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September 16, 2004

老兵は死なず、ただ…

インターネット関連大手ライブドアが、日本プロフェッショナル野球組織(NPB)へ、参加を正式に申請した(記事はこちら)。15日にはインターネット商店街最大手の「楽天」が、プロ野球に参入する方向で検討に入ったと報道(記事はこちら)されているが、先に手を挙げていたライブドアが一歩先行した格好となった。

新興産業であるインターネット業界から2社が名乗りを挙げたわけだが、さて、そこでだ。

どうもプロ野球の運営者側は、こうした動きを快く思っていないらしい。コミッショナーはまだ申請が出ていない段階から「来期からの参入は難しい」と予防線を張ることに余念がないし、パ・リーグ事務局長は「ライブドアに参入資格なし」と切って捨てる。

既存のプロ野球球団のオーナー企業は、比較的新しいオリックスを除けば、新聞や鉄道、メーカーなどほとんどが伝統的な産業に属している。2社の新規参入がプロ野球界の活性化につながるとは考えていないようにみえるところが興味深い。新たに勢力を得つつある企業が自分たちの「利権」を侵すとでも考えているのだろうか。1リーグにすれば晴れて巨人を除く全球団が巨人戦をできるのに、というわけだろうか。「来年は無理」というのは、スケジュール面からのものだろうが、いま社会のさまざまなところで行われている構造改革に際して守旧派が主張する先延ばしのための主張とよく似ている。スピードの速い経営が身上のITベンチャー企業にしてみれば、「仕事をする気がないのか」といいたいところかもしれない。

プロ野球球団を保有することは、どうも「事業」ではなく「経費」のようだ。つまり球団を保有することにより会社への認知度を高め、球団を経営資源として自社の事業に活用するのが目的で、経営自体ではもうからない。したがって、経費を使ってでもプロ野球球団が持つ国民へのアピール力を必要としているのは、歴史が浅く、これから国民に広く知られるようになりたい企業だ。参入の意向を表明した両社の真の狙いは知らないが、おそらくそういったことだろう。

ひるがえって既存のオーナー企業はどうだろう。プロ野球球団の知名度を生かして自社への認知度を高める必要があるだろうか。自社の事業展開にプロ野球球団という経営資源がどれほど役立つだろうか。少なくとも2つの球団にとっては、それは維持のための経費を正当化しうるほどのものではないのだろう。球団運営のためにかけるべきコストがいくらなのかは議論の余地があるようだが、新たに参入しようとする企業は、もしかしたら同じ経営資源でより高い収益、またはより安いコストを実現できるかもしれない。

そうだとすれば、世代交代のときがきたのだ。両社にとって球団を維持する必要がなくなったのと同様、球団にとってもこれらの企業をオーナーとする必要がなくなったのだ。

それはこれまでのオーナー企業にとって、決して不名誉なことではない。今、歴史的役割を終えたというだけのことだ。また、これまで球団保有のメリットはさんざん得てきたはずだし、今はメリットがなくなったのだから、撤退するのが企業経営者としての責任だ。堂々と胸をはって退出すればよい。いったん決めてしまったからといって、既存の案にこだわることは、メンツを守ることにはならない。「君子は豹変」すべきときがある。

「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」ということばがあった。マッカーサーが朝鮮戦争の責任を問われ解任されたときに語ったことばだ。意味はちがうだろうが、今の状況にあてはまるような気がする。新規参入者を変にいびって「老醜」をさらすより、静かに、誇り高くプロ野球界から撤退するという発想はないものだろうか。

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Comments

自己つっこみ。
新聞報道などを見ていると、経営側のかたくなな姿勢は、何がなんでも球団数を減らすことが目的のようだ。つまりプロ野球ファン全体の人数に比べ、プロ野球球団の数が多すぎる、という判断なのだろう。球団数を減らせば、そして1リーグ制にしてすべての(巨人を除く)球団が巨人戦をできる立場になれば、問題は解決するというわけだ。

ファンの総数が減少しなければ。

似た構図をみたことがある。銭湯だ。客数が減る→収入が減るので値上げする→また客数が減る→また値上げ、という悪循環。今回も似たような方向に向かわないという保証があるだろうか。客数が減る→球団を減らす→また客数が減る、といった具合に。

Posted by: 山口 浩 | September 18, 2004 09:24 AM

 ストライキを実施するもしないも地獄、
 球団を削減するも、新規参入を認めるのも地獄。
 そんなような気がします。負のスパイラルを止める
 ことは容易ではないようです。
 

Posted by: ほたる | September 18, 2004 11:21 PM

> いま社会のさまざまなところで行われている構造改革に際して守旧派が主張する先延ばしのための主張とよく似ている。

私も似たような感じを持っております。
すこし違った表現で似たようなことを書いたエントリをトラックバックさせて頂きました。

Posted by: ゆびとま | September 19, 2004 04:26 AM

 何度もTBしてしまったみたいでどうもすみません。
 コメントを書く際何度か投稿したので、その際
 一緒にTBされてしまったようです。悪意はない
 ので、どうかお許しください。

Posted by: ほたる | September 19, 2004 07:45 AM

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