オリンピックとパラリンピック:スポーツ・ノーマライゼーション・インデックス
まずは各国のメダル獲得数を整理しておこう。以下のとおりだ。金メダル獲得数の順になっている。前回の記事で途中経過を出したが、1位の中国は変わらなかった。日本は12位から10位へと若干順位を上げた。
金 銀 銅 計
1位 中国 63 46 32 141
2位 英国 35 30 29 94
3位 カナダ 28 19 25 72
4位 米国 27 22 39 88
5位 豪州 26 38 36 100
6位 ウクライナ 24 12 19 55
7位 スペイン 20 27 24 71
8位 ドイツ 19 28 32 79
9位 フランス 18 26 30 74
10位 日本 17 15 20 52
オリンピックとパラリンピックのメダル獲得数の分布をグラフにしてみた。横軸にオリンピック、縦軸にパラリンピックの獲得メダル総数をとっている。ほとんどの国は両大会ともメダル獲得数はゼロに近いあたりにとどまっており、いわゆる強豪国がそこから離れたところに散らばっている。ごくおおざっぱにいえば、パラリンピックで活躍している国は、オリンピックで活躍していた国である傾向をもっている。ある程度の相関関係はありそうだ。
これだけでは面白くないので、1つ新しい指標を考えてみた。両大会でのメダル獲得状況を使って、障害者のノーマライゼーションの度合いを測ろうというものだ。両大会での成績がそろっているほど優れているという指標で、「スポーツ・ノーマライゼーション・インデックス(SNI)」と名づけた。以下を含むいくつかのきわめて乱暴な仮説がベースとなっている。
・パラリンピックにおける活躍(メダル獲得数で測る)は、その国の障害者のおかれた状況を反映する。
・1つの国のオリンピックにおける活躍度とパラリンピックにおける活躍度には相関関係がある。
・パラリンピックにおける活躍度がオリンピックと比べて低い場合、その国のノーマライゼーションには問題がある。
・逆にパラリンピックにおける活躍度がオリンピックと比べて高い場合も、ノーマライゼーションという観点からは問題がある。
計算方法は次のとおり。
①オリンピック、パラリンピックの両大会におけるメダル獲得総数をランキングにする。
②ランキングの差を「パラリンピック-オリンピック」として求める。つまり、パラリンピックのメダル数のほうが多ければプラス、少なければマイナスとなる。
③ランキングのために絶対値をとる。ただしこのとき、元の数字が正であるある場合、2で割る。
④上記の結果を値の小さい順に並べる。
一覧表はこちら。国の順番はオリンピックの金メダル獲得数順となっており、少々見にくいが容赦いただきたい。右端の列がスポーツ・ノーマライゼーション・インデックスによるランキングである。上位13位までを並べると次のようになる。
1位 ドイツ、スロベニア
3位 ニュージーランド
4位 フランス、ベラルーシ、スロバキア、セルビア・モンテネグロ
8位 アメリカ
9位 中国、オーストラリア
11位 日本、オランダ、台湾
この順位は、先ほどのグラフで、「45度線」にどれだけ近いかをあらわしていると考えられる。そこから離れたものは低く評価されているわけだが、中でも45度線の下側、つまりオリンピックのメダル獲得数に比べてパラリンピックのメダル獲得数が少ないものは、特に努力が必要な国、ということになるかもしれない。具体的には、ルーマニア、トルコ、キューバ、エチオピア、イラン、カナダなどだ(当該国の方々、これはあくまでお遊びなので、あまり気にしないでもらいたい)。
日本はオリンピックのメダル獲得数で6位、パラリンピックで11位、そしてSNIでも11位というわけで、まあまあそこそこの地位にあるといえる。メダル総数もさることながら、オリンピック、パラリンピックの双方でいっそう活躍できる国になっていってもらいたいものだ。
というより、オリンピックとパラリンピックを分けておくのもいいかげんにやめたら、という気もする。商業性の差なのだろうか。しかしパラリンピックだって面白い競技がたくさんあるし、オリンピックだってテレビ中継されない競技は山ほどある。そのほうがノーマライゼーションの観点からも望ましいのではないだろうか。
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