放送大学を聞こう
道を歩いているとき、バスに乗っているときなど、頭がアイドリング状態でなんだかもったいないな、と思うことがある。本を読むとかものを書くとかできればいいのだが、道を歩きながら本を読んだりすれば危険だし(実はたまにやるが本当に危険だ)、バスの中でそうした作業をすれば確実に吐き気を催す(平気な人はどうぞ。私はだめだ。電車や飛行機なら問題ないのだが)。
そういう場合に最適な時間の過ごし方を発見した。
ラジオの放送大学だ。
テレビのほうでももちろんかまわないのだが、やはり画面があるとそちらに見入ってしまうし、受像機を持ち歩くのもたいへんだ(携帯電話でテレビを視聴できるものもあるだろうが、画面が小さくて細かい字などが読み取りにくそうだ)。ここは(少々不謹慎だが)聞き流せるラジオがいい。FMラジオの放送は東京と前橋の2ヶ所だけなのでその他の場所の方々には申し訳ないのだが。
週刊番組表をみてみる。放送時間が決まっていて聞きたい科目を自分で選べないのが難点だが、それを逆手にとれば、今までふれてこなかった自分にとって新しい科目について知ることができる。私の場合、ユング心理学や近世日本の歴史、科学と哲学など、実に面白い講義にたくさん触れることができた。「鎖国」ということばが使われるようになったのが明治以降だという話を知っていた方はどのくらいいるだろう。江戸時代に日本にやってきたゾウはベトナムから送られたことは?これらはほんの一例だ。聞いていて思わず立ち止まってメモをとりたくなることが本当にたくさんある。ながら視聴なので、聞いたことのほとんどはさらさらと記憶の彼方に消え去ってしまうのだが、ひょっとしたら無意識の奥底に残っていて、知らず知らずのうちに賢くなったりは…しないかもしれないが…そんな気にさせるところがいい。
気に入った科目があれば、テキストを買ってみてもいい。もちろん、さらに気に入ったら、科目履修生になったり入学したりする手もあるだろう。私の場合は、当面聞き流すぐらいがちょうどいい。こういう自由さがなによりすばらしいと思う。テキストがなくても、単位をとるつもりでなければけっこう楽しめるのだ。当然ながら、中にはうまい講師とそうでない講師がいる。うまい講師は、まるで物語の朗読のように聞く者をわくわくさせてくれる。へたな講師は、…睡眠薬の代わりになる。このあたりは普通の大学と変わらないが、平均的にみて、少なくとも私は楽しんでいる。
とはいえ、注文もなくはない。この学校は1985年に放送を開始したわけで、これまでにかなり多くの講義が放映されたはずだ。いつも思うのだが、放送内容をインターネットなどで公開してもらえないだろうか。忙しい学生にもありがたい話だろうが、ここでいいたいのは、学生向けというよりは、一般向けの公開だ。どうせレポートに採点してもらったり学位をもらったりするのは学生に限られているわけだから、無料で公開しても、学生に対し不公平ということにはならないだろう。もしだめでも、過去のアーカイブならあまり問題はないのではないか。
そもそも媒体としてインターネット放送を検討してもいいかもしれない。それなら地域を問わず(それこそ全世界で)視聴・聴取できる。しかも時間も自由に選べるし、見たい・聞きたい講義を何度でも繰り返すことができる。地上波での放送に加えて行うとしても、コストは安くすむはずだ。さらに可能なら、これをクリエイティブコモンズのライセンスで公開していただければ。これこそクリエイティブコモンズのライセンスにふさわしいコンテンツだと思う。
The comments to this entry are closed.
Comments
はじめまして。bunと申します。
放送大学の科目聴講生をしています。
現在ご提案のインターネット放送を
準備中です。富士通がインフラの整備をし
モニターテストを終了したところです。
私はそのモニターに応募し
「簿記」(レベルとしては
日商3級レベルでしょうか)の
ラジオ授業を受けましたが
なかなか快適で楽しめました。
近々実現されるのではないでしょうか。
ただし私も動きとしては確かにとても遅い、と
思います。もっともっと早く
実現していただきたかったです。
Posted by: bun | February 27, 2005 07:41 PM
bunさん
コメントありがとうございます。そうですか、やはりインターネット放送の準備をしていたのですか。それはよかった。でもそれって、学生でないとアクセスできなかったりしないでしょうか。ぜひ公開してほしいなぁ。それとアーカイブ公開も。テキストだって、過去のものなんかはpdfで公開しちゃえば、と思ったりします。
Posted by: 山口 浩 | February 27, 2005 09:50 PM
はい。まだモニター実験段階です。
コンテンツについては今ですら
相当に不要な制限が多いと感じています。
この方針は踏襲されるような気がしますので
山口さんのご要望は実現しない可能性が
高いと存じます。
費用負担の公平をいうんでしょう。大学側は。
それに私は経済・経営の科目ばかり
聴講してましたので、
山口さんがおっしゃることは
よくわかるのですが、放送大学に来る人は
見たところ准看護士・介護士・理学療法士等の
勉強をしている人の割合が
多いように感じました。ですので
他の資格取得方法との費用の公平や
コンテンツの利用しやすさの公平も
考慮されているんだろうなと思いました。
Posted by: bun | February 28, 2005 01:31 AM
たびたび恐縮です。
モニタ画面のサンプルです。
現在は誰もログインできない状態ですが
ご参考まで。
http://u-air.knowledge-drive.com/kougi/default.asp
Posted by: bun | February 28, 2005 12:30 PM
bunさん
お知らせありがとうございました。見られなくて残念。資格関連のことは気づきませんでした。でも、そうでない科目もありますよね。できるところから、やっていってほしいなぁ。なんといっても、外部の人は、学生が受けられる「指導」が受けられないわけで、それって充分「差」をつけてることになると思います。資料と放送を公開するくらいで付加価値がなくなるんだったら、「指導」の付加価値はどこにあるんだい?となってしまうのではないかと。
Posted by: 山口 浩 | March 01, 2005 01:21 AM
レスありがとうございます。
おっしゃること、よくわかります。
私も昨年9月に入学するまで
全く山口さんがおっしゃるとおりに
思っていました。
私は11科目22単位に挑戦し
今ちょうど発表待ちですが、
実は教官の「指導」があった科目は
一つもないのです!
教官の直接の指導がある科目を
「面接科目」といいますが、
これはごくごく限られており、
社会・経済関連では「面接科目」は
ほとんどありません。
ですので、公開すると
付加価値はほぼ皆無になってしまうのです。
#なんじゃそりゃ、というお怒りが
#目に浮かぶようです・・・(笑
ただし1科目あたり5,000円と
国立大学の3分の1程度で格安ですので
それはとてもありがたいです。
Posted by: bun | March 01, 2005 02:52 PM