「英会話学校」の広告で思い出すもの
街を歩いていて、また電車に乗っていて、よく目に付くのが英会話学校の広告だ。いろいろなものがある。
これらの広告をつらつら眺めていると、どうしても頭に何かひっかかる。「何かと似ている」と。何だろうとずっと考えていたのだが、最近ようやく思い当たった。ホストクラブだ。
といっても、ホストクラブに詳しいわけではない。一般常識として知っている範囲と、今回この記事を書くために、インターネットでいくつかサイトをのぞいてみた程度だ。だから実際の姿とはちがうかもしれないが、それほどずれてはいないと思う(もしちがっていたら、ご指摘いただけるとありがたい)。どちらもサービス業だから、基本的な性質は似通っているのはある意味当然なのだが、この両業種は、それ以上に似ている部分があると思う。
英会話学校の広告に必ずといっていいほどよく出てくる典型的なセールスポイントは、次の3つだ。
(1)明朗会計
(2)お得(今だけ限定のお得なプラン!)
(3)講師は全員外国人(しかも選べる)
(1)はいうまでもない。この種のサービスは、「満足」な結果が得られるまでに実際どのくらいの費用がかかるかがきわめて重要だ。たいていの英会話学校は、レッスンの数に応じて料金を支払う従量料金制だ。ただこれだけでは料金がかさむのではという利用者側の不安もあるから、それを緩和する策を講じている。たとえば、試験対策のためのスクールなどでは、点数アップを保証し、それまでは定額、というプランをとっているところも少なくない。この、従量料金制+特定の場合に定額プランというやり方は、ホストクラブでもけっこうあるのではないかと思う。
(2)もよくある。新装開店記念。○○周年記念。キャンペーン特価。ネタはいくらでもある。また、初回利用者向けの割引コースもよくみられる。英会話学校もホストクラブも、こうした広告で潜在顧客に来店を促すのだ。また、どちらも「固定客」の確保が収益性アップのキモであることは共通している。したがって会員組織を作ったり、クーポン券を出したりして、顧客を囲い込もうとする。
ここまでは、ある意味多くのサービス業に共通している。問題は(3)だ。(3)は、抽象的にいえば、スタッフの「品揃え」が店の魅力である、ということだ。少なくとも電車の吊り広告などでは、多くの英会話学校は白人男性講師を前面に押し出した広告を展開しているし、サイトなどでは講師のプロフィールが写真入りでていねいに紹介されている。そのほとんどが男性だ。これだ。これがホストクラブを思い起こさせる理由だ。
ホストクラブのサイトをみてみると、どれも最も力を入れているのが当然ながらホストの紹介だ。もちろん詳細なプロフィール入り。当然ターゲットは女性ということだろうが、女性顧客に対して売り込み、囲い込むためのポイントがスタッフ、というのは英会話学校にも共通している。もちろん、ホストクラブのほうが、英会話学校に比べて「スタッフの質」へのこだわりは強いだろう。ちがうのはわかっているのだが、どうしても重なってみえてしまう。「講師は全員外国人」というキャッチフレーズの英会話学校があったと思うが、これはホストクラブが「いいホストをそろえてます」と基本的には変わらないのではないかと。
ことわっておくが、英会話学校にまったく偏見はない。「会話」でなく「英語学校」だったら私も通ったことがあるし、そうしたスクールで英会話を学ぶことも悪くないと思う。それでも、街で見かける英会話学校の広告には違和感があるのだ。どうして「男性」でしかも「白人」なのだろうか。広告はターゲット層に訴求することを目的としているから、要は英会話学校のターゲット層の興味がそこにある、ということなのだろうか。女性の意見をぜひ聞いてみたい気がする。
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Comments
おひさしぶりです。わたしも某英会話学校で1年ほど働いたことがありましたが、生徒はお客様、先生は生徒のニーズに合わせて面白おかしく教えなければならないと『教育』を受けました。教育という意識よりはエンターテイメントであるという意識を強くもって教えなさいとも。ただ、生徒を明確にお客と定義し、お客の立場から、わかりやすく知識を教える、という考え方はいまでも役立っています。
Posted by: akinaki | November 26, 2004 09:08 PM
「白人男性講師」しかも美形採用、というのは確信犯だと
以前KFiClubの会合の中でお聞きした事があります。
戦略としては大成功で、女性入学希望者激増、業績はアップという
成果があったそうです。
その際、笑い話的に「銀行窓口もイケメンというサービスもイイね」
という話題で盛り上がりました。
まぁ、《付加価値》という感じでしょうか・・・
Posted by: N@o | November 26, 2004 10:32 PM
コメントありがとうございます。
akinakiさん
「サービス業」としての教育、という発想は、大学などでももっと真剣に考えなければなりませんね。今回いくつか英会話学校のサイトを見てみましたが、どれもいろいろ工夫があって、面白かったです。
N@oさん
確信犯というか、消費者のニーズをきちんととらえた結果であろうと思います。「銀行窓口にイケメン」は、今は「若い女性行員」だから裏返しですね。重視すべき顧客が誰かによるのでしょう。考えてみると、なぜ大企業の受付にはきれいなお姉さんが座っているのかということと根はいっしょです。
Posted by: 山口 浩 | November 27, 2004 10:54 PM