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December 22, 2004

前田建設ファンタジー営業部

前田建設工業株式会社「前田建設ファンタジー営業部」、幻冬社、2004年。

ウェブでは既に話題になっていたあの前田建設ファンタジー営業部がとうとう本になった。

マジンガーZ」に描かれた、「マジンガーZ地下格納庫一式工事」を前田建設が本気で見積もりした、という経緯が書かれた本だ。結果は、

予算72億円、工期6年5ヶ月(ただし機械獣の襲撃期間を除く)

だそうだ。

こうしたフィクションに関するまじめな分析もののはしりは、記憶に残っている限りでは1991年の「ウルトラマン研究序説」だ。この本では、ウルトラマンにまつわる法律や経済問題を専門家が分析する、というものだった。前田建設のほうは、架空の建物を本当に建築したらどうなる、を考えた。月面基地など「架空」の建物をどうやって建てるかという分析は、かつて(バブル期のころ?)どこかのゼネコン(確か竹中工務店だったような)の広報誌でみたことがあるような気がする。

というわけで、本書のアプローチはもとより新しいものではない。この本で斬新なのは、「ファンタジー営業部」という架空の部を設定し、自分たちが半ば空想の世界に入り込んで書いたことだ。このアプローチが、プロジェクトに虚実ないまぜになった不思議な説得力を与えている。光子力研究所の弓所長からの電話など、なかなか芸が細かい。あまり現実的とはいえず、話によって変わったりもするアニメの設定を現実の建築物として再現するためにどんな設計をすればいいか、あちこちに聞きまわりながら真剣に考えていくさまは読んでいて楽しめる。

あわせてこの本は、会社の仕事がどのように進められるかについて、楽しく学ぶことができる。だから就職先を決めかねている大学生や、会社ってどんなことをしてるんだろうと疑問を持っている子どもたちにおすすめ、といいたいところだが、その割には題材が古い。やはりこれは「大人の遊び」なのだろうか。今どきの子どもに向けたものなら、その世代に合わせたものが必要だと思う。アニメ「ポケットモンスター」に出てきた、こおりのフィールド、みずのフィールド、くさのフィールドなどを持つポケモンリーグの大会会場「セキエイスタジアム」一式、などはどうだろう。

現在、前田建設ウェブサイトのほうでは、このマジンガーZ格納庫に引き続き、「銀河鉄道999」の「メガロポリス中央ステーション銀河超特急999号発着用高架橋(基礎および上下部)工事」のプロジェクトも公開されている。ぜひご一覧を。

※最後にことわっておく。「前田建設ファンタジー営業部」は、「マジンガーZ」そのものについての本ではない。アニメのさまざまな情報を期待するのはまちがいだ。こんないわずもがなのことを書くのは、アマゾンに出ていた「ウルトラマン研究序説」の書評で、「ウルトラマンのことが書いていない」というあまりにもとんちんかんなコメントが載っていたからだ。くれぐれも誤解なきよう。

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