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February 12, 2005

マシニマと映画制作におけるゲーム技術の可能性

マシニマ、ということばがある。「machine」と「cinema」を組み合わせた造語だ。ビデオゲームで使われる3Dグラフィックエンジンを使って制作された映画、というのが一番簡単な定義になろうか。最近こうした動きがだんだん出てきていて、今後もっと伸びていくかもしれない、と考える人々もいる。

別に新しい話題ではない(Wired News参照)のだが、とりあえず今後の動向に要注目、という意味で、メモとして書いておく。

クリエーター側からみたマシニマのいいところは、つきつめれば映画制作コストの削減だろう。1人でしこしこ作業すれば映画が出来てしまうわけで、しかも基本的にリアルタイムだから昔からよくあったコマ撮りのアニメーションに比べればはるかに速くできる。最近のゲーム向けグラフィックスのレベルの高さを反映して表現の幅もきわめて広い。

ゲーム会社も、面白い可能性としてとらえているようだ。上でリンクしたWired Newsの記事をみると、多くのゲーム関係企業もサポートしている。ゲームの心臓部であるゲームエンジンを、ゲームを動かすだけでなく、その他の目的にも使えるというわけだ。それだけでも面白いのに、今後技術が進歩すれば、実際の劇場用映画制作のツールにもなるかもしれない、となると、関心を持たないわけにはいかないだろう。

映画制作におけるコンピュータの活用は、もはや「CGIを使った特殊効果」の域を脱し、「演技」の領域に入ってきている。「ロード・オブ・ザ・リング」の群衆が個々にAIで動くソフト「Massive」で描かれているのは有名な話だ(Massive社のサイトはこちら)。主要キャストを動かすにはさすがに人の手が必要で、「Final Fantasy」は一般的なCGIを使っているし、「APPLESEED」では、ゲームで以前からおなじみになっているモーションキャプチャー技術を使っている。マシニマのアプローチは、人がリアルタイムにキャラクターを動かすという点でモーションキャプチャーと似ているが、キャラクターの実際の動き方はコンピュータが作り出しているわけで、その点はMassiveがやっていることと似ていなくもない。

こうした技術は、今はまだ未熟だから、すぐさま既存の映画俳優やスタッフを無用にするということはない。しかし10年後、20年後はどうか。その時点でも現在のような映画の作り方は残っているだろうとは思うが、主流を占めているかどうかはわからないのではないか。技術は表現を変え、産業を変える。かつて演劇というジャンルの娯楽があり、それは今でもあるが、それに加えて映画というジャンルの娯楽ができ、おそらくはそちらのほうが繁栄している。これが前世紀に起きたことだ。さて今世紀には何が起きるか。

ちなみに、Academy of Machinima Arts & Sciencesのサイトをみると、2005年のマシニマ・フィルム・フェスティバルの詳細をまもなく公開、となっている。非営利団体の常だが、どうもスタッフも資金も余裕のあるようすではないらしい。寄付を募集しているようなので、その気のある方はどうぞ。

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Comments

そちらにきましたか。わたしもマシニマにはしばらくのあいだ注目していました。もともとFPSプレイヤーだったのでそこが出発点だったのですが。ただ、当時はクオリティも悪く、たいした作品が作れるわけではなかったのですが、これからは非常に面白くなるのでは、と思っています。

Posted by: akinaki | February 12, 2005 09:49 AM

akinakiさん
コメントありがとうございます。当面はまだ「映画」と呼ぶのがはばかられるような技術レベルですし、アマチュアの安価な映画制作ツールにとどまるのでしょうが、20年前のCGをオモチャだと考えていたことを思えば、こちらも今後は期待できるかもよ、ということです。何よりポイントは、取り組んでいる人たちがいる、ということですよね。CGIを作るには時間とコストがかかる、という常識が覆される日がくるのかもしれません。

Posted by: 山口 浩 | February 12, 2005 10:53 AM

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