海の男は国際派、海の女も国際派
まずはニュースを引用しておく。
[読売新聞社:2005年03月24日 14時36分] ・・・大島南高校は1学年約40人の全寮制で、「普通科の2倍」という英語教育や旧実習船に乗り込んでの海外研修も計画されている。 都教委によると、同校は漁師の師弟を対象に1971年に開校したが、近年、水産業への就業が激減していた。水産科の廃止を機に、「国際科に大胆に変身して、諸島部の新たな進学校を目指すことにした」(都教委の担当者)という。 改編案には、英語の授業を「週11時限」まで増やすことや、TOEICの全員受験など厳しい語学教育が盛り込まれた。 このほか、2学年からは専攻を「国際社会」「国際海洋」に分類。自然・環境系学科への進学を目指す国際海洋では、沿岸での気候・潮流の観察など環境調査の体験実習も計画されている。 また、同校が所有する実習船「大島丸」はそのまま残し、南海の島々への渡航に利用する。現地の学校を訪問して国際交流をはかる予定で、都教委では「単なる旅行ではなく、必修単位としたい」としている。
さて。
たしかに水産業への就職希望者は今や多くはないのだろう。「諸島部の新たな進学校」というコンセプトがどのくらい中学生たちにアピールするかは知らないが、少なくとも、「海で鍛えられた高校生」なんていうのは、かっこいいではないか。期待できそうではないか。のほほんと育った自分が言ってもまったく説得力がないが、若いうちに甘えの通じない厳しい世界での試練を受けるというのは、なかなかいい教育のやり方ではないか、と思ったりする。
ニュースを見て「海の男だかっこいいじゃん」などと勝手に盛り上がりながらサイトをのぞいてみたら、2003年4月現在で、総生徒数140人のうち49人が女子だった。普通科と海洋科があるのだが、海洋科だけとってみても、総生徒数119人のうち41人が女性だ。3割以上が「海の女」なのだ。「海」と聞いて「男」と反射的に連想してしまった自分の「内なる男女差別意識」を目の当たりにして恥じ入りながらも、再び脳天気に「海の女なんてもっとかっこいいではないか」と盛り上がってみる。実際、女性の乗船服は男性のと同様、というかそれ以上にかっこいいのだなこれが。
入試状況をみると、2003年度一般入試で平均1.76倍。都立高校としては決して悪くない数字だと思う。諸島部の都民のための教育機関という要素もあるし、あまりエリート主義に走ってもどうかとは思うが、逆にエリート養成校のようなものを考えるときに、こういう立地、こういう教育内容というのは、悪くないのではないか。何しろ記事にあった実習船「大島丸」は、全長:56.28m、総トン数:497.0トン、最大速力15.04ノット、定員45名だ。これに乗って環境調査、なんていうのを経験してしまったら、人生変わるな、きっと。このほかにも、高速実習船「みはら」(全長18.0m、総トン数19.0トン、最大速力21ノット、定員23名)やヨットやジェットスキーに至るまで、いろいろな実習船を保有している。
興味を持った中学生諸君(中学生がこれを見ているかどうか知らないが)にひとこと。同校サイトの入試案内ページにはこうある。
※注意事項 入学者選抜への応募に際しては中学校の担任の先生と充分相談し、間違いのないよう留意してください。
まあそりゃそうだろう。国際科に鞍替えになっても、島で全寮制で3年間となれば半端ではない。それなりの覚悟をもって応募されたい。
The comments to this entry are closed.
Comments
大島南高校海洋科を受験したいのですがどのくらいの学力レベルか知りたいのですがご存知の方教えてください。
Posted by: tasiro | January 09, 2006 11:23 PM
tasiroさん
私はそのご質問に答えるには適任ではありません。tasiroさんがもし中学生なら、担任の先生にご相談いただくのが一番だと思います。
もしこのサイトをご覧の方で、事情をご存知の方がいらっしゃったら、コメントなどいただければ、とは思いますが、情報源のはっきりしない情報を鵜呑みにするのは、必ずしも賢明なことではありません。もし何か情報があっても参考程度にとどめておいたほうがいいと思います。
受験、がんばってくださいね。
Posted by: 山口 浩 | January 09, 2006 11:44 PM
山口 浩様
貴重なご意見どうもありがとうございました。
私自身大島南高校の情報が不足していまして、判断に窮してるところでした。ご意見のとおり、先生を通じて情報や不安を自分なりに考えて見ます。どうもありがとうございました。
Posted by: tasiro | January 12, 2006 01:02 AM
tasiroさん
大切な選択ですからね。ただ、人生を多少長く生きている者として、(1)過去は変えられない、変えられるのは現在と未来だけ、(2)やらないで後悔するよりやって後悔するほうがずっといい、(3)どんな選択をするかよりも、その選択の成果をよりよくするためにどうしたらいいかを考えたほうがいい、ぐらいのことはいえると思います。
がんばってくださいね。
Posted by: 山口 浩 | January 12, 2006 09:11 AM
初めまして、私は25年程前に大島南高校海洋科を卒業した者です。何となく検索をしてみたら、私の卒業した学校の名前が無くなってしまうと聞きました。学校のホームページには、同級生とのサイパン遠洋航海での写真が載せられています。名前が変わる・・・無くなる事はとても寂しいですね。僕らには海洋科○○期生と、もう1つ水産科○○期生という肩書があります。卒業生の殆どが海洋科という名を使わずに”水産科”という言葉を使います。全寮制の縦社会の学校でしたから、苦しい思いもしたし、何度退学をしようと思ったことか・・・でも、卒業までの3年間に経験したことは、40歳を過ぎた今も心に残っていますし、無駄だった事は1つも無いです。今の生ぬるい教育方針では絶対に成り立たないような東京都唯一の高校でした。本当に寂しいです。長々と書いてしまってすみません。それと、上でコメントしているこれから高校に進むと思われる方へ・・・僕らが在校している頃には、入学するよりも卒業するほうが困難でした。でも、その先にあるものはこれからの社会生活にきっと役に立つ事と信じています。自然の中に自分を置いてみることは決して無意味なことではありませんから。
Posted by: 卒業生代表じゃないが! | January 29, 2006 11:21 PM
卒業生代表じゃないが!さん、コメントありがとうございます。
卒業生さんですか。卒業された学科がなくなるのは残念ですね。ただ、学校自体がなくなるわけではないですし。いやほんと、ここでこういうコメントをされる卒業生がいらっしゃるということからみても、いい教育をされていたのだな、とわかります。今後もこうあってほしいですね。
Posted by: 山口 浩 | January 30, 2006 02:18 AM