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August 02, 2004

プロ野球問題:不真面目な解決案

近鉄とオリックスの合併問題に端を発したプロ野球界の大騒動がどんどん波紋を広げている。こんどはダイエーとロッテの合併が取り沙汰されるようになり、1リーグ化への流れが次第に大きくなってきているようだ。これに対して、ファンらは概して2リーグ制維持を支持しているようにみえる。

プロ野球ファンではない(野球はきらいではない。元野球少年だし)のでもとより真剣に考える気はないが、何かと面白い題材なので、少し考えてみた。あくまで不真面目に、だが。

先日知ったのだが、多くのプロ野球球団の年間収益は、30~40億円前後であるという。詳しく知らないが、1つの球団には数十人ないし100人前後の選手がいるのだろうか。1999年のデータでは、外人選手を除く選手の平均年俸は3,218万円、中間値は1,300万円であるという(これを参照)。平均的な球団は、30億円前後の赤字であるらしい。

以前、一部のサラリーマンと比べて、リスクとリターンの関係からみてプロ野球選手の年俸が安いのではないか、という記事を書いたことがある。この点は今でも同じ意見だが、それと球団の収益とのバランスは別問題だ。球団全体としての収益がコストの半分しかなく、その総額が30億円前後だとすれば、平均3千万円の年収の選手を数十人も抱えることは、正常なビジネス感覚とはいえないだろう。プロ野球球団を保有することは、独立したビジネスとして成立していない。

以下、これを前提として考える。今回の1リーグ化の話は、球団経営者間の問題として考えると、世間での論調をみるに、次のような3タイプの球団間の利害対立であろう。

①強く、人気があり、経営的にも最も安定している(ないし赤字に対して最も寛容である)球団。この球団にとっては、自分のところが強くあり続けることが第一のプライオリティであり、それがプロ野球界全体にとってもよいことだと考えている。だから、近鉄とオリックスの合併問題のときに、たしかこの球団の経営者は、両球団の強い選手だけを集めることは許さない、と発言していたと記憶している。1リーグか2リーグかは、この球団にとってはどちらでもよい。
②①の球団と同じリーグに属する他の球団。経営の厳しいこれらの球団にとって、1リーグ化は①の球団との試合数が減ることを意味するから、2リーグ制の維持が望ましい。
③①の球団とちがうリーグに属する球団。同じく経営の厳しいこれらの球団にとって、1リーグ化は①の球団との試合ができるようになることで、1リーグ制に移行することが好ましい。

思いっきり乱暴に整理すると(ここらへんが「不真面目」という意味だ)、要はプロ野球は①の球団を軸に成り立っているということだ。この球団と試合できることが他の球団にとっての事業機会となっている。つまり球団①は、プロ野球界全体の財産、いいかえれば「公共財」となっているわけだ。公共財はふつう収奪され疲弊するものだが、傍からみる限り、おそらくこの球団は他ほどには疲弊していない。それだけ潤沢な資源をもっているのだろうか。それに、この球団の経営者は、他の球団から収益面で「頼られる」ことをむしろ歓迎しているようにみえる。

とすれば、プロ野球界はこの公共財を思う存分収奪すればよい。いちいち球団①と書き続けるのはめんどくさいのではっきりいえば、巨人戦が収益源になるなら、巨人戦の回数を充分に増やせばいいのだ。必要なら、すべての試合を巨人戦にすればよい。そのための方法はいくらでもあるだろう。たとえば、最も簡単なのは、巨人以外の球団をすべて1つに合併して、2球団制にしてしまうことだ。こうすればすべての試合が巨人戦となる。合併によって誕生した「巨人以外の球団」の名をどうするか、本拠地をどうするかは問題だが。選手はどちらかの球団に振り分ければいい。同じ日に複数の場所で巨人戦が行われていてもいいではないか。宝塚にも月組とか花組とかあるし。

また、折しも木村剛氏のblogで紹介されたblog「Advancement of Lazyzoo」では、巨人のあり方が独占禁止法違反なのではないか、との主張が展開されている(「公共財としての巨人」という考え方は、独禁法違反という主張とは両立しないようには思うが、細かいことはここでは無視する)。もし米マイクロソフトが辛くも防いだような会社分割命令のようなものが可能であるなら、巨人を分割して他球団の本拠地にそれぞれ配置すればよい。これなら各球団の本拠地は守られ、しかもすべての試合が巨人戦となる。逆に、巨人以外のすべての球団を2つに分割して、強いほうを巨人、弱いほうを元の球団とする方法も考えられる。「巨人」というブランドネームをすべての球団に分け与えよう、という発想だ。

もとより、どちらも暴論だ。まじめに受け取らないでもらいたい(まさかと思うが)。しかし、不真面目な議論だと怒る前に、なぜプロ野球がこのようになってしまっているのか、考えたほうがいい。上記の通り、多くの球団にとって、プロ野球球団経営は、事業として成立していない。球団が独立した企業なら、顧客たるファンを第一に考えるのは当然だろうが、親企業にコストを頼っているとすれば、その親企業のほうを向くべきだし、親企業の意向によって売買されるのも当然だ(この場合「顧客」にあたるのは、球団経営を通じて獲得・維持される親企業の顧客だ)。特定の球団経営者の「横暴」を怒ってみても、その球団との対戦に収益源を頼っている状況では、どうにも説得力がない。経営努力の不足を主張する向きもあるが、収入がコストの半分しかないとすれば、生半可な努力では追いつかないはずだ。

収益とコストのミスマッチを前提とすると、巨人戦に依存する「対戦相手」としての球団のあり方に不満である場合、巨人以外のプロ野球球団のあり方としてありうるのは、①市民に支えられる球団(コスト構造に抜本的な改革が必要だろう。ファンとして負担すべき金額にも、だ)、②親企業の広告宣伝費としての球団(必要とあればどこにでも売られ、合併もあり)、のいずれかしかないだろう。果たしてどのような姿を選ぶのか。いずれを選んでも犠牲にするものがある。それを覚悟することから始めなければならないのではないだろうか。昔のテレビドラマの名セリフで、「同情するなら金をくれ!」というのがあったのを思い出す。冷たいようだが、野球ファンを自認し、球界改革に対し主張したい方は、自分が球団経営のためにどれだけそのコストを負担できるかについても、少し考えてみるとよいのではないか。

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Comments

以下は自己つっこみ。

ここで書いたような「案」(というか、思いつき)は、おそらく多くの人がすでに冗談のレベルで話したり書いたりしたことだろうと思います。わざわざここで文章にするまでもなかったかもしれません。それをわざわざ書いたのは、プロ野球ファンでない「外部」の目からみて、巨人、ないし巨人戦に頼っていながらそれを批判するという風潮に違和感を覚えたからです。経営者も、自分の言動や行動が球団経営に深刻な影響を及ぼすと自覚したら、変わるのでは?今はそこまでいっていないということでしょう。もし巨人のあり方に不満なら、巨人戦は見ない、後楽園には行かない、読売新聞はとらないなど、やれることはあるのではないでしょうか。もちろん、巨人のあり方に不満なのは巨人ファン以外がほとんどでしょうし、野球チームとしての巨人とその経営者とはちがう、ということなのでしょうが。

以下はおふざけついでの思いつき。本文でプロ野球球団のあり方として2つ挙げましたが、もう1つあることに気付きました。③伝統芸能としてのプロ野球、です。古い伝統を持ち、国民に親しまれ、発祥の地であるアメリカとは独自の発展をし、いまや日本社会を象徴するかのごときプロ野球。もはや日本文化そのものといってもいいでしょう。それを保存し、後代に伝えることは、文化的にきわめて高い価値がある、といえないでしょうか。もしこんな考えもアリだとすれば、プロ野球球団は公益法人にして、基金の利息収入と、興行収入、それに企業や個人からの寄付金で運営するということになるんですかね。選手や監督も世襲制にするとか!?

Posted by: 山口 浩 | August 03, 2004 07:00 PM

ご紹介頂いた記事、消去されてしまったんですね。
残念です。

Posted by: 珠丸 | August 07, 2004 10:54 PM

珠丸さん、
申し訳ありません。どうもココログのシステムがおかしくて、本文へのリンクが消えてしまっています。本文はちゃんとあるんですが、外からは見られない状況になっています。
今@Niftyに照会しているのですが、まだ解決できていません。
自分で作ったページなら自分でリンクを直せるのですが、blogだといじれなくて。
もう少々お待ちください。

Posted by: 山口 浩 | August 07, 2004 11:15 PM

そうでしたか。事情もよく知らずに、申し訳ございませんでした。
「伝えることの難しさ、大切さ」について自分なりに色々まとめようとしてるんですが、なかなかうまくまとまりません。。。私には荷が重いようです。(苦笑)
色々記事を引用させて頂きたいなぁと思っていたので、復活していただけると嬉しいです。宜しくお願いします!!

Posted by: 珠丸 | August 08, 2004 09:59 PM

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