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October 01, 2004

米大統領選市場:ブッシュのリード広がる

最近とみに注目が集まるようになった米アイオワ大学の「米大統領選得票率予測先物市場」の最近の動向をお伝えする。前回、8月末時点(9月2日の記事)では、民主党陣営に今ひとつ突き抜ける力がない旨記述したが、ここへきてその傾向はかなりはっきりしてきた(2004年初頭から9月29日時点までのチャートはこちら)。

8月中旬を境に、民主党の価格は下降トレンドに入ったようにみえる。9月29日時点の終値は共和党が$0.53、民主党が$0.468だった。8月中旬時点では一時期民主党の価格が共和党を上回ったこともあったが、その後現在に至るまで、下降トレンドは変わっていない。

世論調査の結果がよくニュースとなるが、調査によって結果はかなりちがう、ということを以下にまとめたのでご覧いただきたい。これらはここ1週間ほどのニュースから拾ったものだ。別にこれは世論調査が信用できないといっているのではなく、調査対象や手法によって結果が異なるのはむしろ当然なのだ。コスト制約の下でサンプルによるアンケート調査を行うということは、こうしたバイアスからは逃れられない。

①9月30日、共和党のブッシュ大統領と民主党のケリー候補がマイアミ大学で第1回候補者討論会を行った(記事はこちら)。この討論会では、ケリー候補優勢との評価が一般的だったようである。討論会終了直後に米ABCテレビが行った世論調査(対象は無作為抽出による531人)では、ケリー候補が勝利したとの回答が45%であり、ブッシュ大統領(36%)を上回った。また、CNN・USAトゥデー紙・ギャラップ社共同による電話世論調査でも、ケリー候補が勝利したとの答えが53%で、ブッシュ大統領勝利の37%を大きく上回った(対象は討論を視聴した有権者登録済みの計650人)。

②9月30日の討論会直前に行われたロサンゼルス・タイムズによる世論調査では、11月の大統領選で投票するつもりという米市民の51%がブッシュ大統領を支持しており、46%が支持するケリー候補を5ポイント引き離していた。しかし討論会が自分の投票に影響する可能性があると答えた人は19%おり、そのうち63%が現在ブッシュ大統領支持、27%がケリー候補支持であったことから、ブッシュ大統領の優位は討論会結果を受けて揺らぐのではないかとの見方もある。

③9月28日にCNN/USA Today/ギャラップが発表した、接戦州の一つであるフロリダ州で今月24~27日に有権者879人を対象に行った世論調査によると、投票に行くと答えた人のうち、ブッシュ大統領を支持すると答えた人は全体の52%と過半数を占めた 一方、ケリー候補を支持すると答えた人は43%にとどまった。前回9月18~22日時点での調査では、ブッシュ大統領が49%、ケリー候補が44%だった。 すなわち、現職のブッシュ大統領が9ポイント差でケリー候補をリードし、両氏の差は広がる格好となっている。
一方、もう一つの激戦州であるオハイオ州では、ブッシュ大統領が49%、ケリー候補が47%と、わずかな差となっている。

④9月28日、米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが公表した世論調査結果によると、ブッシュ大統領の支持率は48%、ケリー候補は40%で、ブッシュ大統領のリードが8ポイントに広がった。先週実施された同様の調査では、ブッシュ大統領の支持率はケリー候補をわずかに3ポイント上回っているにすぎなかったが、今回はリードが8ポイントに拡大した。  この調査は、ピュー・リサーチ・センターが9月22~26日に電話を通じて1,200人の成人(うち登録有権者は948人)を対象に行ったもの。その結果、回答者の48%がブッシュ大統領に投票すると答え、40%がケリー候補に投票すると答えた。誤差はプラスマイナス3.5%ポイント。
9月17~21日に実施された同様の調査では、ブッシュ大統領の支持率は45%、ケリー候補は42%だった。

⑤9月24日、タイム誌は、投票に行くと回答した登録有権者を対象にした世論調査の結果、ブッシュ大統領の支持率は48%で、ケリー候補は42%だった。2週間前の前回調査では、ブッシュ大統領のリードは11ポイント%だったが、これが6%ポイントに縮小した。この調査は、9月21~23日にタイム誌が電話で実施。登録有権者1,014人(うち877人は投票に行くと回答)を含む成人1,178人を無作為抽出して実施された。

⑥9月23日、米CBSテレビは、世論調査の結果、ブッシュ大統領に対する支持率は49%であり、ケリー候補の支持率である41%を8%ポイント上回った、と発表した。その前の週のCBS調査では、ブッシュ大統領が50%、ケリー候補が41%であり、ケリー候補がわずかに差を縮めた。また、投票に行くと答えた有権者をみると、ブッシュ大統領の支持率は51%で、ケリー候補は42%となった。ただ、4人に1人は来週の討論会が決定的要因になる可能性があるとしている。

つまり、世論調査のいうところをまとめると、ブッシュ大統領がリードを広げつつあるが、今後の討論会の結果次第では変化する可能性もある、といったところだろう。ブッシュ大統領のリードは、予測市場でもトレンドとしてはっきりあらわれている。今回のチャートは9月29日時点までであり、30日に行われた第1回討論会の結果をふまえた価格の動きは含まれていないが、よく考えてみると、討論会ではブッシュ大統領が不利であろうということは、以前からわかっていたはずだ。とすれば、今回の討論会の結果は、予測市場にはある程度織り込み済みとなっている可能性がある。だとすれば、討論会の結果は価格に大きな影響を与えることはないかもしれない。ブッシュ大統領のキャラがなせる技、とみることもできよう。

いずれにせよ、両候補の価格差は、現状ではさして大きなものではない。討論会もあと2回ある。民主党のほうに転ぶ可能性だっておおいにあるのだ。本投票は11月2日。どうなるか、まさに見ものだ。

世論調査の結果は、調査対象や手法がちがえば、同じ日に行っても異なった結果が出る。つまり世論調査結果を並べてトレンドを判定することは難しい。また、その頻度にも制約がある。毎日アンケートされたら、誰だっていやだろう。予測市場という手法は、こうした問題点に対する1つの解決策となる。一定の参加者層が連続的に取引を行った結果であるため、トレンドをすばやくつかむことができる。世論調査の価値を否定するものではないが、予測市場という手法は、今後予測手法としていっそうその意義を増していくことになるだろう。

※10月2日追記
得票率予測先物市場の9月30日の終値は共和党$0.530、民主党$0.469と、29日時点からほとんど変わっていない。このあたりまでいくと共和党のリードが頭打ちになるのがこれまでのトレンドだった。今回もそうだとしたら、これ以上共和党がリードを伸ばすことは考えにくい。最後までもつれる接戦となるのは不可避かもしれない。

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