても、次期大統領候補としてのブッシュ氏の評価は、少なくとも相対的には、高まってきているのかもしれない。つまりケリー氏が劣勢になっていることを示唆している。

このように、世論調査の結果も必ずしもはっきりしているわけではなく、まだ事態は一進一退といったところだろう。イラク情勢その他多くの流動的要因があり、今後の情勢は未だ闇の中といってもよい。ただ1ついえるのは、予測市場が世論調査や専門家の見解とは異なった「有権者の声」を拾い上げた可能性がある、ということである。これが結果的に正しいのかどうかはまだわからないが、少なくとも、充分注目に値する情報ではないだろうか。

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