« 年の終わりに | Main | 暴論的税制論:政府に「投資」するという発想 »

January 01, 2005

残念! 経産省blog

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

と型どおりのご挨拶はここまでにして。

年明け早々から申し訳ないが、最近少し不満に思ったことがある。
鳴り物入りで登場した、経済産業研究所(RIETI)の「e-Life Blog」があまり動いていないのだ。

Blogは10月から3ヶ月間限定で開設するとのことだから、この12月で終わったのだろう。サイトの解説によると、「e-Life Blog」は、「経済産業省商務情報政策局と、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)が共同で実施する、ウェブログ技術を用いた産業界及び有識者、一般ユーザとの対話実験」だそうだ。「具体的なテーマとして、現在注目されている情報家電産業を取り上げることとし、商務情報政策局が公表した政策ペーパ「情報家電産業の収益力強化に向けた道筋」をベースに議論を進めていきます。この政策ペーパの執筆者がそれぞれウェブログを開設し、内容についての解説や、寄せられた意見に対しての回答を通じた議論を展開していきます。」というふれこみになっている。

Blogは全部で7つある。

総論」(担当執筆:村上敬亮 森川毅 )
キークエスチョン
・薄型TVはいつまでもTVのままで、各種サービス利用のためのモニタにならないのか?
・」どうして情報家電でサービス事業者が増えず、PCのようにオンライン商取引ができないのか?
・薄型TVやDVDーHDレコーダの通信機能を利用したIP放送は実現できないのか?
・サービス事業者の方はなにが問題で、情報家電向けサービスが提供できないのか?

各論
第一章 情報家電機器の現状と今後の展望」(担当執筆:森川毅)
いま、とても売れているデジタル家電とは何か?素朴な疑問からはじまり、それぞれの商品カテゴリ毎にアナログ時代のとの進化のレベルを検証する。さらに通信のデジタル化と融合することで今後どのような社会変化が起きようとしているのか?少しづつ現れているデジタル社会へのイノベーションの萌芽を見つけなから、後の章につづくためのイントロダクション的役割を担う。

第二章 コンシューマレポート戦略」(担当執筆:佐々木啓介 相沢一宏)
機器のイノベーションに消費者はどのような期待を持っているのか?」非常にシンプルな問いかけながら、製品作りの本質でもある問題について、今日はその消費者というもが急速に多層化していく変革期であるため単なる店頭での売上だけでは見えない消費者ニーズが存在する。そのため、単なるクレーム集ではないコンシューマレポートを実現し、多層化していく消費者の声を整理し、消費者の期待と潜在的な消費者ニーズを抽出し、「メーカーの商品作りにフィードバック」をしていける基盤作りについての方策を提示する。

第三章 情報家電市場における競争ルールを変えるための戦略の提案」(担当執筆:村上敬亮)
情報家電のネットワーク化が進み、通信を生かした用途が広がってくれば、放送、通信、遠隔医療、遠隔教育などサービス事業者のサービスを実現するための一定のハードやソフトの仕様の共通化が必要になる。その際、情報家電全体のアーキテクチャデザインの育成に失敗すれば、サービス事業者はPCにこぞって流れ、情報家電としての競争力を失う可能性もある。本当に大切なことは、メーカー同志の技術競争ではなく、ネットワーク化後の情報家電に「何が出来るのか?」、「それはどういうシステムとサービスをどう組み合わせているからなのか?」を、消費者や各種サービス事業者にしっかりと提案しサービス参入を促進することではないのか。 これらを実現するための方策を提示する。

第四章 情報家電とコンテンツ産業」(担当執筆:片岡宏一郎 和久田肇 松下香苗)
情報家電の魅力となりえるコンテンツについて、「いかに良質のコンテンツをつくりを持続できるのか?」という観点からクリエイターにインセンティブが生まれるコンテンツ流通の仕組みについて、本格的なデジタル情報化社会の登場を見据えながら検討していく

第五章 第一節 産業競争力強化の視点から見た情報家電システムデバイス」(担当執筆:矢島秀浩 山崎剛)
情報家電を支えるシステムデバイスについて、日本はいかにして競争力を維持できるのだろうか?現状と今後の優位性の維持について、情報家電の未来を見据えた観点から、検討を行う。あわせて、ソフトソフトウエア分野において、将来の情報家電のプラットホーム化を支えるキーデバイスとなりえる技術を解説する。

「第二節 産業競争力強化の視点から見た情報家電ソフトウェア」(担当執筆:平井淳生)
Blogなし

第六章 情報家電の競争力を支えるソフトウェア産業」(担当執筆:久米孝)
アナログ家電時代では制御のための脇役であったソフトウエアが、デジタル家電時代に入った際には、データ処理を担う主役に躍り出た今後は「いかに信頼性が高いソフトウエアをいかに早く作って、実装できるか?」が競争力となり得る。しかしながら、現在のデジタル家電では、その不具合が多発しており、この傾向が続けばデジタル家電のDOS/V化(再起動する家電)も避けられないと考える。

それぞれ興味深いテーマだ。一般的な関心も低くはなかろう。しかし実際に各々のblogを見てみると、多少差はあるが、おおまかにいっていずれもほとんどエントリがない。コメントもいくつかついているが、始まったときの取り上げられ方の盛り上がりぶりからは想像もできないほどさびしいのだ。いったいなぜなのだろうか。Blogは政策立案のためのツールとしては使えないのであろうか。

必ずしもそうではないと思う。問題は使い方だ。

開始時のふれこみは、上記のとおり、運営者側が公開した政策ペーパの内容について解説をつけたり、それに対して寄せられた意見に回答するといったことだった。基本的にこれは対話実験であって、これまでなかった国民との直接対話のチャネルを作ったということになる。あとは国民側がどう利用するかだ、…と。

しかし、場を作ればそれでおしまいか、というところが問題なのではないだろうか。Blogを書いている者なら誰でもわかるだろうが、「コメントやトラックバックを寄せて欲しい」といえばすぐ集まるというものではない。「政府機関である私たちは特別」と思ってはいないだろうが、何もしないでも人が集まってくるのは、blog界でもごく少数に過ぎない。しかも、彼らのところに人が集まってくるのは、彼らの発信する情報を皆が読みたいと思うからである。組織は有名でも、実際に書かれている方々は、一般的にいえば、申し訳ないが有名人ではない。何の前提条件もなくその書いたものを「読みたい!」といわせる人々ではないのだ。ならば、読んでもらうための工夫は、やはりあったほうがいいのではないだろうか。

別に特別なことを書くべき、といっているわけではない。ただどうみても、RIETIのblogのほとんどは、blogらしい情報の発信量が少なすぎる。むろんRIETIの政策ペーパは、少なくともその道の人々にとってはきわめて示唆に富んだものであるし、またその道にうとい人にとっても、少々とっつき悪いがていねいな解説になっているものもある。しかしそれは必ずしもタイムリーではない(blogで「タイムリー」といったら、リアルタイムかデイリーとかいう意味だろう)し、blogで読みたい内容ともいいにくい場合が多い。

とりあえず、どんどん更新していくところから始めたらよかったのではないだろうか。ほんの2、3行、ちょっとしたことでもいいと思う。政府内での生の議論はなかなか出しにくいと思うが、それでも外部からは見えないことはたくさんあるはずだ。個人blogではないので、昼何を食べたかといった情報は不向きだとは思うが、読みたいと思う情報を発信することは可能だと思う。「発信してなんぼ」がblogの世界だ。

Blogの執筆者の多くは、経済産業省の官僚の方々のようだ。立場上、なにかと発言に気を遣うこともあるのかもしれない。ひょっとしたら、書く内容も上司の許可が必要だったりするのだろうか。時間も充分にはとれないだろう。少なくとも、自由にものを書く環境ではなさそうだ。理解できなくもないが、だからといってエントリを控えるのであれば、そもそもblogにする意味がない。

コメントやトラックバックを送らなかった私はこんなことを書く立場ではもとよりないのだが、こうした試みは、今後も続けていくべきだと提言したい。テーマは選ぶべきだろうし、執筆者も自由に書ける「立場」の人である必要がある。複数のテーマを複数の執筆者が担当して、画面が「にぎわう」ようにするといいのではないか。担当者同士が別のテーマで議論するのも悪くない。要は、テーマ先にありきよりも、人ベースで進めたほうが自然かもしれない。

行政の分野にblogという手法を持ち込む実験として注目された「e-Life Blog」だが、内部ではどういう評価だったのだろうか。聞いてみたい気がする。

|

« 年の終わりに | Main | 暴論的税制論:政府に「投資」するという発想 »

Comments

あけましておめでとうございます。
今年もやまぐちさんの「難しいけどやさしい(優しい?)ブログ」を読んで、
私の怠惰な脳みそちゃんに刺激を与えようと企んでいます。
今年も宜しくお願い申し上げます。

あ。経産省のブログについて思うこと。
もしかしてアップする前にプリントアウトした(紙の状態の)掲載文を
何人も何人も回ってハンコもらってから送信したのかなぁ。たいへんだなぁ。

Posted by: N@o | January 02, 2005 10:36 PM

N@oさん
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
経産省のblogですが、おそらくそれほど厳しいものではなかったろうとは思います。題材が既に絞られてますし、彼らは当該問題についておそらく経産省内で最も詳しい人でしょうから。
ただやはり、語り口の堅さがなんらかの「縛り」の存在を示唆するような気がしたものですから。けっこうご苦労の多い方々なんだろうと推察いたしますです、はい。

Posted by: 山口 浩 | January 03, 2005 05:55 PM

ああいう人たちの属性としては気苦労は多いでしょうねえ。いろいろマスコミ対策とかなんとか対策とかありそうですからねえ。それでペンが鈍っても残念ですが。どこぞの銀行の社長に就任した方のような煽りテクニックなんて習得したら盛り上がるのでしょうかねえ。(そうなったらそうなったでまた彼等には面倒臭いのでしょうが)

Posted by: Hiroette | January 06, 2005 01:48 AM

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 残念! 経産省blog:

» RIETIのBLOGは2004年末で終わり? [ITライダー@WebryBlog]
RIETIのブログは、開始時の宣言とおり、2004年末までだったようですね。 テーマ「総論」には、折角、論客が現れ、議論が進むのでは?と思った矢先の停滞。 ... [Read More]

Tracked on January 13, 2005 07:42 PM

« 年の終わりに | Main | 暴論的税制論:政府に「投資」するという発想 »