ゲーム制作拠点としてのフランス
ゲーム制作の拠点となる地域というと、まず日本と北米、それに韓国やら台湾やらの東アジア地域、などが思い出される。少なくとも素人的にはそういう印象だ。しかし、知ってる人は知ってる話だろうが、フランスという国も、ゲーム制作拠点として忘れてはいけない。
という、知ってる人には当たり前の、でも自分には目新しかったことのメモ。
私を含む、フランスにあまり詳しくない人にとって、フランスという国の印象は「食と芸術の国」といったところだろう。これ自体が不適切ということはないだろうと思う。とはいえフランスの人たちからみると、ここばかりに注目されるのはかなり不本意らしい。日本を「すしと相撲の国」といわれたら、私たちだって「ちょっと待て」といいたくなるだろうから、まあ理解できなくもない。
で、フランスは今、日本からの投資を受け入れようとけっこう真剣になっている。特に力を入れているのがゲームや映画などのクリエイティブ産業だ。共同制作なども視野に入れているらしい。この分野は、いってみればビジネスとアートの融合する世界だ。もともとフランスの人々は日本のアートを高く評価してきたし、最近の日本発コンテンツへの関心も強い。一方フランスのほうにも、ビジネスとアートを高いレベルで融合するクリエイティブ産業の基盤がある。日仏力を合わせて、アメリカなどに対抗していこう。そんなところかもしれない。
フランスには数多くのゲーム会社があるが、中でも「Civilization」、「Unreal」、「Enter the Matrix」などで有名なAtari社、「Myst」、「Splinter Cell」などのUbi Soft社、「Warcraft」や「Diablo」などのVivendi社などが本拠を構えている。2004年9月時点の対仏投資庁(IFA)のパンフレットをみると、ビデオゲームの国内市場は10億ユーロに達し、年率15%以上の成長率となっている由。オンラインゲームに関していうと、フランスはドイツとならんでそれぞれ150万人のユーザー人口をもつヨーロッパの2大市場の1つだそうだ。
で、ゲーム企業への公的支援はというと、こんな感じらしい。
公的資金(FAEM)
・産業省+国立映画撮影技術センター(CNC)
・ビデオゲーム制作の前段階への資金援助(コンセプトから試作品までの費用の最大40%)
・年間予算3~4百万ユーロ
・1プロジェクトあたり平均15万ユーロ
公的資金(RIAM)
・産業省+国立映画撮影技術センター(CNC)+研究省
・放送とマルチメディア全般の革新的技術と業界・研究機関の協力・提携支援
・年間予算3,000万ユーロ
・ビデオゲームプロジェクト:3年間で250万ユーロ
フランスのゲーム企業のリストをみていると、(カワイイ・スタジオ)Kawaii StudioとかKando Games(カンドー・ゲームス)とか、日本語起源のように見える社名がちらほらあって、なかなか面白い。
手元にもうひとつ、最近もらったものだが、南仏の都市マルセイユにあるハイテクメディア企業向けのインフラとして整備されたBelle de Mai(「ベル・ドゥ・メ」と発音する。「五月の花」という意味らしい)という施設の資料があるのでちょっとメモ。たばこ工場の跡なのだそうだが、国立文化遺産保護修復センター(CICRP)、国立オーディオビジュアル・アーカイブ(INA)などの施設も入っている。またこの一帯はEuroMediterraneeと呼ばれる産業集積地域が広がっており、近隣にはSUPINFOCOM、Universite de Provenceのような映画や3D画像、動画の教育機関など、クリエイティブ産業に関連したインフラが集まっている。
同じ資料に、マルセイユあたりのCGアニメーターの平均給与額が出ていた。
初任給 1,600~2,000 US$/月
経験5年 2,500~3,000 US$/月
シニア 4,500 US$/月まで
で、公的支援もいろいろある由なので、これもメモ。ただ、上に書いたメモの公的支援とどうからんでくるのかはよくわらかない。
(1)欧州資金
・EUのEURIMAGESプロジェクトとMEDIAPLUSプログラムがニューメディアプロジェクトを支援
(2)国の資金
・イノベーション・プランの枠組みで、R&D減税システムが経済・財政・産業省により発表された。
・ビデオゲーム製作は、最近支援対象になった:研究(RIAM)、開発(CNC)、製造(CNC)
・CNCがニューメディア製作を支援
(3)地域資金
・マルセイユ・Euromediterranee地域での雇用創出にはフランス政府、地域圏、県からの助成金がある。
・プロバンス・アルプ・コートダジュール地方圏議会と地方圏産業局(DRIRE)による、投資への助成金がある。
・Euromediterraneeと公共職業安定所(ANPE)の協定により採用、研修、教育への支援がある。
最後にもう1つメモ。
セミナーでお会いしたPhilippe Berthetさんから、ご自身のサイト「emex(europe multimedia express)」のご紹介をいただいた。フランスを中心としたヨーロッパの情報を発信している。
The comments to this entry are closed.
Comments
私はフランスの日本オタクぶりは日々感じていますが、やまぐちさんのアプローチによる解説が入るとさすがだなーって思います。
フランス人には日本のサブカルチャー信奉者もたくさんいますからね。
でも、やはりクオリティ的には日本のアニメ制作会社が最高って思っているフランス人も多いけど、結構もりあがっているフランスアニメ業界からは目が離せません。
Posted by: Hiroette | January 19, 2005 05:57 AM
Hiroetteさん
やはりフランスネタは見逃しませんね。コメントありがとうございます。
フランス人にとっての日本マンガは、日本アート好きの系譜とどうつながっているのかいないのか、興味あるところです。
先日あるところでフランスのクリエーターが「ジブリ風」と称して作ったCGアニメを見ましたが、どこがジブリなのかまったくわかりませんでした。ちがうところを見てるんだろうなぁ。面白いものです。
Posted by: 山口 浩 | January 20, 2005 10:52 AM