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January 21, 2005

総務省のIT産業研究会

総務省は2月中旬、国内IT産業が抱える課題と政策の必要性を探る研究会「(仮称)情報フロンティア研究会」を発足させる(ニュースはこちら)。6月までに報告書をまとめる見込みとのこと。

研究課題は、主に次のような分野なのだそうだ。

(1)オフショア開発が及ぼす国内IT産業への影響と対処策
(2)SOA(サービス指向アーキテクチャ)を社会全体に広める方策
(3)レガシー・マイグレーションの推進政策
(4)グリッド・コンピューティングやPtoP(ピア・ツー・ピア)の可能性
(5)通信・放送の融合に関する実態把握、など

詳しく知った上で書くのではないのだが、いずれもホット・イシューだということはわかる。なかでもオフショア開発はいまや日本のIT産業の将来を大きくゆるがすかもしれない大問題だ。新聞報道では、2004年12月26日すでに「総務省がオフショア開発契約のガイドラインを策定する研究会を発足」というニュースが流れたが、実際にはそこまではやらないらしい。実情がどんどん動いていてまだガイドラインに落とし込めるほど熟した問題でないということか。それともあまりにホットすぎて手が出せないか。あるいは経済産業省(ひょっとしたら厚生労働省も?)への気兼ねがあるのかもしれない。

実は、むしろ(3)、(4)、(5)あたりが気になる。レガシー・マイグレーションについては、本当に望ましい方向性なのか、現場のシステムエンジニアたちからけっこう異論が出ているらしい。事実、IT Proあたりでは、この問題に関する大論争が展開されている(これとかこれとか)。ベンダー側とユーザー側の間に認識のずれがあって、総務省は前者を支持しているということか。

それから、PtoPとか通信・放送の融合など、技術進歩がもたらした新たなコミュニケーションのかたちについて、総務省はどんな方向性をもっているのかも気になるところだ。通信業界に対する脅威とみるのか、新たな権益の源とみるか。総務省サイドは「総務省は広くIT産業界を管轄しているわけではないが、経済産業省とは異なる視点で、思い切った提言ができるのではないか」とコメントしたそうだが、経済産業省とばらばらに政策を打ち出されても困る。またこの問題は、産業部門だけでなく、国民の権利にも大きな影響がある。先日終了した経済産業省傘下のRIETIのblogではないが、広く国民に意見を求めてもいいのではないか。産業政策よりは、ネット市民たちの関心を呼ぶと思う。

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