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August 24, 2004

キリン、CO2排出権取引に参加

キリンビールがCO2排出権取引市場への参加を表明した(ニュースはこちら)。この市場は環境省が来年度導入予定のもので、企業が自主的に二酸化炭素の排出枠を設定し、その枠に対する実際の排出量の多寡に応じて排出権を売買する、というものだ(「自主参加型排出権取引制度」という)。これに参加すると省エネ設備導入のための補助金を受け取れるというメリットもあるらしい。参加を表明した企業は産業界では始めてとのこと。

キリンビール環境報告書2003年版(要約はこちら)によると、同社は2003年度、350mlのビール1缶を製造するのにCO2を55g排出したそうだ。これは、昨年より1.7g削減されたのだという。いったいキリンビールはどの部分でCO2を排出するのか?「環境負荷の全体概況という図」をみると、キリングループ(ビールだけではない)の事業活動によって、ネットで排出しているCO2は、年間118.24万トンに及ぶという(176.8万トンを排出、58.56万トンを吸収)。このうち最も大きい排出項目は製品輸送の際のガソリン燃焼によるもので、58.5万トン。次が製造時のボイラー燃焼に伴うもので、29.6万トン。ビールの泡からの蒸発分や私たちがビールを飲んだ後にアルコールを体内で分解する際に発生する(そしておそらくはげっぷや便などを通して排出される)ものも含まれている。これがなんと年間28.7万トンもある。

気づきたくなかったが、このCO2の少なからぬ部分は、考えてみれば、私たちがビールを飲まなければ排出されずにすむものだ。自動車会社も環境対策に熱心なところが多いが、状況は若干似ている。いくら環境に優しい車を作っても、環境に負荷を与えることには変わりがないのだ。車に乗らなければいいではないかという批判には、「だって」ともじもじとせざるを得ない。車のほうは、輸送など産業のために使われているものもあるからまだましで、ビールの場合は単なる嗜好品だから、さらに「肩身が狭い」。かといってビールを全く飲まないというのもつらいし、などとつらつら考えると、自分たちの「罪深さ」というものを痛感させられる。映画「マトリックス」でエージェント・スミスが人間をウィルスにたとえていたのを思い出してしまう。せめて無駄にビールを飲むのだけはやめたい、などと軟弱な着地点を見つけて自分を安心させたりするのが精一杯。あとは、飲むなら環境負荷の少しでも小さいビールを選ぶことぐらいか。

というわけで、皆さん飲み過ぎは体だけでなく環境にもよくありません。気をつけましょう。

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Tracked on August 24, 2004 03:01 AM

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