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October 09, 2004

「かわいいコックさん」は登録商標

棒が一本あったとさ
はっぱかな
はっぱじゃないよ
かえるだよ
・・・

よく知られた絵描き歌だ。最後は「あーっというまにかわいいコックさん」となり、コックさんの絵が描ける。この「“かわいいコックさん”」がある企業の登録商標だということをご存知だろうか。

ライセンサーは㈱オムテモワンという企業だ。私も、先日「ライセンシングアジア2004」でこの企業のブースをのぞくまで知らなかった。公式サイトはこちらだ。この企業は、1995年8月に世界初の「コックさん」Tシャツをデビューさせ、1996年3月に特許庁に商標登録を出願し、1997年8月に登録を完了した。登録商標となっているのは、「“かわいいコックさん”」のイラストとロゴなので、絵描き歌そのものは対象ではない。これを広めるために、同社では、6月6日を「コックさんの日」と定めたそうだ。

「かわいいコックさん」の絵描き歌は、古くからあった。いつごろからあったのかはわからない。コックさんというぐらいだから、まちがいなく明治以降なのだろう。公式サイトには「誕生秘話」もあって、それによるとどうも昭和初期ぐらいのもののようだが、真偽のほどはわからない。いずれにせよ、この企業が考案したものではないことは確かだ。この企業はそれを登録商標にしてしまったわけだ。ブースの担当者に聞いたところ、個人が描いたり学校の授業で使ったりする分には権利を主張しない、とのことだった。商業的に使用する場合にはライセンスフィーをいただく、と。

申し訳ないが、当たり前だ。この絵も絵描き歌も、この企業の考案したものではない。この企業がやったことは、昔からあった絵描き歌の絵をTシャツにプリントして、それを登録商標にしただけだ。知的財産権とは、オリジナリティを保護するものではないのか。こういうものは法的保護に値するのか。どうにも納得がいかない。この会社が「かわいいコックさん」を商品化すること自体はかまわない。しかしなぜこの会社だけに独占させるのか。上記の「誕生秘話」が本当なら、誕生後60年ほどたっているということになる。著作権法第52条によれば、無名の著作物の著作権は、公表後50年で消滅する。だとすれば、このイラストと絵描き歌は、現時点では、いってみればモーツァルトの音楽のような公共財ではないのか。商業的使用のみとはいえ、一企業に独占させる必然性がどこにあるのか。

法律で許されているのだし、この企業を責める気はないが、これってアリか!?という印象は否めない。これなら「へのへのもへじ」だって、「棒人間」だって登録できるのではないか。(「棒人間」とは、下手くそなアスキーアートだが、下の図のようなものを指している。)

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2ちゃんねるにもいろいろなアスキーアートがあるが、あれを誰かが商業化して商標登録したら、自由に使えなくなってしまうということにはならないか。「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ 」だって、うまくすれば登録できちゃうかも。

やはり納得がいかない。

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Comments

 同感です。最近何でも知財化してしまうような雰囲気が
出てきているのが心配です。
 オープン(知識の公開)とクローズド(知財化)との戦いは、最近後者の方が優勢のように思えますがいかがでしょうか?
 少し、山口さんの趣旨とはずれたかもしれませんが。

Posted by: senu2385 | October 09, 2004 10:54 AM

この登録を許可したのはほんとうに納得できませんよねえ。今後こういう形でみんなの共有財産が蝕まれないようになっていって欲しいです。

登録商標って微妙ですよね。ガンバレ日本!とかも同様のケースではなかった出したっけ。あとタイガースとか。

とはいえ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ をやまぐちさんが取り上げるというのは極上のツッコマビリティなのでしょうね!ヤラレタ!(笑)

Posted by: Hiroette | October 09, 2004 09:31 PM

やまぐちさん、おはようございます、

真剣に「べき乗の法則とネット信頼通貨」の話題でないですが、知的財産のうちでなにがすでに公共財になっていて、なにが登録商標や著作権の対象になるのかの議論が、このデジタル・コピー時代には必要だと感じます。たとえば、国家予算規模すら超えているマイクロソフトで、世界市場で70%を超えるプラットフォームになっているWindowsの著作権とはなんなのか?あるいは、Pinaさんではないですが、XMLの仕様に著作権はあるのか(え、あるんですか?)とか、モナリザの肖像権とか、とかとか...

やはり、この辺はレッシグなんですかねぇ...でも、もちょっと自分で考えてみたい気がします。

Posted by: ひでき | October 10, 2004 11:07 AM

ひできさん
私を含め、大半の人にとっては、「まずは勉強」だと思います。知的財産権については、ほとんどの人は何も知らないに等しいのが現状です。
著作権もさることながら、特許権のほうもけっこうたいへんで、青色発光ダイオードに関する中村教授の職務発明の件とか、エイズ治療薬の途上国における価格の問題とか、そもそも法律がどうあるべきなのか、何を社会の目標とすべきなのかなど、いろいろ問題が山積しています。
法技術論とかは専門家に任せるとして、「べき」論ぐらいは素人も参加できるはず。難しい問題ですが、考えていきたいと思います。

Posted by: 山口 浩 | October 10, 2004 01:29 PM

初めまして!
web検索によって、判明したことがございます。
ぜひ、当方のブログ、ご覧ください。
なお、一昨日より、サイトの不具合がおありのようで、リンク先が、山口さまの前のURLになっております。
サイト落ち着かれたようなら、近日中に、修正いたします。
忌憚なく、ご意見、お聞かせ下さいませ。
よろしく、お願い申し上げます。
http://bou11.exblog.jp/899870

Posted by: yamashita | November 10, 2004 12:28 AM

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