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October 23, 2004

政治資金規正法改正案:こういうのを「子供だまし」という

10月22日、自民公明両党は、政治資金規正法改正案に関し、政党が指定する政治資金団体については、献金の授受を銀行振込か郵便振替に限定することで合意した(記事はこちら)。日本歯科医師連盟によるヤミ献金事件で迂回献金疑惑が発覚したことがきっかけである。資金の流れを透明化するため、現金での授受を禁止し、金融機関を経由させて記録が残るようにする、とのふれこみだ。

どうしてこんなことがまかり通るのだろうか。迂回献金が、ではない。上記の法改正案が、である。

最初にことわっておくが、この記事はどの特定の政党への支持でも批判でもない。たまたま今回の法改正案は自民・公明両党によるものだが、同じ案がどの党から出てきたとしても、私は同じ意見を書くだろう。

報道によれば、この案で対象となる政治資金団体は、政党の献金の受け皿となる団体で、自民党の「財団法人国民政治協会」、民主党の「国民改革協議会」、公明党の「公明文化協会」、自由連合の「21世紀国民会議」の4団体のみだ。政治家個人の資金管理団体や、派閥、業界団体などの政治団体間の献金については「政治活動の自由を保障する必要がある」などとして、銀行振込などの対象外とされた。

政治資金の規制に関しては、よく「どんなに法改正をしても抜け道を見つける」などといった批判があるが、実態はちがう。抜け道は最初から作ってある。今回の場合は、対象となる団体を限ったことだ。上記の政治資金団体以外への献金は、金融機関を経由しなくてよい。

この点がカギを握っていることは、これが両党間の争点だったことからもわかる。報道では、「献金の振込の法制化をめぐっては、公明党がすべての政治団体間の資金移動を対象にするよう主張し、自民党は内規で対応済みとして反対していた。改正案の早期とりまとめを優先し、対象を政治資金団体に限定することで両党が歩み寄った」とある。

これによって守られる「政治活動の自由」とは何なのか。少なくとも、規制対象外の団体を通じて「迂回献金をする自由」も「裏献金をする自由」も守られたことは確かだ。これが意図的に作られた「抜け穴」であることは、上記の経緯からみれば、残念ながら疑う余地もない。

こういうことを形容することばが日本語にはある。「子供だまし」だ。「大辞泉」によると、

1 子供をだますこと。子供をなだめすかすこと。「―のおもちゃ」
2 子供をだますような見え透いたごまかし。「そんな―の企画は通じない」

と解説されている。当然ながら、2のほうの意味だ。「政治活動の自由を保障する必要がある」との理由づけが「子供をだますような見え透いたごまかし」であることは、文字通り小学生の子供でも理解できる。大の大人がこの説明を鵜呑みにするとでも思っているのだろうか。これを発表した議員センセイは、しゃべっていて恥ずかしくなかったのだろうか。

同じようなことは前回の法改正でもあった。個人献金を禁止しても、個々の政治家が「政党支部」を設立すれば規定の適用を受けないことは、法改正前からわかっていた。子供だましはもうたくさんだ。

いつぞやテレビで「5,000円札を握りしめてくるおじいちゃんに振り込めとはいえない」と発言した議員がいたが、これはまったく理由にならない。それほどの熱意をもっている人が、支援するセンセイに迷惑をかける事態を望むはずもないではないか。お手数をかけて申し訳ないが法律だから振り込んでくれ、というのが政治家として当然の務めだ。どうしても「5,000円札を握りしめてくるおじいちゃん」に配慮したいなら、5,000円以下の献金のみ振込の対象外にすればいい。それができていないのだから、意図は明らかだ。ちなみに、こういうのは日本語で、「馬脚をあらわす」という。

いやしくも税の免除を受ける資金だ。上記の議員ふうにいえば、「きちんと税金を払った後に残るなけなしの金の中からおじいちゃんが握りしめてきた5,000円」なのだ。もっと大切に考えてもらいたい。今度の改正では政治団体間の献金に5,000万円の上限額を設けるそうだが、問題は金額の多寡ではない。透明性だ。本当に必要なら5億円でも10億円でも、いくらでも集めればいい。ただしそれは透明な手続きによるべきだ。わざわざ書くまでもないが、「透明」とは、「後から検証できる」ことである。振込の例外を作れば、その部分は検証が難しくなる。金額の制限ではさっさと合意できて、透明性の確保でもめた末に後退するというのはどういうことか。政治家にとってどちらがより「制限されると困る事項」かがわかるというものだ。

今の日本は、重要な課題が山積している。政治家の時間は有効に使ってもらいたい。子供だましをやっている暇はない。

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