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August 03, 2004

米大統領選市場:ケリーの伸び悩みにヒラリーの影?

アイオワ大学が非営利で運営する「米大統領選先物市場」の最近の動向をお伝えする。前回、6月30日の記事では、共和党のリードが広がりつつあると報告したが、その後両者の価格は再び接近している。(2004年初頭から7月31日時点までのチャートはこちら

代表的な「予測市場」として知られるこの市場では、各候補を先物の銘柄と考え、大統領選における得票率が最終的な価格となる。たとえばケリー候補が45%の票を獲得すれば、「ケリー」の価格は$0.45となる。リンクしたグラフは各候補の価格を合計し、それぞれの党を示す「ポートフォリオ」の価格の推移である。つまり、現時点で市場が予測する両党の得票率を示すと考えてよい。したがって、基本的には、両銘柄の価格は反対方向に動く傾向を持つ。以下、この仮想先物の価格の動きから、選挙戦の動向を分析する。

両党の勢力は、上下を繰り返しているが、基本的には共和党優勢で進んできたといえる。民主党は、何度か共和党に拮抗する価格まで上げながらも、そのたびに共和党に引き離されてきた。1つのプロセスは2~3ヶ月の周期をもっており、現在は、民主党が共和党に追いついた3回目にあたる。

ニュースでは、世論調査の結果について、まちまちの結果が公表されている。ニューズウィーク誌(電子版)が7月31日に公表した世論調査(29、30の両日実施)では、ケリー候補支持が49%、ブッシュ大統領が42%となっており、ケリー候補が支持を伸ばし、ブッシュ大統領が落としている。

しかし民主党大会後の8月1日にCNN・USAトゥデー・ギャラップが公表した共同調査では、ケリー候補の支持率が、共和党のブッシュ大統領を下回るという結果も出た。 しかも7月に行われた前回調査と比べると、ケリー候補の支持率はむしろ下がり、ブッシュ大統領が上げている。

米大統領選先物市場のチャートをテクニカル的にみると、民主党に今一つ勢いが不足しており、共和党に迫りながらも突き抜けていく力がない、と解釈できる。何か民主党側に有利なことが起きれば勢力が拮抗するが、その「神通力」が薄れるとまた下げていく、という繰り返しになっている、というわけだ。

ケリー候補が今一つ伸び悩むのはなぜなのだろうか。以下は予測市場そのものとは関係ないが、報道等から背景を考えてみる(私が米国政治について素人であることをあらかじめ承知されたい)。巷では、ケリーが上流階級の出であることや雰囲気が暗いことなどを挙げるものが多い。確かにそうした要素はあるのだろう。

8月1日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」で某大学の某教授が、インターネットで、ケリー候補には3代前にユダヤ系の血が入っているとの情報が流れており、それが足を引っ張っているのではないか、と述べていた。アメリカでは、おおっぴらには語られないが、政財界を牛耳るユダヤ系に対する反発から、ユダヤ系は大統領にはなれない、といわれている。さもありなんという解説だが、Googleで少しだけ検索してみた範囲では、2ちゃんねる的な暴言の書きなぐりでその趣旨の発言が見られるものの、ユダヤ系の血が入っていることについては、総じて冷静な議論のほうが目だったように思う。

それにしても、民主党が候補者を絞り込んだ今になっても、まだ民主党の中での盛り上がりが今一つのようにみえてしまうのはなぜだろう。この点で、7月26日付Financial Timesがとりあげた、ヒラリー・クリントン上院議員の影響に注目すべきかもしれない。この記事では、今回ケリー候補が大統領となれば最大8年間大統領の座にすわるため、クリントン議員が大統領となるチャンスは回ってこないが、今回ケリー候補が敗れれば、4年後の大統領選において立候補するチャンスが生まれる、と指摘している。実際、夫であるクリントン前大統領は、1988年の大統領選における民主党候補者になることをあきらめ、デュカキス氏に譲ったが、このときの選挙でブッシュ(現在のブッシュ大統領の父)氏が勝ったため、次の1992年の大統領選挙において民主党候補者となり、大統領の座につくことができた。今回のヒラリー・クリントン議員の立場は、これに近いのではないか、というのだ。

FTの記事は明言を避けているが、ケリー候補の伸び悩みは、次期大統領選挙におけるヒラリー・クリントン議員の立候補への期待からくるのではないか、という推測ができるかもしれない。前大統領夫人であるクリントン上院議員は、2000年に議員になる以前から強い支持者層をもっており、夫であるクリントン前大統領のスキャンダルの際の落ち着いた対応によって、さらに評価を上げている。アメリカ初の女性大統領への期待は決して小さくない。今回の大統領選においては、「まだ早い」との評価が支持者の間でも一般的で、クリントン議員は早々に立候補しないことを表明したが、大統領選先物市場では、ブッシュ、ケリー以外の銘柄が価格ゼロで清算される7月末まで「クリントン」には価格がついていた(7月末時点の価格は$0.004。つまり0.4%の確率だ)。期待の大きさをうかがわせる。次回クリントン議員を民主党の大統領候補として擁立したい向きからすれば、今回の選挙でケリー候補が勝つことは、必ずしも好ましくない、ということになる。

いずれの理由にせよ、ケリー候補にとっての「敵」は共和党よりむしろ「身内」にある、ということになるのかもしれない。もしそうなら苦しい闘いだろう。ともあれ、予測市場は、世論調査ではわかりにくい「生」の動きをみることを可能にする。その動向には今後とも注目していきたい。

ちなみに、7月19日のみ、民主党の価格が1を超えているが、これは、エドワーズ候補の価格が一時的に大きく伸びたもので、同候補の支持者によるメッセージ的な購入、ないしは市場操作の試みである可能性がある。この市場は通常の予測市場と異なり現実通貨が使用されるが、その額は1人あたり500ドルまでに制限されているため、損を覚悟で売買を行うことはありうる。しかしそれが長期にわたって市場動向全体に影響を与えることはないと考えられている。

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