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July 27, 2004

年金問題:「メディア」としての「木村剛」

7月26日、木村剛氏が主催する「公的年金公開討論会」が開催された。出席したのは、自民党河野太郎議員民主党古川元久議員である。

この討論会で最も強く印象づけられたのは、「メディア」としての木村氏の存在感、である。

ここでいっているのは、木村氏のblog「週刊!木村剛」や数々の木村氏の出版物ではなく、木村氏本人のことだ。年金問題において、木村氏は専門家とはいえない。そのせいだろう、上記の討論会において木村氏は、自分の意見で相手を叩きのめすあのテレビ等でおなじみのスタイルではなく、出席した両議員に質問を投げかけ、本音の回答を引き出し、それをわかりやすいことばに「翻訳」して伝えるという作業に徹していた。

年金問題については、抜本的な制度改革に向けて与野党が協議するとの三党合意がなされたものの、選挙が終わってみれば政治サイドの動きはぱったり止まってしまったかのようになってしまった。マスコミの関心はもはや年金よりも政権の支持率やら内閣改造の行方やらといった恒例の政局問題に移ってしまっている。社会に影響力があり、どちらの政党色も帯びていない木村氏の呼びかけがなければ、今回自民・民主の両党議員の討論会が開かれることはなかったろう。また、木村氏が厚生労働省に情報公開を求めたり、専門家やbloggerたち集めて「公的年金タスクフォース」を立ち上げたりしているのも、年金の制度設計者たちと一般国民とをつなごうとする活動といっていい。つまり木村氏は、「(伝達などの)手段;媒介,媒体」(英和・和英(プログレッシブ)より)という意味でのメディア(media)の役割を果たしたのだ。

Blogが従来型のマスメディアにはない新たな形のジャーナリズムとして機能しうるという指摘は、すでに多くなされてきた。確かに、あちこちの有力なblogでは、大メディアに勝るとも劣らないハイレベルな議論が展開され、それらがコメントやトラックバックによって有機的につながったゆるやかなネットワークを形成している。これに対して、多くの新聞や雑誌は、時の政権をとにかく批判すればいいという乱暴な姿勢をとりながら情報そのものは記者クラブ発の大本営発表に頼っているし、某テレビ局の某司会者の番組のように、出演者を煽り立ててことばの殴り合いをさせることに明け暮れているものもある。それらに比べて、上記の討論会で行われたのは、はるかに建設的、前向きな議論であった。少なくとも昨夜私たちは、年金問題の最大のネックは実は政党間の意見の対立ではなく、国民の中の、および政党の中の、世代間の利害対立である、という事実であることを理解できた。私たちに必要なのは、こうした議論を積み重ね、それを国民にわかりやすく伝えていく地道な努力であろう。

その意味で、木村氏の存在は、その知名度や立場からいって、新たな「メディア」として注目する価値がある。不良債権処理に関して威勢のいい発言を繰り返していたころのこわもての印象(主張はともかくとして、もうちょっと柔らかい言い方はできんのか、という印象)よりもはるかに好感が持てるのではないか。少なくとも年金問題については、引き続きこの路線でいってもらいたいものだ。

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Comments

ちょっと違う内容ですがTBさせていただきました。

いろんな意味で私も木村氏を注目しています。タスクフォースに参加している方が、私の案の試算をしてくれるといいナ、とちょっと期待したりして。

Posted by: cogno_eb2 | July 27, 2004 11:25 AM

やっぱりというか、公開討論会の参加者の方ってやっぱりBLOGGERなんですねぇ~

確かに木村さんは両者の議論(というかそれぞれの意見の主張?)と我々とを媒介するという役割でしたね。

木村さん自身はどう考えられているのでしょうか、気になるところです。

Posted by: beer | July 28, 2004 11:22 PM

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