米大統領選市場:ケリー伸びず
米アイオワ大学が研究目的で運営する「米大統領選予測先物市場」の最近の動向をお伝えする。前回、7月末時点(8月2日の記事)では共和、民主両党の価格が接近している旨記述したが、その傾向はどうも変わっていないようだ(2004年初頭から8月31日時点までのチャートはこちら)。
注:以前の記事については、カテゴリーで「予測市場」を選択していただきたい。ココログの固定リンク設定がおかしくなっていて、別の記事に飛ばされてしまうようなので。
代表的な「予測市場」として知られるこの市場では、各候補を先物(予測先物と呼ぶ)の銘柄と考え、大統領選における得票率が最終的な価格となる。たとえばケリー候補が45%の票を獲得すれば、「ケリー」の価格は$0.45となる。今や両党とも候補を一本化したので、候補=党といってよい。つまり、この予測先物の価格は現時点で市場が予測する両党の得票率を示す。したがって、基本的には、両銘柄の価格は反対方向に動く傾向を持つ。以下、この予測先物の価格の動きから、選挙戦の動向を分析する。
両党の勢力は、基本的には共和党優勢を保ちながら上下を繰り返してきた。民主党は、何度か共和党に拮抗する価格まで追い上げ、ときにわずかに上回ったりもするが、そのたびに共和党に引き離されてきた。しかしそれより重要なことは、両者の動きがだんだん小さくなってきていることだ。この1ヶ月で共和党は民主党を2度引き離したが、今再び民主党に追いつかている。しかも反発力がだんだん低下していて、民主党を大きく引き離すことができないでいる。
8月31日といえば共和党大会開催中であるから、動向を見極めようと投資家たちが様子見を決め込んでいる、と考えられなくもない。しかしより大きな長期的な流れからみても、両党の価格が収斂してきているのは事実だ。このように振幅が小さくなってきているときには、市場の「エネルギー」が貯まってきていて、この後大きな動きが起きるのではないかというのが、一般的なチャーティストの考え方だ。しかし現在の状況は反発力の低下傾向が続いており、その「エネルギー」の蓄積があまりないようにみえる。
共和党サイドでいえば、反ブッシュキャンペーンの影響を真っ先に考えるのが妥当だろう。公然と批判した映画がカンヌ映画祭でグランプリをとって観客を集め、反ブッシュデモには大勢の人がつめかける。まさに逆風ごうごうだ。その意味で、共和党に民主党を突き放す力がないのは比較的自然に理解できる。
ならば民主党のケリー候補にとって強力な追い風となりそうなものだが、現実はそうなっていない。輝かしい軍歴にケチをつける動きもあって、それはそれで痛撃だろうが、致命傷のようなものではないはずだ。にもかかわらず、この市場では両党がへなへなと互いにもたれあうように$0.5あたりに収斂してしまっている。追い風のはずのケリー候補がとにかく伸びない。やはり現在の予測市場の状況は、ブッシュ大統領の勢力低下というよりケリー候補の伸び悩みとみたほうが適切であるように思う。前回の記事で可能性を指摘したヒラリー・クリントンへの期待なのか、ユダヤ系の血をひいていることへの反発なのか、あるいはよくいわれる雰囲気が「暗い」からという理由なのか。理由は何にせよ、現在のような「力ない膠着状況」を打ち破る勢いがなければ、現職大統領を破るのは難しいかもしれない。
ともあれ、有権者の動向がよくわからなくなってきている今、予測市場への注目は高まっている。予測市場は通常のアンケート調査とちがって同じ対象者に対して繰り返し意見を聞くことが可能であるため、1回ごとにサンプルがちがいそのために結果にぶれが生じやすいアンケート調査に比べ、安定した結果を得ることができるからだ。7月31日のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でもこのアイオワ大学の米大統領選予測先物市場をとりあげていた。今後もこの市場の動向は折をみてお伝えする。
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