スポーツを支援する企業
グローバリーという企業は、一般的には知名度が高くはないだろうが、昭和38年設立で、従業員数は781人の大手商品先物会社だ。金、銀、小豆、原油などの商品先物(国内、海外)を扱うブローカーで、平成16年3月期の営業収益は148億円、経常利益は46億円。「10期連続増収増益で、先物業界では1位か2位」(同社)らしい。
野口選手は5年前、それまで所属していたワコールから恩師の藤田信之監督とともに移籍した。同社は他にもスポーツ活動に力を入れており、所属のボブスレー選手が冬季五輪のリレハンメル、長野、ソルトレークシティーと3大会連続で出場していたが、陸上競技の有望選手の入社は初めてだったそうだ。
ここまではほぼニュースの受け売り。
かつて(そしておそらくは今でも)商品先物業界は、強引な勧誘や不充分な説明など、あまりよくないイメージがつきまとっていた(る)。スポーツ支援をしているのも、知名度を上げるだけでなく、企業イメージを高めたいという配慮が働いているのだろう。グローバリーにとって、今回のオリンピックマラソン優勝は願ってもない結果だったはずだ。選手や監督にとっても、おそらくそれほど寛大ではないであろう現在の企業スポーツ界において、支援を申し出てくれる企業は渡りに船だったにちがいない。
グローバリーにも、この業界につきものの毀誉存亡はあるらしい。しかしそれでも、女子マラソンの金メダルはこの企業が野口選手を支援した結果でもあることを否定はできないだろう。別にグローバリーを持ち上げたいのではない。ここでいいたいのは、企業スポーツなるものはすべからく、企業と選手のギブアンドテイクで成り立っているということだ。選手は知名度やクリーンな感動を与え、企業は資金を提供する。逆にいえば、自分の側に欠けているものを補い合っている。その意味で世間的なイメージが必ずしもよくはない企業がスポンサーとして名乗り出ることはむしろ自然であり、そうした企業の支援を必要としている選手たちがいることもまた自然の流れだ。
ここで思わず連想するのが、新規参入をかたくなに拒むあの某プロスポーツ業界だ。これまで、チーム合併しか手がないのであれば、ファンが反対しようが、運営費用を実際に負担する企業の論理で合併するのはしかたがないのでは、と考えていた。しかし新規参入を希望する企業があるのなら、それについて少なくとも検討するのはむしろ当然ではないかと思う。いったいなぜあれほど合併に固執するのだろうか。
当該企業(あるいはその経営者か)に対してどうも不信感を抱いているようだが、それをいうなら現在のオーナー企業の中にも「札付き」の会社があるではないか。歴史の浅い企業がオーナーとなることに不安ということかもしれないが、かつてはこの業界もチーム名がころころ変わっていた(こちらのサイトに変遷がまとめられている)ことを考えれば、たとえ万が一1年でまた変わるはめになったとしても、さしておかしなことではない。いつからこのスポーツはそんなに「偉く」なったのだろうか。
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