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January 14, 2005

コンテンツファイナンス:個人投資家を引き入れるために

コンテンツ産業は今や新たな日本の「基幹」産業の1つとなった。といっても、産業規模の大きさやら外貨獲得額といった意味よりは、むしろ日本の「ブランドイメージ」や日本の世界におけるプレゼンス、といった意味においてだ。産業としてのコンテンツは、「基幹」と呼ぶにはまだまだ弱い。人材育成や国際展開の支援など、コンテンツ産業振興政策がさまざま打ち出されているが、コンテンツ製作者の資金調達手段の多様化もその重要な1つとされている。資金調達に関連してこれまでとられた政策手段には、知的財産権担保融資に関する制度の整備や、信託法の改正などがある。

これらはいずれも、どちらかというとコンテンツ製作者の側からみた制度改訂である。
投資家、特に個人投資家の視点でみたら、何か新しいことがいえるだろうか。以下は走り書き的なメモだ。

一般的に考えれば、少なくともかつては、コンテンツ投資はあまり個人投資家が手を出すべきものではないといった意識が強かったと思う。いってみればコンテンツ製作は新規プロジェクトであり、不確実性や情報の非対称性が高い場合が多いし、そもそもこれまで日本ではコンテンツは「芸術」「職人芸」といった要素が強かったから、外部(とくに素人)からとやかくいわれるのは好みではなかったろう。

しかし日本の消費者は、総体として、コンテンツに関する優れた選択眼をもっており、資金力もあることから、コンテンツ製作資金の提供者となりうる潜在性を持っていると考える。資金調達結果がマーケティング調査に役立つわけだ。海外のコンテンツ産業では、一部の例外を除いて多数の個人投資家が少額ずつ資金を拠出するような資金調達はあまりみられないから、「日本型コンテンツファイナンス」の1つのかたちを示すものになるかもしれない。

実際、最近は、個人を対象としたコンテンツ製作資金調達も行なわれ始めている。投資信託を用いた「ときめきメモリアルファンド」など一部の例外を除いては、匿名組合方式によるものが多い。つい最近も、「バジリスク」のアニメ化にあたっての資金調達がこの方式で行なわれた。

匿名組合方式は、契約の自由度も高く、手軽に利用できる制度であるが、問題点も指摘されている。プロジェクトの推進者たる営業者の倒産リスクからの隔離ができていないほか、ディスクロージャー制度も不充分だ。コンテンツ分野で具体的な事例は聞かないが、仮によからぬ営業者が入り込んだ場合、情報や資金力に劣る個人投資家は思わぬ損害を被るおそれもある。

最近の信託法の改正で、著作権などの信託が認められるようになった。これで、著作権が成立したものについては、信託のスキームが利用できることになる。このほうが投資家の権利は守られやすい。信託業が銀行以外の事業会社に解禁されたこともあり、新規参入組を含めて、利用しやすいしくみが工夫されていくだろう。

個人投資家がコンテンツ製作に投資するスキームを今後拡充していくとすれば、どんな手当てが必要だろうか。

どんなスキームでも、個人投資家を受け入れていこうという場合、「安全に」もさることながら、「わかりやすく」という配慮は欠かせない。契約内容や開示される情報などが会社によってまったく異なっている(あるいは異なっていてもおかしくない)状況は、必ずしも好ましいとはいえない。具体論は省略するが、権利の範囲、期間、リスク要因に関する表示方法や用語の統一など、投資信託約款がそうであるような、パッケージ化というか、ある程度定型化する方向へと進むべきだと思う。

それから、これは個人投資家「保護」策ではないが、重要なことがある。現在ある個人向けコンテンツ投資スキームは、投資したらそれでおしまいで、「ポートフォリオ」を調整することはできない。というか、制度として想定されていない。しかしファイナンスの基礎を学べば当然の理屈だが、ポートフォリオを固定することはそれ自体が大きなリスク要因になる。コンテンツ投資においても、事後的なポートフォリオの調整が可能になっていることが必要だと思う。この点で、現在あるコンテンツ投資スキームはいずれも不満が残る。信託であれば受益権の売買は可能であろうが、では市場はどこにあるのか?マッチングの場がなければ、「売買できます」と謳ったところで絵に描いたモチだ。韓国では一時期「ネットファンド」による映画製作資金調達がはやった。製作期間中に自由に取引ができるしくみだった。消費者保護策は充分ではなかったらしく、トラブルもあって最近は下火だと聞くが、投資家の利便という点では、学ぶべきところもあると思う。こうしたしくみを、適切な水準の投資家保護策を考えながら、整備していくことが必要ではないだろうか。

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