研究者のblog
前にも書いたことがあるが、blogという道具は、少なくとも原理的には、研究という目的に適合しているのではないか、と思っている。自分の考えを迅速に簡単に広く見てもらうことができ、トラックバックやリンク、コメントによってそれぞれの主張が有機的に関連づけられる。つまり、blogの機能は研究者が日常やっている活動に近いものであり、したがってこれを活用することによって、分野によらず、研究活動がやりやすくなる部分があるのではないか、と思ったわけだ。
しかし、そんなことをいう前に、そもそも研究者の中にはblogなんて知らない、という人が少なくない。というわけで、研究者が開設しているblogにどんなものがあるのか、少し調べてみた。
もちろん実際には、研究にblogを活用しようと思っても、いろいろな問題がある。まず問題になるのは、実名・匿名の問題だ。実名での活動は、さまざまなリスクを伴うことが多い。特に企業に在籍する職業研究者などの場合は制約が多いだろう。大学の研究者は個人ページをもっている場合が多いし、そこに研究成果は載せられる。自分の研究成果を公表したいような場合には、当然ながら匿名はあまり向かないだろうが、逆に自分の研究成果との関係が薄い内容を書く場合には、実名にするメリットはあまりない。
だから実際には、研究者のblogは、自分の専門分野に関する一般向けの情報発信という場合と、研究とはやや関係の薄い日常の感想などを書くものとが多い。いずれにせよ、実名のものはそれほど多くはない。私がイメージしているのは、梅田望夫さんの「My Life Between Silicon Valley and Japan」のような感じのものなのだが、こういうのは非常に少ない。
ここでの関心は、blogは研究活動に活かせるかという観点なので、実名を明かしているものを主にとりあげることにした。もちろん、すべてを網羅しようなどといった大それた考えは持っていない。ここに出ていないサイトをご存知の方は、ぜひ教えていただければ。
Googleで「ブログ 研究者」と入れて検索してみると、こうなる。2月20日現在、ヒット数は約138,000。全部が研究者のblogではないだろうが、けっこうな数だ。
Google検索ヒット上位のもの、そこからリンクされたもの、さらにそれと関係なく私が知っているものを順不同で書き出してみる。
◎実名を明かしているもの
・松岡正剛のにっぽんXYZ
・内田 樹の研究室
・池田信夫 blog
・多摩ブログ
・新井ゼミ活動ブログ
・MIYADAI.com Blog
・Prof. Alexandre "SUEME" Smirnoff
・HottoLabo 公開ブログ
・tag's diary
・ForestBIZ
・「歴史文化村」どっとこむ
・江戸時代研究者の休み時間
・戦後史研究・映画紹介のページ
・江戸をよむ東京をあるく
・研究室日誌
・ちはるの多次元尺度構成法(日記)はてな版
・心理学にまつわる活動日記
◎匿名のもの
・素直な研究者ブログ
・とある研究者のナリナリ日記
・技術系サラリーマンの交差点
・研究者の足跡.
・研究者のん's 世界の仰天技術&裏ワザ
・ある大学研究者の悩み
・akinakiの中華三昧(中国ゲーム動向編)
・へっぽこ研究者ぐうたら雑記帳
・長期滞米研究者ネットワーク
・ある植物学者の視点。
・Middle Eastern Studies:中東研究者雑感
・最前線研究者のひとりごと
いろいろな分野の研究者の方々がblogを利用していることはわかった。ただし研究活動そのものに生かそうという感じのものはみられない。Blogで研究者同士がやりとりするケースがほとんどないのが原因なのだろう。やっぱりやりにくいのか、とちょっとがっかり。これから変わってくるのか、そもそも難しいことなのか。海外の例はどうなのかも気になる。もう少しいろいろ調べてみたいと思う。
※追記
上記の内容は、どうやらさっぱりわからないらしい。風呂敷を広げる前に、自分の書く文章をなんとかしろ、というわけだ。反省。
※追記
H. Suzukiさんからの情報により下記を追加。認知科学研究者の方々とか。いずれも実名。多謝。
・Exploring Cognition(以下のblogへのリンクを収録)
・Hiroaki Suzuki's Blog
・0x0a::svslab.jp
・Ohnishi,H. Communications
・わたしのおうち/ウェブリブログ
ちなみに「大西 仁 (OHNISHI, Hitoshi)のアンテナ」もなかなか充実。
※追記
さらに慶応大学SFC国領教授の授業用blogを追加。blog上でディスカッションも質問もできるというすぐれもの。
・ネットワーク情報産業論2004
※追記
文京大学幡鎌さんのblogを追加。
・情報化の現状と未来
※追記
浜松大学経営情報学部 富澤豊助教授のblogを追加。
・マーケティング千日回峰行之記
※追記
早稲田大学政治経済学部栗山助教授のサイトを追加。
・「環境経済学@栗山研究室」を追加。
※2005/9/17追記
宮城大学事業構想学部デザイン情報学科本江正茂 研究室のブログ「Motoe Lab, MYU」を追加。
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Comments
掲示板やSNSでも研究者同士の交流はないようです。
MLもイベントの告知くらいにしか使われていません。
Posted by: | February 21, 2005 10:08 AM
「江戸時代研究の休み時間」高尾です。わたしは、学問サイトは専門的なものが多い、と感じております。もうちょっと開かれていてもよいか、と思います。
そこで、わたしのブログでは、世間との交流と、研究分野での間接的利用とを兼ねています。後者でいえば、調査で知り合った方や史料所蔵者への自己紹介の道具、授業で使える小ネタ集として利用しています。このあいだも、史料所蔵者の方にコメントを頂きました。
ただ、予測もつかない利用方法が、運営している過程で発見できるかもしれません。それを期待しているところです。
Posted by: 高尾 | February 21, 2005 11:52 PM
高尾さん
コメントありがとうございました。
なるほど。「間接的利用」ですね。それは他の方にもあてはまる場合があるように思います。私の場合は「ネタ」および、本格的に考えたいときのための下調べ的なものがけっこうあります。「予測もつかない利用方法」が出てくることを期待したいですね。
Posted by: 山口 浩 | February 22, 2005 10:39 AM
もと科学者の端くれとしては、おっしゃるようなブログの可能性を夢見ますね(^^
続けてらっしゃれば、”この世界の第一人者”ということになるかもしれませんよ。
Posted by: ひろ | February 22, 2005 07:29 PM
やまぐちさん、こんにちわ、
やっぱり著作権とかの問題は大きいのでしょうね。なんというか権威のある雑誌にのってはじめて研究として認められるという感じがあるのでしょうか。
http://lablog.exblog.jp/2082335
逆にいえば、法律的なことも含めてこの辺をなんとかできれば研究とブログのマッチングができるということだと理解しました。
ちなみに、次回の「べき乗 talking night」に著作権にかなり詳しい方がきます。
Posted by: ひでき | February 23, 2005 02:03 PM
はじめまして。Blogの可能性に惹かれて、研究の途中報告をしたり、大学の授業で使ったりしています。ちなみに、認知科学関係ですけど、こんなBlog(http://cogsci.nime.ac.jp/)をたちあげ交流を図ろうとしています。現在、たった3人です。ちなみに全員実名です。
Posted by: H. Suzuki | February 28, 2005 11:44 PM
ひできさん
おそらく、分野によって流儀がかなりちがうのだと思います。知られたら先を越されてしまうという分野と、先に知らせとくとかち合わないですむという分野と。ひとくくりにしてはいけない、ということなんでしょうね。
Posted by: 山口 浩 | March 01, 2005 01:40 AM
very nice site. please keep updating it. in this world nothing is certain but death and taxes: http://www.bartleby.com/100/ , linux pioneer wins , i want to achieve it by not dying!
Posted by: samuel moore | October 19, 2005 11:57 AM
Samuel, thank you for the comment.
Posted by: 山口 浩 | October 20, 2005 02:37 AM
ブログじゃないものも含まれていますが,研究日記アンテナには多数の研究系日記が登録されています。ご参考までに。
http://a.hatena.ne.jp/pockapoka/
Posted by: みちた | October 31, 2005 06:18 PM
みちたさん、情報ありがとうございます。
Posted by: 山口 浩 | October 31, 2005 07:05 PM