やや暴論:マスコミを撮ろう
災害報道などにおいて、マスコミのあり方が問われている。今回の新潟県中越地震の際も、災害現場で傍若無人な振る舞いをしたり、貴重な物資を買い占めたりと、およそ公的存在ともいうべき報道機関にあるまじき行動が散見されたとの情報があった。やはり、と思う人が多いのは、おそらく他にも似た例がたくさんあるからではないかと思う。
こう書くと、見もしないのに決め付けるな、との反論が来るかもしれない。それも確かに一理ある。
そこで、だ。
今回の地震は、草の根ジャーナリズムとしてのblogやネットの役割がこれまでよりいっそう注目されるきっかけともなった。現地から淡々と食事を記録していくblog「食べたものを淡々と記録するよ」(くりおねさんのご紹介)もそうだし、今回の報道機関の「非道」ぶりを報告した「天漢日乗」もそうだ。Blogによる草の根ジャーナリズムについては、いくらトラックバックで連携してみても所詮二次情報で、一次情報は報道機関に頼らざるを得ないではないか、との考えが根強いが、これらの例は、必ずしもそうとは限らないことを示している。
考えてみれば、既に私たちの社会は、すみずみにまで携帯電話やパソコンという文明の利器を行き渡らせている。災害現場にわざわざヘリコプターで乗りつけることはできないが、災害現場にいる人の中には、現場からの情報を伝えられる、また伝えたいと思う人がいても不思議ではないし、実際にいたわけだ。こうした一次情報の発信者としてのbloggerの役割は、これからもっと注目してもいいかもしれない。一次情報が出た後は、得意の二次情報ネットワークが効いてくる。もちろん、災害の状況を伝えることのほうが大事なのだろうが、マスコミの振るまいだって、「証拠」を付きつけて「告発」してもいいのではないかと思う。彼らは報道の自由を盾に「特権扱い」を要求しているのだ。それならそれなりに、監視されることをも甘受すべきだ。
災害現場だけではない。日常の場でも、マスコミの振るまいに疑問があったら、一次情報としてどんどん発信したらいいと思う。その際、できるだけ画像や映像、音声などもつけるといい。マスコミ側はプライバシーを主張するかもしれないが、第四の権力であるマスコミがその業務を執行中であるなら、その権力に見合った権利の制限を受けるのは当然ではないかと思う。それに、マスコミが横暴を働くなら、それを世間に伝えるのは(われわれが「報道の自由」を標榜する「草の根ジャーナリズム」であるとするなら)、まさにわれわれが果たさなければならない責任だ。
マスコミを撮ろう。報道機関として当然の義務を果たしているか、常識に反したふるまいをしていないか。カメラ付き携帯電話で記録し、blogで発信しよう。いうまでもないが、これはマスコミとblogの敵対関係ではない。政府と市民が敵対関係にはないのと同じことだ。民主主義は力のバランスから生まれる。マスコミが第四の権力なら、われわれもそれを監視する力を持とうというだけのことだ。
ただし、bloggerが草の根報道として行動するのであれば、プロ並とはいわないまでも、個人としてできる限りのモラルをもって臨む必要があると思う。容易に確認できる事実は確認すべきだし、事実を故意に捻じ曲げるべきではない。あまり感情的・扇動的な表現も適切ではないと思う。これまでメディア・リテラシーといえば、どちらかというと情報の受け手をイメージすることが多かったと思うが、情報の発信者のメディア・リテラシーといったものも、これまで以上に考えていくべきかもしれない。もちろん最初から完璧にはできないかもしれないが、何しろ「報道の自由」なのだ、少なくともマスコミの皆さんがそうである程度には、失敗も大目にみてもらおうではないか。
The comments to this entry are closed.
Comments
TBありがとうございました。「やや暴論」とかかれてはいますが、ここまで言われるかいう気持ちと、何度言っても直らないなら仕方ないという気持ちが入り混じっています。これは効果があるかもしれません。証拠もあるし、マスコミは打たれ弱いですし。ただ、無断撮影はやはりどうかと思います。撮影するのであれば、一声かけて、それでもやめないマスゴミを記録してもらいたいと思います。人は知らず知らずのうちに人を傷つけてしまうことがあります。それはマスコミであろうと、ブロガーであろうと、個人対個人でも同じではないでしょうか。
Posted by: ガ島通信 | November 06, 2004 02:38 PM
コメントとトラックバックありがとうございます。
「取材はひと声かけて」が基本、ということですね。マスコミの方はこれを遵守されているのでしょうか。無断で撮られて怒っている人の話をよく聞くのですが。
プロとアマの差が小さく、とはよくいいますが、私はやはり差はあると思います。その一環として、私は、「マスコミは取材現場において監視されることを甘受しなければならない」というものを挙げたいですね。ジャーナリズムというものに対するプロとしての覚悟といったものを見せてもらいたいものだと思います。
それよりもまず、マスコミの態度がよくないと思うことがあったら、マスコミの方に「それはまずい」と伝えるのが先決でしょうか。それがコミュニケーションというものですよね。
Posted by: 山口 浩 | November 06, 2004 04:08 PM