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October 30, 2004

米大統領選市場:ブッシュ鼻先でリード

米大統領選挙の投票日が間近だ。何度かお伝えしているアイオワ大学の「米大統領選得票率予測先物市場」の動向も、最終的な予測結果に向けた収斂の過程に入ったようにもみえる。(10月28日時点までのグラフはこちら)。

この市場で取引されている予測先物は、大統領選における各候補の得票率がそのまま価格となる。つまり得票率が55%なら、価格は$0.55だ。したがって最終的な得票率がわからない現時点での価格は、当然ながら最終結果に関する期待値となる。

10月28日時点の終値は、ブッシュ大統領が$0.508、ケリー候補が$0.492と、前回(10月15日時点)とほとんど変わっていない。統計的誤差といってもいい僅差だ。とはいえ15日以降変化がなかったというわけではなく、細かな変動を続けており、たまたまこの時点で同水準になっているということだ。しかし全体として、価格変動の幅がだんだん小さくなってきたことは、グラフから一目瞭然だろう。収斂に向かっているのだ。それがこのような僅差であるということは、やはり今度も大接戦が避けられないということである。ここまではマスコミの報道と変わらない。

問題は、どちらが優勢かだ。マスコミの報道は、どうもブッシュ大統領に対する悲観的な評価のほうがとりあげられることが多いようにみえてしかたがない。前にも書いたがやはり「犬が人間をかむ」ほうを好むマスコミ体質なのか、それとも自社の政治的意見の宣伝なのか。

ここでは、どちらの候補がいいかを議論するのが目的ではない。選挙結果の予測において、予測市場のパフォーマンスがどうなのかを追いかけていくのが目的だ。「勝者総取り型市場」(Winner-Takes-All Market)の状況をみてみよう。この市場で取引される予測先物は、最終的に勝った候補者の銘柄1単位につき$1.00がもらえる。つまり選挙結果判明前の価格は、その候補が勝利する確率に関する期待値だ。直近データ、10月29日19時00分(CST)時点の価格は、共和党が$0.536、民主党が$0.469となっており、前回15日時点と比べて価格差が大幅に縮小している。このことはこの市場の価格動向を示すグラフ(アイオワ大学作成。こちら)でも確かめることができる。
すなわち、まだブッシュ大統領のほうが価格が高い状態は保たれているものの、そのリードはこれまでよりさらにわずかなものとなってきたのである。

そこで、他の予測市場での状況をみてみることにしよう。「NewsFutures」では、「ブッシュ再選」という予測先物の価格は52、つまり再選の確率は52%という予測になっている。「Foresight Exchange」でも「ブッシュ再選」は51、これに対し「民主党が政権を奪取する」は50だ。NewsFutures、Foresight Exchangeとも、仮想通貨を用いる。したがって現実通貨での利益はモチベーションになってはいない。しかし少し前にご紹介したSchreiber, Wolfers, Pennock, and Galebach (2004)の仮説のように、情報の集約においてむしろ現実通貨を使った予測市場よりも優れているのであれば、現在明らかになっている情報を集約した結果だと考えることもできる。

Iowa Electronic Markets以外で現実通貨を用いた予測市場というと、アイルランドの「TradeSports」がある。ここでは「ブッシュ再選」が52.5、「ケリー勝利」が48.5となっている。上記論文では、現実通貨を用いた場合、情報の発見に優れているとされているから、仮想通貨を用いた市場には見えない要因を「発見」している可能性があるが、この価格は、仮想通貨を用いた予測市場の結果とほとんど変わらないといってよさそうだ。

上に挙げたすべての予測市場において、「ブッシュ再選」の確率は50%を超える状況となっている。これらの市場の間では、通常の資本市場などとはちがって、裁定取引が成り立つ可能性はより小さい。仮想通貨同士は交換できないし、仮想通貨と現実通貨で裁定取引をやっても何の得にもならないからだ。したがって、すべての予測市場がブッシュ再選を予測していたことは、やはり単なる偶然ではないと思う。


以下比較のため、10月15日以降の支持率に関する報道を振り返っておく。テレビでも、どちらかというと事実よりも願望のレベルで反ブッシュの論調が多いが、10月17日放送の東京12チャンネル「日高義樹のワシントンリポート」では、ブッシュ再選が当然といわんばかりの結論だった。どういう情報ソースかは知らないが、よほどの自信があるのだろう。

10月17日
USAトゥデー紙、CNNテレビ、ギャラップ社が発表した共同世論調査で、投票に行くと答えた有権者の支持率は、ブッシュ大統領が52%で、ケリー候補の44%を8%ポイント上回った。10月11日に発表されたギャラップ社らの調査では、投票に行くと答えた有権者の支持率は、ブッシュ大統領が48%、ケリー候補が49%だった。また10月13日の第3回テレビ討論会後に実施された調査では、選挙登録を行った有権者の支持率は、ブッシュ大統領が49%、ケリー候補が46%だった。 今回の調査は、選挙登録を行った有権者942人と投票に行くと答えた有権者788人を含む成人1,013人を対象として、10月14~16日に電話で実施された。誤差はプラス・マイナス4%ポイントだった。

10月18日
ロイター通信と世論調査会社ゾグビーが10月18日に公表した、直近3日間の世論調査結果では、ブッシュ大統領、ケリー候補ともに支持率が45%だった。 前回10月17日発表の調査では、ブッシュ大統領の支持率が46%、ケリー候補が44%だった。その前の調査では、ブッシュ大統領が48%、ケリー候補は44%だった。

10月20日
NBCニュース/ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が10月16~18日に有権者1,004人を対象に実施した調査によると、投票に行くと回答した有権者の支持率は、ブッシュ大統領、ケリー候補ともに48%、無党派のラルフ・ネーダー氏は1%だった。誤差は3.1%ポイントだった。9月の調査では、ブッシュ大統領は50%、ケリー候補が46%ポイントであった。

10月22日
ハーバード大が10月21日に発表した調査によると、大学生を対象にした米大統領選の支持率調査では、ケリー候補支持が52%に達し、ブッシュ大統領支持は39%だった。投票態度を決めていないのは8%だった。また激戦の14州では、ケリー候補支持が17ポイント上回っている。4月に発表された前回調査と比べて、ケリー候補支持が増加した。前回はケリー候補48%、ブッシュ大統領38%で、11%が投票態度を決めていなかった。調査は10月7~13日、全米の大学生約510万人の中から無作為で選ばれた1,202人を対象に、ハーバード政治大学院の研究グループがインタビュー形式で実施した。

10月24日
ゾグビー社とロイター通信が10月23日に発表した合同世論調査によると、ブッシュ大統領の支持率は47%、ケリー候補は45%だった。ネーダー候補は1%で、「態度未定」の有権者は6%だった。この調査は10月20~22日に全米の1,206人を対象に行われた。

10月24日
10月24日付のワシントン・ポストは社説で、ケリー候補について、内政だけでなく安全保障政策でも「米国を導く資質を備えている」と評価、大統領選でケリー候補を支持すると表明した。ニューヨーク・タイムズ紙は既にケリー候補を「熱烈に支持する」と宣言しており、米国の有力2紙が同候補支持で足並みをそろえた。

10月25日
ロイター通信とゾグビーが共同で行った世論調査によると、ブッシュ大統領とケリー候補との支持率の差は2%ポイントで、ブッシュ大統領が依然リードを維持している。直近の3日間に行われた調査では、投票に行くと答えた有権者のうちブッシュ大統領を支持する人が48%、ケリー候補を支持する人が46%であった。前回調査では、ブッシュ大統領が47%、ケリー候補が45%で、ブッシュ大統領がやはり2%ポイントの差をつけていた。

10月25日
USAトゥデー、CNN、ギャラップが10月25日に発表した世論調査によると、ブッシュ大統領は5%ポイントの差でケリー候補に対するリードを守った。調査は、10月22日から24日にかけて実施された。その結果、登録有権者のうち、投票に行くと答えた有権者間で、ブッシュ大統領支持は51%、ケリー候補支持は46%だった。その1週間前の調査では、ブッシュ大統領支持が52%、ケリー候補支持が44%だった。登録有権者ベースでは、ブッシュ大統領支持が49%、ケリー候補支持が47%でより僅差の戦いとなっている。

10月26日
ロイター通信とゾグビーが共同で実施した世論調査によると、ブッシュ大統領の支持率は49%、ケリー候補は46%で、依然としてブッシュ大統領がケリー候補を3%ポイント上回っている。前日公表された調査でもブッシュ大統領48%、ケリー候補45%で、ブッシュ大統領が3%リードしていた。今回の調査は10月23~25日にかけて、投票に行くと答えた有権者1,206人を対象に実施された。

10月27日
ロイター通信とゾグビーが実施した世論調査によると、ブッシュ大統領の支持率は48%、ケリー候補支持は47%で、ブッシュ大統領が依然としてケリー候補を1%ポイント上回っている。10月26日に明らかにされた調査では、ブッシュ大統領49%、ケリー候補46%で、ブッシュ大統領が3ポイントリードしていた。今回の調査は10月24日~26日にかけて、投票に行くと答えた有権者1,203人を対象に実施された。

10月27日
ABCが10月23~26日に実施した世論調査によると、ブッシュ大統領の支持率は48%、ケリー候補は49%っであり、ケリー候補が、ブッシュ大統領を依然1ポイントリードしている。前日、前々日公表の世論調査でも、ブッシュ大統領が48%、ケリー候補49%だった。調査は、有権者2,412人を対象に電話で実施された。うち投票に行くと答えたのは1,709人だった。誤差は、プラスマイナス2.5%ポイントだった。

10月28日
10月28日付のワシントン・ポスト(電子版)によると、有権者登録をしているヒスパニック(中南米系)を対象に同紙などが実施した世論調査で、ケリー候補の支持率が59%と、ブッシュ大統領の30%を大きく上回った。結果は7月の調査とほぼ同じだった。 

10月28日
当地の非営利研究機関「優秀なジャーナリズムのためのプロジェクト」がこのほどまとめた米主要メディアによる大統領選挙の報道ぶりに関する調査によると、ケリー候補に対して「好意的」な報道は34%、「否定的」は25%だった。4年前に民主党候補だったゴア副大統領(当時)が同じ調査で「好意的」13%、「否定的」56%だったのに比べて、ケリー候補はマスコミの支持を得ていることが分かる。一方、ブッシュ大統領に「好意的」な報道は14%で、「否定的」は59%だった。4年前は「好意的」24%、「否定的」49%であり、厳しい状況となっている。調査対象は、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど4つの新聞とCNNテレビなどのニュースであり、10月1日から14日まで817の記事や番組を調べた。 

10月28日
ロイター通信とゾグビーが10月25~27日にかけて共同で、投票に行くと答えた有権者1,206人を対象に実施した世論調査によると、ブッシュ大統領の支持率は48%、ケリー候補は46%であり、ブッシュ大統領が依然としてケリー候補を2ポイント上回っている。前日27日に公表された調査では、ブッシュ大統領48%、ケリー候補47%で、ブッシュ大統領が1ポイントリードしていた。

10月28日
ABCが実施した世論調査によると、ブッシュ大統領の支持率は49%、ケリー候補は48%だった。調査は10月24~27日に実施された。前回の調査では、ケリー候補の支持率が49%、ブッシュ大統領が48%だった。調査は成人2,422人を対象に電話で実施された。うち投票に行くと答えた人は1,747人だった。誤差はプラスマイナス2.5%ポイントだった。

さまざまな世論調査についてはこちらに出ている。

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