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神は細部に宿る:ジブリの仕事

ほぼ日刊イトイ新聞で、「ジブリの仕事のやり方。」という特集が始まった。第1回は糸井重里とスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーとの対談で、宮崎駿監督の仕事のスタイルについて、以下のような面白いコメントをしている。

映画をどう作るかというときの、 宮崎駿の最大の特徴は、 「細部からはじめるところ」なんです。 その細部というのは何かと言うと、彼は 「主人公の洋服、どうしよう?」 と考えだすんです。

鈴木プロデューサーは、宮崎監督が映画の細部までを100%支配したいと思っているふしがある、という文脈でこれを語っている。細部から入るので、まわりの人間には手を出す余地がない、と。しかし同時に、これは宮崎流のクリエイティビティの源泉であるとも感じているようだ。

宮崎監督はよく、「作品を作るということは、脳味噌のフタを開けることなんだ」と語っている。真意はわからないが、自分の頭の中にあるごちゃごちゃしたわけのわからないものを全部取り出してまとめあげていく、というイメージだろうか。主人公の洋服やら髪型やらといった細部は、監督に、主人公がどんな育ち方をして、どんな考え方をする人間なのかをイメージさせるものなのだろう。主人公がどんな人間かがわかれば、あとは頭の中で主人公が勝手に動き出す。それを絵にしていくことが映画を作るということなのかもしれない。以前、「『もののけ姫』はこうして生まれた」というDVD(本はこちら)を見てすごい!と思ったが、さもありなんという感じがする。

よく「神は細部に宿る」という。ものごとの本質はほんの細かいところによくあらわれる、という意味と理解している。この対談で鈴木プロデューサーが語っているのは、宮崎作品の場合も「神が細部に宿る」、細かくこだわった細部こそが作品の本質を決定する、ということなのだろう。それは、細部の細かさが作品の質を高める、といった表層的なものではなく、細部にあらわれた主人公のあり方が、作品の方向性を決定していく、だからこそ主人公の洋服や髪型が最初に決められなければならなかったりする、ということなのではないか。

このようなやり方は、おそらく一般的な仕事のアドバイスにはならない。「天才の仕事」の領域であり、参考にしたくてもしようがないだろう。だれもがこれをやり始めたら、しっちゃかめっちゃかになるのはわかりきっている。しかしそれでも、参考になる点はあるはずだ。たとえばそれは初期時点でコンセプトを詰めておくことの重要性であるかもしれないし、「天才」を組織の中でどのように扱えばいいかという問題だったりするかもしれない。うまく消化できていないが、経営学を考えるとき、とても重要な何かに触れた気がしている。連載になるようだが、今後が楽しみだ。

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Tracked on July 15, 2004 at 07:53 PM

Comments

少々古いエントリで恐縮ですが、拙文をTBさせていただきます。

小津映画を支えているのは正にこの「神は細部に宿る」という仕事ぶりだと思います。TBさせて頂いたエントリの「大きな嘘のためには、小さなところで嘘をついてはいけない」がこれに当たります。

ドッラカーも「何故誰も見ていない仕事のプロセスでも手抜きをしないのか?」と問われて、「どこかで、神が見ている」というようなことを語っていた記憶があります。

Posted by: Flamand | July 15, 2004 at 07:53 PM

天才とは全く関係ないですが、私も細部からっていうのなんかわかる気がします。

気になることや、思いついたことをどんどんとりあえずやっていくと最終的にこういう感じになるんだーっていう感覚はなんとなくわかります。確かにそっちの方がものを作りやすいなーっていう実感があります。

細部がその人の魂を表現しているというのは感じます。人のしぐさや来ている服や立つ姿勢、髪型が全てその人の人格とリンクしているように感じるので、理論的にはそれと同じなのかなーと思いました。

Posted by: Hiroette | July 16, 2004 at 03:51 PM

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