シングルマザーは女の子を産む可能性が高い
Economist誌2004年10月23日号77-78頁より。シングルマザーは女の子を産む確率が高いとの研究が発表された、とのこと。
いや、「シングルマザー」は正確な表現ではない。「男性と一緒に暮らしていない女性は」ということらしい。
通常、新生児の男女比は、男の子のほうが若干多い。男の子の死亡率が高いことの反映だと考えられている。しかし最近、英国、米国、カナダにおいて、新生児のうち男の子の割合が低下しているらしい。最近のProceedings of the Royal Societyに出たNBERのDr. Karen Norbergの論文によると、アメリカの60,000世帯を調査した結果、男性と一緒に暮らしていない女性が生んだ子供が男の子である割合は49.9%で、男性と一緒に暮らしている女性の場合の51.5%に比べて有意に低いという。
Economist誌は、これについて次のような仮説を紹介している。
①ホルモン変化が影響する。
哺乳類についての研究で、ホルモンの変化により、交尾の頻度が生まれる子供の性別に関係しているとの結果が得られている。また、排卵日あたりに受精した場合に女の子が生まれやすいことも知られている。男性と一緒に住んでいない女性の場合、「頻度」が低いため、欲求の高まる排卵日近辺に受精する確率が高く、したがって女の子が生まれる確率が高くなる、という。
②同性の子供は育てやすい。
シングルマザーの場合、女の子のほうが、自分も女性であることから、性別固有のスキルなどを伝えやすい。
③片親家庭よりも両親のそろっている家庭のほうが子供を育てやすい。
人間を含む動物一般において、一生を通じてオス1個体が産ませる子供の数はかなりばらつきがあり、有力なオスほど子供の数が多くなるのに対し、メスの場合にはあまりばらつきがないことが知られている。とすると、産んだ子供に充分手をかけ、「競争力」のある大人に育て上げることが可能であれば、オスの子供であるほうが、自分の遺伝子を多く残せる可能性が高くなる。これに対し、子供に充分な手をかけられない場合、メスの子供であるほうが、自分の遺伝子を残す可能性が高くなる。人間の場合、他の哺乳類とちがって父親も育児に参加することが多いので、両親がそろっているほうが「いい条件」となる。
以上が記事の概要だ。賛否入り乱れるだろうが、とりあえず前半の客観的な観察に基づいた事実は否定できまい。日本でもそうなのか、気になるところだ。後半の仮説については、ちがう可能性があるというのも充分ありうる。ただ、政治的に利用するのは避けたい。
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Comments
やまぐちさん、こんばんわ、
一部の例にすぎないのかもしれませんが、米国の若いカップルはシングル・マザーの方が補助金や保険などが安くすむため生物学的な父親と一緒に暮らしている場合でも籍をいれずにいることが多いと聞きました。もしかすると、女児が多いというのも関係しているかもしれませんね。
Posted by: ひでき | November 03, 2004 08:51 PM
コメントありがとうございます。
原論文を読んでいないので知りませんが、アメリカ人の研究ですから、アメリカで常識になっているようなことは反映しているのではないかと思います。籍を入れているかどうかでなく一緒に住んでいるかどうかがポイントで、推測するにアンケートをやったのではないかと思います。政府の調査でなければ、実態を隠すことは少ないのではないかと。
Posted by: 山口 浩 | November 03, 2004 09:43 PM
>いや、「シングルマザー」は正確な表現ではない。「男性と一緒に暮らしていない女性は」ということらしい。
失礼いたしました!最近また一段とぼけがすすんだようです。
気をつけます。
Posted by: ひでき | November 03, 2004 10:17 PM
この説を、女の子三人の我が家にあてはめてみると、私が常に留守がち、ということになるのだが、それは事態をとてもよく説明してくれます。
うーむ。複雑な気分。
Posted by: miyakoda | November 04, 2004 07:19 PM