エンドロールをみる:「ハウルの動く城」
興行通信社調べによる「全国映画ランキング トップ10」(集計日:12/25(土)~12/26(日) 12/28更新)では、6週連続の第1位となっている。公開44日めで入場者数は1,000万人を超えた。上映館数からいって出足のよさは当たり前だろう。「千と千尋」の入場者数は2,350万人だったそうで、これに届くか、超えるかについてはいろいろ意見もあろうが、少なくとも今のところ、まあ「さすがジブリ」というべきだろう。少なくとも個人的には「たいへん好きだ」と告白しておく。
日本映画らしく、エンドロールはやはりまず声優から始まる。ジブリの場合、ハリウッド映画などによくあるような、映像制作部隊をユニットに分割するやり方はとっていないようだ。3DCGアニメ「APPLESEED」では、モーションキャプチャーなどが別ユニットになっていたようだが、「ハウル」のような作品ではそうした必要はないのだろう。以下はプログラム記載のもので、実際にスクリーンに流れたエンドロールと同じものかどうか、確かめてはいない。
・声の出演 57
うち別扱いで挙げられる主要キャラクターは10名である。そのうち4名は「千と千尋の神隠し」にも出演した。お気に入りの声優ということになるのだろう。主演の倍賞千恵子と木村拓哉についていろいろいう人もいるが、私は悪くないと思う。作品評はこの記事の目的ではないので、これ以上はつっこまない。
声優が全部で57人というのは、アニメ映画としては、けっこう多い人数なのではないかと思う。ちなみに「APPLESEED」では21人だった。
以下がスタッフ。
・原作 1
・脚本 1
・音楽 1
・主題歌 1曲
この3名が制作サイドの最重要人物だ。主題歌は谷川俊太郎の詞に木村弓が曲をつけている。久石譲が編曲して、歌っているのは主演の倍賞千恵子だ。
次にメインの制作部隊が登場する。
・作画監督 3
・原画 33
・動画チェック 2
・動画チェック補 3
・動画 78
・作画協力 10社
この部門合計で119名と10社だ。例によって、作画協力として見慣れた複数のプロダクションが入っている。マッドハウスやプロダクションI.G.といった名門も入っているのは、固有名詞ベースの話なのだろうか。
・美術監督 2
・背景 20
・背景レイアウト協力 1
・ハーモニー処理 1
・色彩設計 1
・色指定補佐 3
・デジタルペイント 9 + 3社21名。
・デジタル作画監督 1
・デジタル作画 10 + 2社3名
・CGエンジニア 1
色彩設計はおなじみ、「アニメーションの色職人」でも取り上げられた保田道世さんだ。「『もののけ姫』はこうして生まれた。」では色見本を持って色決めをしていたが、デジタル時代になって作業はどう変わったのだろう?デジタル作画には最近急成長のGONZOからも参加している。
・映像演出 1
・デジタル撮影 3
・録音演出 1
・整音 1
・効果 1
・フォーリー 4
・効果協力 3
・収録スタジオ 2社3名
・録音 1社4名
・光学録音 1
・デジタル光学録音 1
・ドルビーフィルム・コンサルタント 2
・dtsマスタリング 2
・キャスティング・プロデュース 1社3名
・音響制作 1社1名
この部門で104名。ここからが音楽ユニット。
・指揮・ピアノ 1(最初の「音楽」と同じ)
・演奏 1団体
・トランペット 1
・レコーディング&ミキシングエンジニア 1
・レコーディングエンジニア 1
・音楽収録 2団体
・音楽制作マネージメント 1社2名
音楽部門で5名と3団体(久石譲のダブり分は除く)。
・ポストプロダクション 3
・ポストプロダクションデスク 2
・タイトル 1+1社
・編集 1
・編集助手 3
ポストプロダクションで10名+1社。
・制作担当 1
・制作デスク 2
・制作進行 3
・演出助手 2
・制作業務担当 1
・制作業務 3
・プロデューサー補 1
・広報 5
・音楽著作権 1
・キャラクター商品開発 4
・出版 6
・イベント担当 3
・制作マネージメント 1
・管理担当 1
・管理 7
・システム・マネージメント 2
その他で43名。
・協力 2団体 + 15
・特別協力 2社(ローソン、読売新聞)
ここで15名と4団体。読売新聞は日本テレビからのつながりだろう。ローソンがスポンサーになり始めたのは「千と千尋の神隠し」からだったか。「猫の恩返し」もそうだし、鈴木敏夫プロデューサーがらみで「イノセンス」にもからんだから、ローソン=ジブリの関係ももうすっかり定着した。こういうのも、一種のブランドイメージになるのだろう。
・宣伝プロデューサー 1
・東宝 3
・メイジャー 14
・特別顧問 2
・予告編制作 1社1名
・海外プロモート担当 4
宣伝系で25名。
製作委員会
・徳間書店 6
・日本テレビ放送網 9
・電通 8
・ブエナ ビスタ エンターテインメント 6
・ディーライツ 5
・東宝 4
製作委員会6社の担当者合計で38名。ディーライツは三菱商事子会社で、著作権管理の会社だ。ちなみに、これまでのいわゆるジブリ作品(ジブリ以前を含む)の製作者の顔ぶれをざっと並べてみるとこんな感じだ。
「風の谷のナウシカ」(1984年3月11日公開) 製作/徳間書店・博報堂
「天空の城ラピュタ」(1986年8月2日公開) 製作/徳間書店
「火垂るの墓」(1988年4月16日公開) 製作/新潮社
「となりのトトロ」(1988年4月16日公開) 製作/徳間書店
「魔女の宅急便」(1989年7月29日公開) 製作/徳間書店・ヤマト運輸・日本テレビ放送網
「おもひでぽろぽろ」(1991年7月20日公開) 製作/徳間書店・日本テレビ放送網・博報堂
「紅の豚」(1992年7月18日公開) 製作/徳間書店・日本航空・日本テレビ放送網・スタジオジブリ
「平成狸合戦ぽんぽこ」(1994年7月16日公開) 製作/徳間書店・日本テレビ放送網・博報堂・スタジオジブリ
「耳をすませば」(1995年7月15日公開) 製作/徳間書店・日本テレビ放送網・博報堂・スタジオジブリ
「もののけ姫」(1997年7月12日公開) 製作/徳間書店・日本テレビ放送網・電通・スタジオジブリ
「ホーホケキョ となりの山田くん」(1999年7月17日公開) 製作/徳間書店・スタジオジブリ・日本テレビ放送網・博報堂・ディズニー
「千と千尋の神隠し」(2001年7月20日) 製作/徳間書店・スタジオジブリ・日本テレビ放送網・電通・ディズニー・東北新社・三菱商事
「ギブリーズ episode2」(2002年7月20日公開) 製作/徳間書店・スタジオジブリ・日本テレビ放送網・ディズニー・博報堂・三菱商事・東宝
「猫の恩返し」(2002年7月20日公開) 製作/徳間書店・スタジオジブリ・日本テレビ放送網・ディズニー・博報堂・三菱商事・東宝
・製作担当 2
・現像 1社(IMAGICA)
フィルム・レコーディング 3
カラー・マネジメント・システム 3
・タイミング 1
・デジタル・シネマ・マスタリング 1
・ラボ・コーディネート 1
・ラボ・マネジメント 1
・DOLBY
・dts
ここで12名と2社。
・制作 1社
・プロデューサー 1
・監督 1
最後に2名と1社。
全部で433名と21団体になる。デジタル処理のうちかなりの部分がアウトソースされているのは、アナログの感覚を大事にするジブリならではとみるか、ジブリほどの環境でもデジタル部隊を全て社内に抱え込むのは難しいとみるか。メンバーは会社名、個人名とも、かなり「固定化」されている。昔の日本映画でよくあった○○組、のようなしくみが残っている感じ、なのだろうか。宮崎組というか、ジブリ組というか。ただ、製作委員会に著作権管理会社が入ってきたのは、少なくともジブリ作品では初めてだ。時代の流れといえるだろう。広告代理店は、今回は電通だ。両社で争奪戦を演じたのだろうか。広報戦略のちがいがあるのかどうか、聞いてみたい気がする。
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