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November 17, 2004

米大統領選市場をふりかえる

米大統領選挙はブッシュ大統領の再選という結果に終わった。デッドヒートが報じられていたが、ふたをあけてみれば、投票率が上がればケリー候補有利との下馬評ははずれ、高投票率の結果もあって、過去最高の得票数をブッシュ大統領が獲得し、前回選挙よりも大きな差がつく結果となった(選挙結果はこちらを参照)。

本blogでは、これまでたびたびアイオワ大学の「米大統領選得票率予測先物市場」の動向をお伝えしてきたが、選挙も終わった今、ここで結果を総括してみたい。(11月5日時点までのグラフはこちら)。

この市場で取引されている予測先物は、大統領選における各候補の得票率がそのまま価格となる。つまり得票率が55%なら、価格は$0.55だ。したがって最終的な得票率がわからない現時点での価格は、当然ながら最終結果に関する期待値となる。

ブッシュ大統領の最終的な得票率は、51.3%だった。計算式で示すと、こうなる。
59,459,765/(59,459,765+55,949,407+400,706)=0.5134 . . . 
分母の3つめの数字は、ラルフ・ネーダー候補の得票数だ。しかしこの予測先物では、共和、民主の2党の得票のみをカウントする設計になっている。したがって、2党だけを考えた場合、ブッシュ大統領の得票率は、51.5%となる。

グラフをみていただきたい。これまでと少しちがい、共和党の価格だけを載せてみた。原数値(青)と、7日間の移動平均(緑)だ。赤い線は実際の得票率、つまり51.5%である。11月5日時点で価格が得票率に収斂しているのは当然だが、全体として、51.5%からあまり離れておらず、その周辺を動いているのがおわかりいただけるだろう。ちなみにグラフを作り始めた2004年1月からの平均価格は$0.52、標準偏差は$0.017だ。実際の得票率と平均価格との差は$0.005であり、平均価格から1標準偏差の1/3も離れていない。投票日前日までの7日間の平均価格は$0.512であり、さらに近い。

しかし特筆すべきは、2004年初頭の段階ですでに、最終結果とほぼ変わらない$0.51~0.52前後の値を示していることだ。この傾向は、多少のぶれはあるものの、今年を通じてほぼ一貫していた。本blogでもしばしば書いたことだが、世論調査結果や専門家の分析などが大きくぶれていたにもかかわらず、予測市場の示す予測はほとんど変わらなかったのだ。もちろん、全ての選挙においてこのようなパフォーマンスを示すとは限らないが、少なくとも今回選挙に関しては、これまでの多くの選挙のケースと同様、予測市場は、世論調査よりも正確な予測をしていたと結論づけてもよいと思う。しかもそれは投票日直前だけでなく、投票日よりかなり前から予測として利用が可能であった。

この結果だけからみると、投票日直後、一部の出口調査でケリー候補が優勢と伝えられ、もう1つ大統領選予測市場である勝者総取り型市場(Winner-Takes-All Market)においてケリー候補が大逆転したあの「大騒ぎ」は、ただの撹乱要素でしかなかったということになる。この市場においても、大勢はブッシュ大統領優勢という価格推移をたどっていたが、投票日が近づき連日のように世論調査結果が発表されるにつれて差が縮小し、投票日直後には一時ケリー候補の価格が急騰したのだった。
情報はときとしてそれほど多くないほうがいい場合があるのかもしれない。

いずれにせよ、今回の大統領選を通じて、予測市場は、世論調査や専門家の予測など、他の予測手段よりも優れたパフォーマンスを示した。この手法の有効性は、理論的にはある程度説明ができても、実際のところは結果で示すしかない部分がある。その意味で今回の結果は、予測市場の有効性を示した例として記憶されるべきだろう。

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