トヨタが東京で工員を募集している
2005年3月27日付朝日新聞東京版にトヨタ自動車㈱の期間従業員募集の広告が出ていた。
愛知県内の同社工場の自動車製造ライン勤務だ。へええ東京でねぇ。前からやってたのかも知れないが、見たのは初めてだ。「初めての方でも安心して働けます。」だそうだ。
トヨタ自動車の業績は好調だが、それ以上に生産拡大への意欲は強い(ニュース参照)。当然、人も必要になるわけで、人員募集自体はもちろんわかる。で、気になるのだが、東京で募集というのはどういう意図なのだろうか。
閉鎖される工場がある?業界には詳しくないので、Googleでぱっと見た限りでは、最近話題になっている自動車工場の閉鎖といえば、三菱自動車の岡崎工場閉鎖(2006年予定)だ。首都圏だと、覚えているのは日産村山工場(2001年3月閉鎖)ぐらいだが他にもあるのだろうか。
当然だが、別に東京だけで募集しているわけではない。募集広告では、選考会場は東京のほか、神奈川、埼玉、千葉、栃木、群馬などの関東圏、静岡(これは当然か)、青森、秋田、岩手、宮城、福島などの東北圏、新潟や長野もある。この分だと関西や中国四国、九州もあるかもしれない。愛知県がないのが興味深いが、これは別途やっているのだろう。
待遇はというと、日給9,000~9,800円。月収にして254,430~277,040円。休憩時間を1時間とすると1日7時間半労働のようだから時給換算で1,200~1,300円ぐらいか。週休2日、無料で寮(1人部屋)に入れる。なんだかけっこういい条件のように思える。対象は18~59歳だからけっこう広い。興味深いのは「自動車製造ラインの経験がない方で49歳を超える方は、フォークリフトの運転技能講習修了が必要ということ。
「初めての方でも」というのは本気なのか?というのも気になるところだ。トヨタといえばあのトヨタ生産方式というわけだが、初めての人が大量に入ってきても大丈夫なのだろうか。海外生産なんかで「初めての人」を使うノウハウもばっちり、なのだろうか。まあ考えてみれば、今や金融機関なんかでもけっこう「初めての人」が入っているから、仕事の割り振りなんかで、それなりに運営はできるものなのかもしれない。
正社員を減らして期間雇用を増やしているといって非難する人もいる。言いたいことはわからなくもないが、ともあれ雇用機会がないよりまし、ということだけはいえないだろうか。細かいことはわからないが、ここでみる限りは、一般的な期間雇用より条件はいいのではないか、と思ったりする。企業の社会的責任で全部正社員にしろ、とかいう人は、企業にではなく政府に法制化を働きかけたらいい。ただしそのときは、それに付随する社会的コストといっしょに考える必要がある。
初回契約期間は4~6ヶ月で期間延長制度があり、最長2年11ヶ月。派遣法の関係か。正社員登用制度もあるらしい。考えられるベスト、とはいかないかもしれないが、真剣に探している方にはけっこうチャンス、ではないだろうか。保証はしないが。
The comments to this entry are closed.
Comments
行った人の話を聞いたことがあります。きっちり作業工程ごとの時間がきめられており、忙しいとき/ひまなときの時間も、ストップウォッチの秒単位で変化していくそうです。朝、5時開始とかの話も聞きました。家の事情で大学に進学するためのお金を一気にかせぐ高校卒業生とか、サラ金などで生活が破綻した若者の話も間接的にきいたことがあります。後者の場合、連絡先などの痕跡をなくしてしまえば、あとはお金がたまるだけ、とか。後者の方は、その後、現場で気に入られ、トヨタ社員になられたという話をずーっと後に聞きました。伝聞でもあり、自分が体験したわけでもないのですが、ある意味、「働く禅寺」のような、すがすがしいところなのではないかと、ふと思ってしまいました。全然別々のところから聞いた、二つのケースです。
Posted by: miyakoda | March 28, 2005 08:12 AM
トヨタのこの募集。よく見ますよ。多分今回が初めてではないと思いますけど・・・
Posted by: こえだ | March 28, 2005 02:50 PM
コメントありがとうございます。
miyakodaさん
なるほど。「働く禅寺」ですか。日々之修行也、というわけですね。そういう社風なんでしょうか。前向きな人にはいい環境なのかもしれませんね。怠惰な人には、…いづらいだろうなぁ。
こえださん
そうですか、前からやってるんですね。何事も注意していないと見落としてしまうんだな、と反省しました。自分ではかなり意識してきょろきょろ見回してるつもりなんですが、まだまだ修行が足らんということですね。ご指摘ありがとうございます。
Posted by: 山口 浩 | March 29, 2005 01:28 AM
はじめまして。期間工…というと「自動車絶望工場」か!と思っていたらそうでもないようですね。期間工さんのゆかいなサイトがありますのでご紹介します。
世紀末期間工伝説「斗与太の件」
http://kabukiso.hp.infoseek.co.jp/jupn/200402/hokuto1.html
Posted by: いずみん | March 29, 2005 03:44 PM
いずみんさん、コメントありがとうございます。
ご紹介のサイトですが、著作権的にかなりまずいですね。個人で楽しまれるのはいいでしょうが、ネットにアップするのはちょっと…。
実態をよく知りませんが、世界に冠たるトヨタの品質を生み出している人たちですから、ご本人たちがいうほどめちゃくちゃなものではないのでは、と想像します。甘いですかね。
Posted by: 山口 浩 | April 02, 2005 02:58 AM
ご高承とは存じますが、「自動車絶望工場」という著作がありますね。http://www.eva.hi-ho.ne.jp/nishikawasan/ak/kamata.htm
この著者である鎌田慧氏が3月5日の朝日新聞で自作を振り返って現在の心境を語る「自作再訪」にコメントを寄せていました。
このルポが書かれた舞台もやはり愛知県豊田市、これを読む限りでは、正社員への当用など・・・というすごい内容になっていますが・・今はどうなんでしょうか。
冒頭部分に山口様が提議していらっしゃる疑問については、要するに人手が減ってきて、キツイ単純労働に従事する人がいなくなった。高学歴化も進み、この手のルーティンワークについては全国で募集をかけないと追いつかない、ということが現状なのではないでしょうか?鉄道事業者も同じです。女性の車掌が増えてきたのは、何も男女平等の観点だけでなく「男だけではまかないきれない」という現状があることは事実です。
最後に朝日新聞に掲載された記事の末尾部分が印象深かったので引用致します。
「30年前私が応募した期間従業員募集の広告は今も新聞に掲載されている。ロボット化されていた労働者は本物のロボットに駆逐されたが、ハケンやアルバイターの先輩としてのキカンコーはますます必要とされている。トヨタの高生産と高利益を支えてきたのは工藤クンのような、もぎ取られた希望だった」
Posted by: こえだ | April 22, 2005 01:45 PM
こえださん、コメントありがとうございます。
へええ、女性車掌は機会均等系の理由かと思っていたのですが、人手不足でもあるのですか。確かに楽な仕事じゃないでしょうしね。
「もぎ取られた希望」もその通りだろうと思います。期間工の待遇も、もっと改善の余地があるのでしょう。ただ、もし今それがなかったら他に何か?という点は考えるべきかと。企業を責めても始まらないと思います。現状がベストだとは思いませんが、だからこそ未来を今よりよくするための努力を行うべきで、「昔はよかった」というノスタルジー論には与しない、というのが私の立場です。
Posted by: 山口 浩 | April 23, 2005 11:25 PM