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March 13, 2005

覚えておこう:「2008年IMF占領」

「覚えておこう」シリーズ。今回は森木亮著「2008年IMF占領」光文社、2005年。

あと3年だ。覚えておくのもちょっとたいへんだが、とりあえずこの記事は残しておくつもりなので、皆さんもよろしく。

IMFはいうまでもなくInternational Monetary Fund、国際通貨基金を指す。本部はワシントンDCにある。以前ここが出している雑誌「Finance & Development」を取り上げたが、そこではまあ途上国が借金する銀行、のようなものと紹介した。日本は米国に次いで世界第2位の出資国だ。

そのIMFが「日本占領」とはこれいかに。おそらく90年代末の韓国のような状態をイメージしているのだろう。アジア通貨危機の際、韓国はIMFの支援を依頼したが、金融支援を行う代わりにIMFはさまざまな政策を要求した。ラテン・アメリカ金融危機解決に効果を見せた緊縮経済政策と 旧ソ連等の市場移行支援に取った経済構造調整策、いわゆる「コンディショナリティ」だ。これが「劇薬」となって韓国が深刻な不況に陥ったのはご承知のとおり。

さてこの「2008年IMF占領」、新聞の広告をみるとこんなことが書いてある。

財政史から見た「日本破産」
最終警告!
国家破産はもはや避けられない。しかし、破滅ではない!
やがて日本は明治以来3度目の国家破産を経験する。
しかし国家破産イコール日本の破滅、ではない。私たちは過去2回の教訓に学び、苦難を乗り越えねばならない。
財政危機を日本で最初に訴えたエコノミストが探る「最善の道」。

一応励ましていただいてはいるが(ありがたいことだ)、あまりいい状況ではないことに変わりはない。何しろ「国家破産」だ。「IMF占領」だ。――放漫財政がもはや持続不可能な領域に達して円、株、国債のトリプル暴落が起き、IMFのエコノミスト達が乗り込んできて、経済政策を事細かに指示していく。財政規模は思いっきり縮小するだろうから福祉だの公共事業だのは大なたを振るわれ、未曾有の不景気が訪れる――なんていうシナリオなのだろうか。そういえば韓国では当時、国民が金を供出したりしてたよなぁ。まさに非常事態というわけだ。

著者の森木亮氏は、日本で最初に財政危機を訴えたエコノミスト、だそうだ。Amazonで検索したら、他にこんな著書があるらしい。

現代楢山節考」 原書房 1983年
財政再建―いま選択のとき」 原書房 1985年 
日本の財政革命―赤字国債をどう解消するか」 ビジネス社 1987年
金融経済近未来―郵貯を解体し金融庁を設置せよ」金融研究会叢書、1990年
日本経済の不快指数―このままでは国の台所が危ない」 学陽書房 1992年
消費税が20%を超え、1ドルが200円となるこれだけの理由」 第二海援隊 1999年
2005年日本経済の大逆襲―いま、日本の底力を発揮するとき」 日新報道 2002年

なるほど主張の一貫した方だということがわかる。数年ごとにコンスタントに著書を出版されている。同じネタでこれだけ長いこと食えるのは、ある意味日本政府のおかげだともいえる。その意味で政府も首尾一貫しているというわけだ。

1987年の著書「日本の財政革命~」は、こんな本らしい。

大増税か、超インフレか!崩壊寸前の日本の財政を立て直すには、国家予算の20%を占める赤字国債の解消である!
第1章 財政恐慌が始まっている(国家財政、第3の危機 赤字国債に踏み切った「福田財政」"サラ金財政"15年のツケ)
第2章 予断許さぬ新型恐慌(財政恐慌から経済恐慌へ 円高不況全治10年説 景気の波と恐慌)
第3章 税制改革で危機を回避できるか(課税正義の原則にもどれ "この道はいつかきた道")
「40年論争」に学ぶ―赤字国債償還計画をめぐって(戦後財政の良心 「40年論争」)

ハイご注目。「国家予算の20%を占める赤字国債」が大問題だというところだ。森木氏にしてみれば、今の財政状況など見ていられないにちがいない。この表をご参照いただきたいのだが、1987年度の国家予算の国債依存度は21.0%だったのに(上記の「20%」にほぼ対応する)、2004年度では44.6%にまで上昇している。1998年度以降に急上昇したのだ。きっと2008年には…。あれ?1987年に「大増税か、超インフレか!崩壊寸前の日本」「財政恐慌が始まっている」のではなかったの?まだ始まってないよね。20年間ずれちゃったのだろうか。

ついでに、2002年の著書「2005年日本経済の大逆襲~」はこんな感じらしい。

「聖域なき脱デフレ戦略」と、財政規律の回復、独占撤廃、官庁半減型東京特別区をつくる、高額紙幣の発行など、「デフレ・不況を撲滅して日本をまともな国に戻す9つの提言」を示し、国民的結集を呼びかける。
第1章 化粧直しで日本経済の夜は明ける―日本の弱点はチャンスになる
第2章 日本には日本のいき方がある―いま、日本の底力を発揮するとき
第3章 聖域なき脱デフレ戦略―官主導の誤りから脱け出せ!
第4章 国の台所が本当に危ない―まず行動せよ、解決策はこんなにある
第5章 デフレ・不況を撲滅し日本をまともな国に

ふむふむ。前向きではないか。上向きではないか。現在の景気回復を予見していたようではないか。「9つの提言」を実現すれば「日本をまともな国に戻す」ことができる、というご趣旨だろう。ということは、「9つの提言」とやらは実現されたのだろうか。…待てよ、最新刊「2008年IMF占領」では、「最終警告!」「国家破産はもはや避けられない。」と書かれている。「日本経済の夜は明け」なかったのだろうか?1987年の「崩壊寸前」との関係は?

これらをみたうえで考えると、今回の「予言」はどうとらえたらいいのだろう?国家破産はもはや避けられない、しかしもしこれこれの条件があったら話は別、といったものなのだろうか。とすれば考えるべきは、国家破産そのものというより、「これこれの条件」の部分ということだな。なるほど。

というわけで非常に示唆に富んだ著書であるような気がする。私は日本が2008年にIMF支援を仰ぐ事態になるとは思わないが、財政に関する森木氏の問題意識は共有する。読んでいないのでわからないが、読んだ方、ぜひ教えていただきたい。それから過去の著書を読まれた方も、その後の検証も含めて教えていただければ。

とりあえず、覚えておこう。「2008年、日本は国家破産しIMFに占領される」と。日本の財政問題に長年取り組んでこられたエコノミスト森木亮氏の見解だ。

以下はおまけ。Googleで検索してみたら、㈲テイクプロデュースという会社のサイトに講演会講師の紹介ページがあって、そこにこの森木氏も出ている。講演テーマは「1ドルが200円となるこれだけの理由」だそうだ。講演会を依頼したい方はこちらから。それから、「月刊国会ニュース」(そんな雑誌があったのか)という雑誌に「ネットワークビジネスが日本を救う」という記事を書いていて、ネットワークビジネス(アムウェイとかニュースキンとかそういう類のやつ。インターネットとかとは関係ない)を賞賛しているらしい。

※追記
そういえば、以前こんなことを書いたのを思い出した。森木氏の場合、「3年先」がお気に入りのようだ。経済問題の場合は3年先、がセオリーなのだろうか。これも、覚えておこう。

※追記2
1999年の著書「消費税が20%を超え、~」の目次を書き忘れていた。こんな具合だ。

第1章 国が破産するとどうなる?―国の借金は国民が返済し続けなければならない
第2章 個人金融1200兆円の嘘―個人と国には本当はどれだけ資産があるの?
第3章 国債バブルの行方―借金王国になって当然の仕組み
第4章 99年、地方自治体の破産が続出―借金まみれの現状
第5章 郵貯は自主廃業に追い込まれる?―2000年に郵貯から90兆円が逃げていく
第6章 厚生年金も廃止し、民営化へ―厚生省の筋書きはすでにE案に決まっている
第7章 円の没落―一ドル=200円になる日はいつか
第8章 景気を回復させ、日本をまともな国に戻す六つの提案―財政規律を回復させない限り、景気は回復しない

たいへんだ。「99年、地方自治体の破産が続出」だ。「郵貯は自主廃業に追い込まれる?」だ。

※追記3
ひょっとして、「日本人って外圧頼みでしか改革できないから、財政破綻なんて待たずにIMFに占領してもらったらどうだ?」という考えが頭をよぎった方はいなかったろうか?

※追記4
そういえば、韓国の映画産業が活性化したのは、政府の手厚い支援もあるが、「IMF」(の指導にしたがった緊縮政策)で業界に大規模な世代交代がおこったことがきっかけだった。日本の場合、コンテンツ産業よりもっと世代交代してほしい領域がありそうだなぁ。

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Comments

国家財政の問題って、難しいですね。
株と一緒で実力より高く評価されているという状態はなんとなく長く続いてしまうものです。
でも、崩れてみれば、ああやっぱりな、ということ。最近、西武鉄道が2000円から500円になったのはその一例だと思います。
今は日本国債は高値安定していますが、それが妥当な水準(利回りにして4%くらい?)に落ちるのも、また当然だと思います。

Posted by: ひろ | March 13, 2005 10:06 AM

ひろさん、コメントありがとうございます。
国債の場合は、市場での評価というよりは政策の結果ですね。本当は政府や日銀もそろそろやめたいんでしょうけど、抜け出せずにいるわけで。
それを脱するとすれば、国債の信用が低下してというよりは、量的緩和政策の解除がきっかけになるのではないでしょうか。
少なくとも当面、日本国債に具体的な信用不安が発生する状況は、少なくとも私には予測できません。ただ、「難しい」のはその通りですね。

Posted by: 山口 浩 | March 13, 2005 10:54 AM

「量的緩和」という策で債券高にしたのは、いいもの、出口戦略がわからなくなった、というところでしょうか。
人口減少という現実に直面すると、ひょっとしたらこのままの低金利という可能性もあるわけですね。
生産性が高くて、円も高いままとか。。どうなるんだろうなぁ。

Posted by: ひろ | March 13, 2005 04:51 PM

いや、これからも低金利だといっているわけではなく、金利の上昇は、日本経済への信認の低下というよりは、量的緩和政策の緩和(なんか変な表現ですけど)というかたちであらわれるのではないか、という意味です。もちろん今でも国債の消化に苦労するようになってきてはいますが、それを即信認の低下とまでいうのは言いすぎかと。信認の低下というと国債暴落みたいな状態をイメージしてしまいますが、それなら「妥当な水準の利回り」でとどまるはずもありませんから。少なくとも2008年にIMF支援を日本が要請するような状況は、私にはイメージしにくいですねぇ。

Posted by: 山口 浩 | March 13, 2005 05:32 PM

詳しいことは分かりませんが、過日北川正恭さんの講演会に行った時、北川さんも同じような話をされてました。いずれこの国は破綻し、IMFが入るんだろうと・・

Posted by: こえだ | March 14, 2005 03:29 PM

こえださん、コメントありがとうございます。
これも覚えておきましょう。北川正恭さんは講演会で、「いずれこの国は破綻し、IMFが入るんだろう」と述べたと。
2008年かどうかはわからないわけですね。

Posted by: 山口 浩 | March 14, 2005 11:25 PM

確か年代も仰っていたんですが、それが2008年だったどうかは確かではありません。
このブログをもっと早く目にしていればもっと注目して聞いたんだけどなあ・・ザンネン

北川正恭さんの基調講演は、素晴らしく民主主義とは何か、ということを力強く語っていました。
「この国はいずれ破綻する。それは、無能な公権力行使者たる政治家がいけないのであり、その政治家を選んでいる選挙民が選挙という自らの権利と義務を放棄した結果である」という内容でした。

横道それちゃいましたね 
すみません

Posted by: こえだ | March 15, 2005 12:31 PM

こんにちわ。「覚えておこう」というためのブログは、自分の考えがブレないためにも必要ですね。TBいたしました。

Posted by: kanconsulting(かん) | April 17, 2005 12:17 AM

かんさん、コメントありがとうございます。
そうです。人の意見ってけっこういいかげんに動いていくので、自分も含めて記録しておいたほうがいいなと。だからって別に後で「ほらこんなばかなこといってるよ」と笑うためではありません。人はだれでもまちがうし、そもそも将来は不確実なものですから。このことをはっきり知っておくと、これから将来予測に出会ったときに自分がとるべき態度を考えるうえで参考になると思います。

Posted by: 山口 浩 | April 17, 2005 10:13 AM

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