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December 16, 2004

出生率低下:誰の?

「合計特殊出生率」ということばがある。粗っぽくいうと「一人の女性がその年齢別出生率にしたがって子どもを生んだ場合に生涯に生む子ども数」という意味だ。日本では平成15年調査で1.29まで低下してしまい、少子化として問題となっている。

この分野には素人だが、言いがかりをつけてみる。
なぜ「女性が」なのだろうか。

何がいいたいかというと、「女性が」という定義のしかたは、「だから女性の責任だ」という主張につながりやすいのではないか、ということだ。少子化に関して書かれたものを読むと、決まって女性の晩婚化、非婚化だとか社会進出だとかが原因だと書かれている。それは事実なのだろうし、そのことがただちに女性の責任ということにはつながらないことをわかっていても、読んだ側は、「女性」が原因なのか、という印象を与えられがちになると思う。

子を産む女性には相手の男性がいるはずなのだから、少なくとも理論上は、「男性が生涯の間に"生ませる"子どもの数」という定義もできるのではないかと思う。詳しく知らないが、合計特殊出生率の計算はかなりめんどくさいもののようだが、それにしても出生数と人口で簡易的に計算できるらしいのだから、人口を男の人口に代えても計算はできるのではないか(やってもいいのだが、時間がないのでそこまではやらない。)。だめならアンケートのような手法をとることもできよう。いずれにせよ結果は合計特殊出生率とほぼ変わらないだろうと予測するので、乱暴にいえば、合計特殊出生率をそのまま「男性が生涯の間に"生ませる"子どもの数」と読み替えてもおおまかには合っているはずだ。

少し挑発的に、これを「甲斐性インデックス」などと名づけたらどうだろう。そして都道府県ごとに比較しランキング化するのだ。あの県の男は、などとやってみたらいい。平成15年調査による合計特殊出生率をproxyとして使ってみると、甲斐性インデックスで堂々の日本一は沖縄県だ。沖縄の男たちに拍手!続く第2位は福島県、第3位は鳥取県だ。逆に最も甲斐性インデックスの低いのは東京都、次いで京都府、奈良県の順だ。

言葉をいいかえるだけで、受ける印象はかなりちがってくるのではないだろうか。少子化の原因は、当たり前だが女性だけにあるのではない。

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Comments

合計特殊出生率は国際的に使う数値ですし、国連も主要加盟国の将来の合計特殊出生率を推計しています。定義はあわせておかなきゃ困ります。
父親がわからない場合とか、戸籍上の父親と遺伝子上の父親が違う場合もけっこうあると思うので、甲斐性インデックスを作ってもけっこう誤差は大きいと思います。お遊びとしてならともかく、公的に作成する必要性は感じません。

Posted by: NIL | December 16, 2004 11:23 PM

NILさん
コメントありがとうございます。合計特殊出生率がいらないと言っているわけではないんですけどね。マクロ指標ですから誤差もそんなに大きいとは思いません。ともあれ「お遊び」はその通りですね。失礼いたしました。

Posted by: 山口 浩 | December 16, 2004 11:58 PM

私はとある年配の男性が最近の女性は自分勝手で子供を産もうなどと考えない、などと言っているのを聞いたことがあります。また、おやじ系国会議員がしばしばこの手の発言をするのも散見されますので、たとえお遊びであろうとも甲斐性ランキングとか見方を変えた言葉を使えばみんなの認識も変わると思います。

戸籍があろうが何しようが、生物学的に子供の父親は一人だけなのでそういう算出も不可能ではないと思います。

で、この人は3人の女性に5人の子供を産ませたけど、この人はゼロ人の女性にゼロ人産ませたとかって個人差が広がるだけだったりしたら困ったものですが(笑)。

Posted by: Hiroette | December 17, 2004 03:23 AM

Hirotteさん
コメントありがとうございます。テレビだとそういう意見多いですね。世間一般でどうかはよくわかりませんが、身の回りでも似たことをいう人は少なからずいるので、それなりに支持者のある意見なのだと思います。

やはり「甲斐性インデックス」は誤解を招きやすいですかね。関心は少子化にあるわけですが、「甲斐性」と名づけると、「何人の子どもを」だけでなく「何人の女性に」にも関心がいってしまいそうで(後者は関係ないでしょう?)。

狭い個人的見聞の範囲では、日本の社会はかなり「民主的」で、あまり「個人差」はないような印象があります。どうでしょうか。

Posted by: 山口 浩 | December 17, 2004 09:11 AM

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