雑誌目次をみる:「女教師ツーウェイ」
「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は隔月刊「女教師ツーウェイ」。
一部には特殊な期待をする方もいるかもしれないが、いたってまじめな雑誌なので最初にことわっておく。
まず気になるのが「女教師」という表現だ。特殊な期待をする人もいそうだし、だいいちふつうは「女性教員」ではないのか。そもそも「女」にこだわる必要があるのか?キャッチフレーズは、「①教師の仕事には男も女もない、と思っている方。②女教師なんていういい方は差別的だ、オンナなんていう言葉でなく、女性というべき…と思っている方。③オババなんていうのはケシカランと思っている方。そういう方に読んでほしい雑誌。実践もピカイチ。」だそうだ。どうも「女教師」という表現に強烈なこだわりがあるらしい。ちなみにだが、「男教師ツーウェイ」という雑誌はないようだ。「ツーウェイ」の意味は不明。出版社は明治図書。教育関係専門の出版社だ。記憶が正しければ、教科書も作っていたかもしれない。
2005年12‐1月号(Vol. 26)の目次は次の通り。
特集 苦手意識ふっとばす“理科・体育”の工夫
・巻頭論文 教材研究、苦手意識をふきとばし、徹底的に追究しよう
・苦手意識を克服するポイント集!―この授業に挑戦
・この目で見た向山サッカー
・体育・体ほぐしの楽しいバージョン
・跳び箱運動―単調にならないためのバージョンアップ
・ポートボール・ドッジボールゲームのアイデア
・確実に上達する段階式なわとび指導
・バスケットボール基本練習のアイデア
・高学年体育の悩み解決
・理科実験の指導のポイント
・理科室の管理・使い方
・理科・苦手意識を持つ教師へのアドバイス
・五年の実験の重点ポイント
・六年の実験の重点ポイント
教師にも得意、不得意があるのだ。あまりにも当たり前のことだが、授業を受ける側からは、なかなか見えにくい。なわとびを教えるのは、確かに難しい。体の感覚で覚えるものだし。やはり何かコツがあるのだろうか。あと、「高学年体育の悩み」とは何だろう。高学年特有の問題、というのがあるのだろうか。いくら考えても想像がつかない。
ミニ特集 卒業単元・学年末単元だからこそ一度はやってみたい授業
・感動的な授業はこうして生まれた
・最後の授業こうして組み立てる3年
・最後の授業こうして組み立てる4年
・最後の授業こうして組み立てる5年
・6年・卒業前に思い出になるこの授業
この時期ならではの特集だ。めざせ金八先生!(あれは中学か)というところだろうか。「最後の授業」のドラマチックな演出。教室内に満ち溢れる感動と感謝。涙ぐむ生徒。花束。拍手。・・・妄想が走りすぎた。ともあれ、うまく学年を締めくくるやり方というものがあるのなら、女教師ならずとも身につけたいテクニックだろう。
ミニ特集 年度末に作成する簡単文集のつくり方
・文集にするまでの手順
・低学年原稿づくりの指導
・表紙のアイデア
・思い出に残るクラスページ
・作文を書かせる上での注意点
・卒業文集の作成手順
「文集を作る」というのは、1つのプロジェクトだ。アイデアだけではなく、参加者のモチベーションをいかに高めるか、どうやって各パーツのクォリティをそろえるか、どうデザインするかなどさまざまなノウハウが必要だし、実際に材料を調達し、組み立てていくというロジ的業務もある。大学の教職課程でも、授業の仕方は習っても、文集の作り方までは教えてくれないだろう。「実践もピカイチ」の名に恥じない特集といえよう。
連載
・すぐ使えるファックスページ―朝学習、隙間時間の漢字学習パズル
1年用 よう日のかん字はどこ?
2年用 漢字パズルを解いて、宝をとりもどそう!
3年用 正しい送りがなを見つけよう
4年用 漢字なぞなぞ計算
5年用 漢字とカタカナは仲良し?
6年用 バラバラな漢字で、熟語づくり
・すぐ使えるイラストページ
冬の虫
学習道具の飾り罫
1年用が「かん字」で、それ以上の学年が「漢字」なのがおかしい。この雑誌は教員向けなのに。「すぐ使える」だから、ページをそのままコピーすれば教材になるということだろう。それにしても雑誌の目次までひらがなにするかふつう?いやいやなにか深い理由があるにちがいない。
しかしここまでは、みたところ「女教師」専用のコンテンツとはあまり思えない。この後が本領発揮、のようだ。
連載講座
・辛口の応援歌―男先生からみた“女先生の教師修業”
元気を分かち伝えられる教師になってほしい
・夢とのギャップを乗り越える20代
・家庭との両立を目指す30代
・学校の重責をスマートにやりこなす40代
・教育改革を乗り切る50代
・読み聞かせ文庫
低学年 名前には意味が込められている
高学年 友情こそ、かけがえのない財産
・女教師のやる気⑥
「旅は道連れ」は、やめられない
・女教師は見た⑥
どんな小さいことにも意味があり奥が深い!
・保健室奮闘記⑯
保健室の先生、特別支援教育に携わる!
年代別になっているのがおもしろい。仮に「男教師ツーウェイ」があったとして、こういう記事の作り方はありえるだろうか。否、だ。年代層別にするにしても、せいぜい若手、中堅、ベテランぐらいだろう。対象年齢まで明示した細かい区分けは女性ならでは、なのかもしれない。
グラビア
・若葉マーク先生のドタバタ日記
・第3回全国女教師ML模擬授業大会
・教室にあると便利なもの・便利な掲示
巻頭言
女教師喫茶室
編集後記
「若葉マーク先生」のグラビアに萌える不届きな輩はさておき。「全国女教師ML模擬授業大会」などという会合があるのだ。「全国女教師連盟」なんていう団体もあったりするのだろうか。こうまでして「女教師」という表現にこだわるのはなぜなのか?
というわけで、なかなか味わい深い目次なのだが、いまひとつインパクトが物足りない気もする。せっかくなのでバックナンバーから面白そうな号の目次をさがしてみた。
2001年2月号は「女教師の見栄」特集。特集部分をご紹介。
特集 女教師にひそむ「見栄」を分析する
・行事で熱くなる見栄――運動会
・行事で熱くなる見栄――学芸会(学習発表会)
・公開発表で見られる、研究授業での見栄
・研究授業でプリントやカードを使う見栄
・研究協議会で見られる見栄
・教室掲示にこだわる見栄
・職員会議での発言に見られる見栄
・生活指導で、自分のクラスを話題にする時の見栄
・保護者会での見栄
・密かな居残りをする見栄
・給食を全部食べさせる見栄
・むやみに厳しいしつけをする見栄
記事にはすべて執筆した教師の氏名が出ているのだが、この特集では匿名の著者がだいぶいる。差しさわりがあるのだろう。ご苦労なことだ。それにしても、さまざまな見栄がある。よくわからないが、でもこれって、男教師にもあるのではないだろうか。と思ったら次の特集があった。
見栄バトル:女教師から見る男性教師の見栄
・許せる見栄と、絶対許せない見栄
・外部へ向けて自分をよく見せようとする見栄
・男性教師よ、無理なくかっこよく、見栄を張ろう
・「オレ」が 一番になりたい男の見栄、「ワタシ」が最後になりたくない女の見栄
・見栄を通して見えてくるもの
・男性教師から見る女教師の見栄
・見栄を張る反面女教師 見栄を張らないすばらしい女教師
・自分だけが突出しないように…
・見栄を捨てることから生まれるもの
・校内研と学級通信にそれは表れる
・女教師はここに燃える―黒帯見栄女教師への道―
どうも、ここでいう「見栄」とは、教員としての職務上重視するポイント、のようなものを指すらしい。ちょっと待て。「見栄」ってそういう意味じゃなかったよね?
辞書をみると、こう出ている(三省堂国語辞典)。
〔動詞「見える」の連用形から。「見栄」「見得」は当て字〕
(1)見た目。外見。みば。みかけ。体裁。 「―を飾る」
(2)人の目を気にして、うわべ・外見を実際よりよく見せようとする態度。《見栄》 「―でピアノを買う」「―坊」
(3)歌舞伎の演技・演出の一。劇的感情が高まったとき、俳優が、一時その動きを静止してにらむようにポーズをとること。《見得》
特集の意図はここでいう(2)のはずだ。「見栄」は悪いことという価値観が前提になっているわけで、「かっこよく」見栄をはったりすることはできないだろう。そもそも「見栄」という当て字を使っていいのだろうか。
ともあれ、何かと楽しめるこの「女教師ツーウェイ」。なかなかにお買い得だ。しかし全体として、ややおとなしい感じがする。今後はさらに実用的かつ「過激」な情報を期待したい。「生徒を釘付けにする春のコーディネート」とか、「新人に負けない!10歳若く見せるメーク」とか、「プール授業までに痩せる!今から始めるかんたんダイエット」とか、「セクハラ教頭をどう撃退するか」とか、「あこがれの男性教師をゲットするバレンタイン作戦」とか、「今月のイケメン教師」とか、「匿名座談会:女教師は見た!あきれた父母・生徒」とか、いろいろ工夫してみたらいいのでは!?
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