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January 09, 2005

「ハウルの動く城」、海賊版出現:がんばれ「野中くん」!

現在公開中の映画「ハウルの動く城」の海賊版DVDが大阪あたりの繁華街の露店で売られている。昨年暮れごろからのようだ。観客が行き来する姿が映ったり、音声に場内の反響音がかぶっていたりするところから、映画館内でビデオカメラを使ってスクリーンを盗み撮りしたものらしい。スタジオジブリは、著作権法違反に当たるとして法的手段の検討を始めた、のだそうだ。

映画館のスクリーンをそのまま撮影して海賊版を作るのは、中国でよくあるやり方だ。あちらの場合はDVDではなくまだVCDが多いと聞いたが(今は変わったのかもしれない)。だから中国では、劇場公開と同時に正規版DVDを発売するのだという。こういう海賊版は、画質・音質などはさぞ悪かろうに、日本でもこういう品質のものが売られるとは。

別に中国人の仕業だというつもりはない(善良な中国人の皆さん、誤解なきよう)のだが、少なくとも、マーケットの近さと海賊版流通の現状からみて、これが日本で売られているとすれば、中国では同じものがはるかに大規模に出回っているものとみてよいのではないか。もし万が一中国人がやったとすれば、最近中国でも海賊版取締りがだんだん厳しくなってきているらしいから、日本に新マーケットを求めたのかもしれない。

中国に限らず海賊版が広く出回っている諸国とちがって、現代の日本ではこうした海賊版が幅広く流通したりはしないだろう(そんなものを欲しがる人が多いとは思えない)が、作り手に敬意を払わないこうしたやり方は許せない。ジブリの著作権管理部門というと、あの「ギブリーズ」にも出演した「野中くん」のご担当だろうか。がんばれ、野中くん!

今回は日本国内で見つかったわけだが、今や著作権管理は国際的な対応が必要な時代となっている。法律や制度、国際的協力などももちろん今後いっそう強化していかねばならないのだろうが、ビジネスのよりよいやり方がないかについても考えていくべきだろう。ジブリ映画も、今後はハリウッドばりに世界同時公開、なんてことをやるべきなのだろうか。

※2005年1月11日追記
海賊板DVDを販売したとして、日本人の男が逮捕されたらしい(「突撃!おかず&オカズ」さんよりの情報。多謝)。これが上記の記事の海賊版製作者と同じなのかどうかわからないが、少なくとも日本人だったことを強調しておく。上記で、中国で出回っているかどうかについては、「そんなこともあるだろう」という私の完全な想像である。誤解なきよう、念のため。ただし、「ハウル」と関係なく一般論として、中国における海賊版の状況は当局の努力にもかかわらず依然として憂慮すべきものではある。

※2005年2月11日追記
今日のテレビ番組で、「ハウル」その他の海賊版DVDについて特集していた。映画館内で撮影したものを誰かがインターネットに流し(P2Pなのだろうか)、それを利用してDVDが作られたらしい。組織的な犯罪ではないかとの指摘もあった。映画館からの横流しでなかったのはとりあえずひと安心。しかし問題は解決していない。番組は大阪で取材していたが、東京にもあるのだろうか。蔓延といった状況ではないが、こんなことが野放しになっているようでは、日本の有力産業として注目が集まっているアニメ産業の発展を阻害するし、中国の海賊版問題に対しても強くいえないではないか。その筋の皆さん、こういう輩を「国賊」とか「日本の恥」とか呼ぶのではありませんかね。

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Tracked on January 11, 2005 12:53 PM

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