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February 24, 2005

オンラインコミュニティ内の少額決済システムとしての「仮想通貨」

「ASCII」の2005年3月号に韓国の「サイワールド」の話が出ていたので、記憶のためにメモしておく。ついでにかねてからつらつら考えていたことなども。

以下はあまりユーザーフレンドリーな文章ではない。わかりにくいと思う人がいるかもしれないが、それはやや意図してやっている部分があるのでご容赦されたい。

「サイワールド」はSKテレコムSKコミュニケーションズが運営する韓国のコミュニケーションサイトだ。会員数は1,200万人を超え、人口4,700万人の約25%を占める計算になる。このサイトで人気のコンテンツが「ミニホムピ」と呼ばれる自分専用のホームページだ。日記、掲示板、フォトアルバム、アバターや仲間うちのサークル、個人がニュース配信できる「ペーパー」などのサービスが提供されている。自分の写真を掲載している人が多いこと、「一寸(イルチョン)」という友達システムがあって日記などの公開範囲を設定できることなどから、日本でいえばblogとSNSの中間ぐらいにあたるだろうか。

サイワールドのビジネスモデルは一種のアイテム課金だ。基本サービスは無料だが、自分のページのスキンを変えたり、BGMを設定したりするためには、サイト内仮想通貨「ドトリ」(どんぐりという意味らしい)を使う。1ドトリは100ウォン(約10円)で、クレジットカードや携帯電話料金などを使って先に購入する。この仮想通貨ドトリは、他のユーザーにプレゼントしたりなど、ユーザー間の価値のやりとりに使うことができる。オンラインゲームでも最近はアイテム課金のものが少なからずあるが、それと同じようなしくみといえる。ちなみにサイワールドの収益のほとんどはこのドトリの販売益で、1日1,500万円に上るとのこと。単純計算すれば年間で約55億円(550億ウォンか)だ。

ここまでが記事の内容。さて。

このような仮想通貨は、通用する範囲が限られていれば「仮想」だが、それが広がってくると、次第に「現実通貨」の機能を一部代替するものとなりうる。もちろん規制されているものもあろうが、基本的にこの種のものは、通用範囲が広ければ広いほど使い勝手がいい。放っておけば、利用可能範囲が広がる方向へシフトしていくのは自然のなりゆきといえる。「通貨」というと差し障りがあるのであれば「ポイント」と呼んでもいい。このポイントを使って商品を買えるようになったとしたらどうだろうか?その限りにおいて、ポイントは通貨の機能を代替していることになる。そういう例は、けっこうあるはずだ。

さらに、もしネット内での活動によってこの仮想通貨を稼げるとしたらどうなるだろうか。MMORPGで既に幅広くみられる「digital sweatshop」はさておき、マーケティング活動の一環としてポイント制を導入し、ユーザーがネット広告や企業サイトなどの閲覧、アンケートへの回答などの活動によって稼いだポイントを商品に替えられるサービスを行っている企業は少なくない。こうなってくると、この仮想通貨なりポイントなりの価値は、サイワールドの「ドトリ」のように現実通貨の価値にぺグしている(アイテム課金だと必然的にそうなる)のではなく、独自の価値を持つようになってくる。大きくいえば、「新たな経済」の誕生ないし発見だ。複数の世界を生きるのが当たり前になったとしたら、現代人とその社会は、かつてと同じままでいるのだろうか。それとも変わっていくのだろうか。

というわけで、オンラインコミュニティの中の「仮想通貨」に注目している。それは当該コミュニティの中の価値のやりとりの手段であるというだけでなく、ユーザー間の少額決済システムとしても機能する可能性があり、さらに大風呂敷を広げれば、現実世界とは別の「経済圏」を構成するものともなりうる。似たシステムは他にたくさんある。だから変化はすでに起き始めており、これから加速していく方向なのではないかと思う。その先には、何があるのだろうか。

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Comments

地域通貨のインターネット版のようなものでしょうか?地域通貨は世界中で数多くの事例があり,ここで提起されたことと同様の期待や課題や試行錯誤もありますので,ご参考にされてはいかがでしょうか?それとも先刻ご承知?

Posted by: 俊(とし) | February 24, 2005 12:15 PM

俊さん
コメントありがとうございます。ご指摘のとおり、いってみればオンライン版の地域通貨です。この種の仮想通貨について、私は潜在的にGlobal LETS(「国際地域通貨」とでも呼びましょうか)となる可能性があるとみております。地域通貨についてはまだ勉強中ですので、ぜひいろいろご教示ください。ちなみに、このサイトのサイドバー「YOU ARE WHAT YOU WROTE」にある「An Analysis of Virtual Currencies in Online Games」はその趣旨でオンラインゲームの仮想通貨を分析したものです。もしお暇があるようでしたらご覧ください。

Posted by: 山口 浩 | February 24, 2005 01:44 PM

私が地域通貨に興味を持つようになったきっかけは,地域のNGOの活動の中で参加者の無償の活動によって生じた価値を可視化し,しかもその価値が循環できるようにするにはどうすればよいか?という課題を考えていたときです.普通の通貨でも良いかも知れないのですが,地域通貨にすれば価値の循環をそのNGOとその周辺に閉じ込めることが出来るので拡大再生産の効率が高まるのではないか?しかしこういう閉鎖系では結局発展はしないのではないか?などと考えていました.

ちなみに「地域通貨」でGoogle検索してみると http://www3.plala.or.jp/mig/whats-jp.html というようなサイトが見つかりました.非常によく簡潔にまとめられていると思います.御参考まで.

Posted by: 俊(とし) | February 24, 2005 09:22 PM

俊さん
参考になりました。ありがとうございます。地域通貨は各地で導入されていますが、いかにしてその信用を守るか、およびいかにして退蔵させないかなど、いかにして使われ続けるようにするかどうかがポイントではないでしょうか。地域に「封じ込める」ことは、必ずしも地域の人々にとって好ましいものではない場合もありますから、一般の経済活動とどういうふうに折り合いをつけていくのか、興味があります。

Posted by: 山口 浩 | February 24, 2005 10:32 PM

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一つは「価値交換機能」二つ目は「価値尺度機能」そして三つ目の機能は「価値保蔵機能」です。通貨は価値あるものとして、将来のためにためておくことができる、という機能のことをいいます。先ほどのゲームソフトにしてもDVDにしてもあらゆるモノは時間がたつと消耗して価値は下がります。ましては食品などは1年もためておけば腐って価値がゼロになるものも多いでしょう。散髪のようなサービスであれば、サービスが提供されるその瞬間にしか価値がありません。しかし、通貨であればいつまで保管しても大丈夫。モノが欲しくなったら、その... [Read More]

Tracked on February 12, 2010 11:20 PM

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