ゲームにおけるプロダクトプレースメント
プロダクトプレースメントは、映画やテレビなどではもうすっかりおなじみになった広告手法だ。「007」シリーズでボンドカーに使われるBMWの例は有名だが、他にも「E.T.」でETが飲み食いしたキャンディやビール、「M.I.: 2」でトム・クルーズがかけたオークレイのサングラス。「マトリックス」に登場したサムソンの携帯電話もそうだ。テレビはスポンサーがつくから、歴史はさらに古いと思う。私の知っている限りで最も古い例は、1966年のアニメ「ハリスの旋風」だ。主人公石田国松の通う学校の名「ハリス学園」が、提供するハリス製菓からとられていただけでなく、毎回国松がガムをかむシーンがあったのだ。また、ちょっとずれるが「水戸黄門」では、一行が訪れる各地の名産品や名所を古くから紹介していた。同様の例が「サザエさん」のオープニング映像や「名探偵コナン」でもみられる。ネットの動画配信サービスでは、ライブドアのネットシネマなどで、映像コンテンツの企画段階から対象製品を効果的に用いるよう考えられた例がある。
もはやこの手法は、ありとあらゆる映像媒体で使われているといっても過言ではない。
もちろんゲームにも、だ。
ゲームにおけるプロダクトプレースメントは、まだ歴史が浅いが、近年急速に拡大している。「Sims Online」にマクドナルドやリーバイスなどの広告や店舗が登場するのは有名だ。ビデオゲームでは、接客アクションゲームといったジャンルもあり、「吉野家」、「カレーハウスCoCo壱番屋 今日も元気だ! カレーがうまい!!」など、店そのものがゲームになったものがあるが、これが吉野家などから金をとっているのかどうかは知らない。ちなみに「吉野家」は携帯電話コンテンツにもなっており、日本だけでなく中国にも展開するとか。
MITのTechnology Reviewでは、最近の動きを紹介している(記事はこちら)。「Need for Speed Undreground 2」の中に、ディスカウントストアのBest Buy、携帯電話のCingular Wireless、 男性化粧品のOld Spice、ファストフードのBurger Kingなどが登場している。また、オンラインゲームに関しては、「japan.internet.com」でも同様の記事をとりあげている(記事はこちら)
Technology Reviewの記事を若干紹介しておく。Nielsen Media Researchによれば、18歳から34歳までの男性のテレビ視聴時間は12%減少し、一方ゲームに費やす時間は20%増加しているとのことだ。ビデオゲームの売上は昨年107億ドルと、映画の興行収入を上回っているが、ゲーム産業の市場調査会社DFC Intelligenceの推計では、2008年には169億ドルに達すると予測されている。同社は、現在年間2億ドル前後であるゲームの広告市場の規模が、2008年には10億ドルに達すると予測している。クライスラーグループ社では現在、広告予算の10%超をゲーム内広告に振り向けている。同社の自動車、クライスラーやジープなどをゲームに登場させるためだ。この金額は、4年前にはゼロだった。一方、テレビや印刷媒体による広告費は削っている。
Massive Inc.は11月、PCゲーム内にオンラインで広告を配信するネットワークのサービスを開始した。これにより、ゲーム内の広告が開発時のままではなく、そのときそのときの最新の広告をどんどんとりいれられるようになる。私たちが乗る地下鉄の駅の広告が日々変わっていくのと同じように。このネットワークは、これらの広告がどのくらいの時間表示されていたかも記録しデータとして収集することができる。従来の方式では、ゲームでのプロダクトプレースメントは販売予測とプレイヤーの目にふれる回数を予測して広告料を計算していたが、新しい方式なら、実際の広告効果を計測できるのだ。UbisoftやVivendi Universal Gamesは、来年発売予定のゲームにMassiveのサービスを組み込むとのこと。
これをふまえて。
新たな媒体が生まれればそこに広告がつく。きわめて自然な流れだ。ゲームの場合、通常の映像コンテンツに比べてインタラクティブ性が強いため、これからさらに発展し、新たな手法が開発されるだろう。その先駆となりそうな例が、今年の夏にみられた。「ポケットモンスター」の夏のキャンペーン「ポケモンだいすきクラブ 夏休み大作戦」だ(すでに終了しているが、キャッシュ画像はこちら)。このキャンペーンサイトでは、キーワードを集めて進めていくゲームが行われていたが、キーワードが提携企業のサイトの「どこか」に隠されており、子どもたち(というよりおそらくその親たち)はそれらの企業サイトを必死に探し回る中で、提携企業のキャンペーンやらおすすめ商品やらを見て回ることになった。
また、今年の冬に発売される任天堂の新しい携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」では、ワイヤレスでプログラムをダウンロードできる機能があり、ポケモンの映画上映中に特定のシーンが来るとゲームをダウンロードできる、なんていうことが可能になるらしい(記事はこちら)。これを応用すれば、広告主の商品を買ったり指定した場所に行ったりすることでゲームをクリアするような、リアルとバーチャルがより高度に融合したプロダクトプレースメントが可能になるだろう(もちろんうまくやらないと逆効果になるだろうが)。こうした、リアルとゲームの境目があいまいになったかたちのプロダクトプレースメントも、ゲームにおいて今後もっと伸びていくかもしれない。
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Comments
ハリスの旋風!もこれだったんですか!
いやあ!やられたってかんじです。
この記事見るまで、すっかり漫画のことは忘れておりました。
しかし、見たとたん、あの主題歌が頭の中で鳴り出しました!
これも、一種のマインドコントロールですかねえ・・・。
Posted by: yamashita | November 11, 2004 11:43 PM
コメントありがとうございます。
「ハリスの旋風」とその続編(?)の「国松さまのお通りだい!」は、どちらもなぜか記憶に残るインパクトがありました。だから思い出したわけですが、本当はもっと他にも、もっと前からあるのではないかと推測しています。何しろテレビはスポンサーが前面に出ますから。アメリカの事情は知りませんが、きっと日本より進んでいるでしょうから、さらに古いかも。業界がちがうだけで常識が常識でなくなるところが面白いです。「イノベーション」なんて、たいていこういうものなんですね。
Posted by: 山口 浩 | November 12, 2004 01:28 AM
ファイナルファンタジーアドベンドチルドレンの中の
携帯電話はNTTドコモのP900ivです。
Posted by: kenny | October 18, 2005 12:11 AM
kennyさん、情報ありがとうございました。
Posted by: 山口 浩 | October 18, 2005 12:17 AM