年金改革:出生率低下はチャンス
厚生労働省がまとめた2003年の人口動態統計で、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)が過去最低の1.29となることが明らかになった。先進国の中でも最低水準だそうだ(記事はこちら)。
事態はゆゆしきことだが、このニュースそのものは、こと年金改革に関する限り、制度見直しのきっかけと考えることができるのではないか。
政府は少子化対策として、子育て支援策などをさまざま打ち出していくようだが、現在の傾向がそう簡単に反転することはないだろう。この問題は、女性だけの問題ではなく、男性も含めた社会全体のあり方の問題だからだ。育児休業が認められても昇進に響けば躊躇する女性は少なくなかろう。男性が残業続きで遅く帰宅している家庭では、育児負担が女性にしわ寄せされてしまう。これらをパッケージとして改善していかないと、効果はあらわれにくいだろう。他の先進国以上に少子化が進んでいる現状をみれば、「女性の社会進出が原因」などという意見は単なる屁理屈といわざるを得ない。
したがって、少子化に即効性のある対策は期待しにくい。したがって、年金制度も現在の傾向を反映して考えなければならない。今回可決された年金改革関連法案が前提としていた人口予測はかなり甘いものであることが厚生労働省自身によって裏付けられたのだ。与党も野党も、いろいろ主張やら経緯やら利害やらあるだろうが、法律の前提条件が崩れたから再検討するということであれば、合意の余地があるのではないか。未納だとか強行採決だとか、つまらないことで対立するのではなく、将来の年金制度をどうするかで意見を戦わせてほしい。少子化は日本の将来にとってゆゆしきことだが、せめてそれを、現実を見つめ直して将来を改めて考えるきっかけにしてはどうか。与党も野党も、過去にこだわているときではない。
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Comments
山口浩さん、こんにちわ、
人口減少に拍車がかかっていますね。ふと思ったのですが、人口のシュミレーションとこの前お見せした(?)べき乗もどきシュミレーションって、結構作り方いっしょなんですよね。ノードというか、年齢階層だったり、視神経だったり、SNS上の個人だったりする、一単位がまず存在します。そして、一定の関係で相互作用をもちながら、1年後の人口動態予想、連結された次の層、SNSの個人間のつながりといったレベルというかレイヤーが来ます。そして、繰り返し繰り返し、次の層、次のレイヤーへと相互作用が続いていくみたいな...
http://homepage2.nifty.com/hhirayama/concentration_sims.xls
もしかして、複雑系ではないのですが、人口動態もなにかの作用で大幅に増えたり、減ったりするような状況というのが考えられるのではとか、思ってしまいました。トンデモ本だと最近されているそうですが、竹内久美子さんが人口が減少する局面では、遺伝子でもミームでも、生殖意欲が旺盛な個体だけが次代で生き残り、逆に50年先には人口増大問題で困るとか書いていましたね。
BC!な話―あなたの知らない精子競争
なんか書けば書くほど、山口さんのご指摘のポイントからずれていくようなのでやめます。お許しください。
少々事情がありまして、自分のサイトにあまりカキコできないのです...
Posted by: ひでき | June 10, 2004 04:56 PM
すいません。少し突っ込みます。「BC」関連は、私の認識ではトンデモの部類に入ります。あの一連の本は、なんでも遺伝子のせいにしている決定論的な考え方がどうにも気に入りません(あの人にかかればミームも「物理的」な遺伝子の仲間にされちゃってる感じだし)。少子化で悩んでいた北欧の国なんかで出生率が多少増加した(そうでしたよね?)のは生殖意欲旺盛な個体が生き残ったからではなくて、有効な支援策をとったからでしょう?そもそも結婚って生殖のためにしてるんですか?みんな。
「自分のサイトに書き込みできない」とはたいへんですね。何か事情があるのでしょうか。誰かがサイトを見張っていて、「またこんなこと書いてる!」と非難するとか?「blogなんか書いてないで仕事しなさい!」と奥さんから怒られるとか?…詮索無用ですね。すいません。どうぞ本blogで存分に書き込んでやってください。
Posted by: 山口 浩 | June 12, 2004 01:02 AM
山口さん、こんばんわ、
べき乗の件、ヴィリリオという人の本を読み始めました。まだ、でもわかりません。
人口の件、自分のシュミレーションを早々に一度パラメーターを動かして見ます。
なぜ私があまりウィークデーにブログにかけないかは...あ、メールすればいいんですね。あやうくここに書くところでした。
Posted by: ひでき | June 13, 2004 10:11 PM