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December 04, 2004

環境配慮型F1のすすめ

2004年10月22日、自動車レースのフォーミュラワン(F1)を統括する国際自動車連盟(FIA)は、レース車両のエンジンとタイヤに関する規約改定を発表した(記事はこちら)。2005年3月1日から実施される。新規約での主な変更点は、①1つのグランプリ(GP)で使っていたエンジン1基を2GPを通して使う、②使用タイヤは予選から決勝まで1組のみ、③速度が上がりすぎない車体形状にする、などだ。この改訂は費用削減と安全性を高めるためだという。

コストを度外視してスピードのみを追求する、と思われがちなレースの世界だが、苦労はあるものだ。

この改正により、原則として、決勝中のピットストップでもタイヤ交換ができなくなった。また、エンジンも耐久性がこれまで以上に重要となり、パワーがある程度犠牲になるものと思われる。F1レースは年間数百億円の経費がかかるため、2~3年前から、大手自動車メーカーの後ろ盾がない個人が運営する小チームの消滅、撤退が相次いでいた、のだそうだ。

さて。

スポーツのルールは、私たちが通常考える以上によく変わる。記憶に新しいのはスキーのジャンプだ。以前、日本人に不利な変更があったとか言っていたが、最近導入されたBMI指標による規制は日本人に有利な変更なのだそうだ。恣意的という印象がないでもないが、たいていの場合、変更するにはそれなりの理由がある。

記事からみるに、今回のF1に関するルール変更は、要するに、FIAとして、参加チームが減る事態を避けたいので、コストがよりかからない方向にルールを変えよう、ということなのだろう。まあそれもしかたのないことだ。金がかかりすぎては参加者も困るし、参加者が少なくてはレースも成り立たない。

F1レースなるものの維持にスポンサーが必要である以上、スポンサーの意向を無視することはできない。チームに資金を提供する自動車メーカーなどがF1に期待するものといえば、レースによるブランドイメージの向上とともに、限界状況でのテストから得られる技術力の向上だろう。とすれば、せっかくなら自分たちが望む技術的方向を試すようなレ-スにすることを考えるのも悪くない。

今回の変更で求められるのは、エンジンやタイヤの耐久性で、得られるのはコスト削減だが、これらは、F1というものの環境負荷を下げることにも役立つ。環境問題はこれからいっそう重要な問題になるだろうし、環境負荷の低い自動車というのは消費者のブランドイメージもよいと思う。新技術の開発も必要だ。ならば、今回の動きを「環境」という観点からさらに進めて、より環境に配慮したF1レースといったものは考えられないだろうか。

たとえば、使える燃料量に厳しい制限を設けて、排ガス中の有害物質量に応じたハンディキャップ(有害物質の多い車は後からスタートする)を与えるのはどうか。環境に配慮した小排気量エンジンの車で先行逃げ切りをめざすか、大排気量エンジン車で猛烈な追い上げを演出するか。今までのパワーの勝負とはまたちがった駆け引きがみられるだろう。ハイブリッド車、という手もあるかもしれない。いっそ、水素自動車とか電気自動車でレースをするという手もある。

もちろん、そういうレースを見て面白いか、という問題は残る。いっせいにスタートするところが面白いと思う人もいるだろうし、強力なエンジンのあの音が好きと思う人もいるだろう。そういうものはどうしようもない。ただ、新たな方法のレースが行われれば、新たなファンもできるかもしれない。正直なところ、自動車レースというものは、今より少々遅くても、面白さが減ることもないように思う。子供のころ読んだ本では、F1レーシングカーの最高速度は250kmぐらいだったような記憶がある。仮に時速350kmが300kmになったところで、見た目はそれほど変わらないのではないか。F1ファンでない私がそう思っても、あまり説得力はないのだが。

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