官と民:「市場化テスト」のゆくえ
昨日、「官と民:PFIの可能性について考えてみた」なる文章を書いたのだが、そういえばこの種の話は」規制改革・民間開放推進会議ですでに論議が行われていることをすっかり忘れていた。
8月3日に発表された「中間とりまとめ(案)」では、2006年度から市場化テスト(官民競争入札)を全面導入すべきだとしているが、官庁・与党の反発は強いようだ。
市場化テストとは、要するに、公共サービスについて官と民が競争入札を行い、質と価格の優れたほうが落札するというしくみだ。次のような分野が検討対象になっているらしい。
(以下①~⑥は2004年8月16日付日本経済新聞による)
①給付・徴収
国税・地方税などの徴収・年金業務
②施設整備・管理
庁舎・宿舎、情報通信システム
③登録
車庫証明、登記、公証、特許登録、自動車登録
④統計・調査・製造
統計業務、貨幣・紙幣の製造
⑤検査・検定
宅建免許審査、動植物の検疫、電波監視
⑥その他
物損事故処理、職業紹介、航空管制
いやいろいろあるものだ。こうしてあげてみれば、本当に政府が(じゃなくて、公務員が)やらなければいけないことは何なのかについて、私たちが今までいかに固定観念にとらわれていたかがわかる。各官庁側の回答(というか、反論)はこのページに集められている。「できない理由」のオンパレードだが、だから官僚は、という批判に走るのは、必ずしも適切とは限らないという気もする。固定観念にとらわれている部分は私たち国民のほうにもあるかもしれないからだ。私たちは、何かあるとすぐに「政府は何をしているのか」とか「政府の責任で行うべきだ」とか言いたがるが、その中には、本来自分たちでやらなければならないことを政府に押しつけている部分があるかもしれない。
ただやはり官・政の側には、既得権益保護という要素もあるのではないか、という疑いも捨てきれない。日経の記事によると、自民党の規制改革委員会で「官より民が必ず優れているというのはそもそもおかしい」という発言があったらしい。確かに民が優れているとは限らないが、同様に官が優れているとも限らない。入札という制度は、官から民へ移そうというものではなく、官と民の優れたほうを選ぼうというものだ。官のサービスが優れているなら、民の参入を恐れることはないではないか。そのためのテストすら拒もうというのでは、「語るに落ちる」といわれてもしかたないように思う。
官と民、どちらが優れているかについては、分野によってちがっていてもおかしくない。ならば分野ごとに試してみてもいいのではないか。国民がそのテストの結果をみて判断すればいいのではないか。国民の判断力は、それほどまでに信用されていないのだろうか。一国民としては、このことこそ憂うべきではないか、と思ったりする。
The comments to this entry are closed.
Comments