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March 12, 2005

マンガにもプロダクトプレースメント

スポーツ用品最大手のミズノは、小学館と、小学館が出版する野球漫画「MAJOR」の主人公、茂野吾郎投手が使うグラブやバットに対する「独占的な用具提供契約」を結んだ(記事はこちら)。脇役もできるだけミズノの用具を使う。ミズノは、製品や野球教室などのイベントで茂野投手の絵や名前を使う権利も得て、茂野投手が愛用しているのと同じデザインのグラブを今夏に発売する。

マンガにもプロダクトプレースメントが行われるようになった、というわけだ。 

「独占的な用具提供契約」というが、まあ文字通りの意味ではない。作品中にミズノ製品を登場させるという契約だ。あたりまえだが。

マンガでは初めて、ということだが、プロダクトプレースメントとして別に特殊なものではない。商品を販売する企業としては、消費者の購買行動に影響を与えうる媒体ならばなんでも使いたいだろう。金を支払ってでも使いたい作品があれば、当然そうすべきで、実際そうした、ということだ。何しろ野球マンガは今やあまり多くはない。しかも野球用具を売り込みたいとすると、小学生に人気のある作品でなければならない。「週刊少年サンデー」に連載中のこの作品などは、日本人選手がアメリカでメジャーリーグをめざすというストーリーも含めて、うってつけなのだろう。

プロダクトプレースメントという観点からみると、マンガの主人公の場合、実在の選手と比べて怪我や故障、スキャンダルなどのおそれがないという利点がある。成績についても不安は少ない。映画と比べれば、マンガのほうが長く市場に出ているから、その意味でも都合がよいかもしれない。ただし、マンガキャラクターの「寿命」が実在の選手と比べて長いとは限らない。実在のプロ野球選手はプロ野球選手としか競争しないが、マンガのプロ野球選手は名探偵やらパン屋やら半妖やら魔物の子やらとも競争しなければならないのだ。

マンガは現実に縛られないから、誇大広告になるおそれがないでもない(「このバットを使うと飛距離が30%アップ!」とか)が、この作品の性質からみてもまあそんなことはなかろうし、ミズノもそんなことを求めたりはしないだろう。

ちょっと視点を変えてみる。

これまでも、マンガに実在の商品が登場することは当たり前にあった。典型的なのは自動車やバイクなどに関するマンガだ。その昔は「サーキットの狼」なんていうのがあった。今だと何だろう?「頭文字D」か?バイクでは、「あいつとララバイ」とか「バリバリ伝説」といった懐かしいあたりを思い出す。さらにいえば、「巨人の星」のようなマンガも、マンガの中に「巨人軍」という実在の球団を登場させることで世界観をかたちづくった。

これらのマンガに登場する実在の商品は、マンガのキャラクターを理解する「属性」として使われた。「ハマの黒ヒョウ」はランボルギーニ・カウンタックと、「巨摩郡」はホンダCB750と結びついて、「そういう奴」と理解された。つまり、マンガのほうが実世界からイメージを「借り」ていたわけだ。

しかし今回の動きは、それとは逆で、実在の商品がマンガの力を「借り」ている。「あのミズノを使う茂野吾郎」ではなく、「あの茂野吾郎が使うミズノ」というわけだ。これは映画で「あのジェームズ・ボンドが乗るBMW」と同じだ。つまり「どちらが消費者にアピールするか」という「力関係」が逆転したのだ。

ただし今回のミズノのケースでは「茂野モデル」のグラブを売り出すわけだから、「従来型」の部分も残ってはいる。そこらへんは「BMWのボンドカー」とはちがう。さすがに「BMWジェームズ・ボンド・モデル」はないだろうし。あ、でも「バリバリ伝説」では、主人公のかぶるヘルメットと同じデザインの「巨摩郡レプリカ」が発売されていたっけ。まあこのへんが限界事例だろう。

今回の「逆転」は、将来の方向性を考えるうえで重要な例だと思う。商品とコンテンツとの関係は、これまで商品が強かったところから、コンテンツ側にシフトしてきている。今後はよりバランスされたかたちで発展するだろう。互いが互いのメリットになるような関係を模索するようになるのではないだろうか。

などということをつらつら考えているうちに、プロダクトプレースメントとキャラクタービジネスの関係がちょっと混乱してきた。誰かが既に考えているのだろうが、別の機会に整理してみたい。

※このニュースについては、「ビタミンX」さんのところでいち早くとりあげていたので、トラックバックしておく。

警察署がマンガのキャラクターをマスコットに採用した、というニュースも出ていたのでここに加えておく。


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Tracked on March 15, 2005 06:14 PM

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