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April 12, 2005

続編の作り方:総論1.類型

コンテンツビジネス、特に映像系コンテンツの事業展開において、ひとつの事業機会からいかにして最大限のキャッシュフローを引き出すかは重要な経営課題だ。資金を出す側にとっても、そのコンテンツにからむビジネスが今後どのように展開していけるかは、投融資の判断基準として決して軽視できない。

コンテンツビジネスにおける「n匹めのドジョウをねらう手法」について、体系化された知識があったらいい、と思った。クリエーターのための方法論ではなく、ビジネスマンのための判断材料として。

というわけで、新シリーズを立ち上げてみようと思う。題して「n匹めのドジョウをねらうコンテンツ」。

ひょっとして、こういう方法論はもうどこかにあるかもしれない。アメリカのフィルムスクールあたりで教えてるかも。申し訳ないが不勉強でそのあたりは知らない。もしあったらぜひご教示いただきたい。で、もしそれが充分使えるものであったら、このシリーズはこそこそと撤収する。もしなかったら、つらつら考えることにはそれなりの意味があるわけで、ぼちぼちとやっていきたい。

コンテンツにもいろいろあるが、ここではおそらく、関心の大半が映像コンテンツに注がれることになるだろう。個人的な嗜好により、ややアニメに傾くことになるかもしれない。音楽やら小説やらを差別するわけではないが、「n匹めのドジョウ」ビジネスの普及状況を考えれば、まあ穏当なところではないかと。

ここでいう「n匹めのドジョウ」とは、オリジナルのコンテンツの世界観やキャラクター、ストーリーなどを生かして作る別のコンテンツを指す。ひとつのコンテンツをビジネスとして展開していくには、それなりの投資を要する場合が多い。制作そのものもそうだが、ディストリビューションや宣伝、関連グッズなどの展開にも投資が必要だ。しかも、一度できあがったコンテンツへのイメージは、しばしばブランドと同じようにかなり長い間続く場合がある。で、そうしたイメージは、後に続くコンテンツからみれば、ヒットへの大きなカギになる。新たなコンテンツが世界観やらなにやらを普及させるためにさまざまな努力をしなければならないのに比べて、「n匹め」はすでにできあがったものを利用できるから有利だ。

おそらく、総論と各論とを分けていくべきだろう。まず総論を少し考えてみる。はじめから体系があるわけではないので、順不同。総論、各論、とりまぜて進行していくことになるのではないかと思う。

まず第1回め、総論1.は、「n匹めのドジョウ」の類型について。

要は、「n匹めのドジョウ」にはどんな種類があるか、という整理だ。いやもとよりそんなたいそうなものではなく、思いつきレベルといっていい。思いつくままに、少し挙げてみる。思いつきだから、必ずしも整合的ではないかもしれないが。

(1)終わらない物語
「n匹め」も何も、オリジナルがどんどんどんどん続いて終わらない場合だ。人気のテレビシリーズによくある。この中には、少なくとも2つのパターンがある。

(1)-a. 永遠の日常
日常生活が延々と続いていくパターンだ。大半は1話完結式となっている。典型例としては、「サザエさん」「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(テレビシリーズは終わっちゃったねぇ)「ポケットモンスター」「アンパンマン」「パタリロ!」など。この種のものは、どちらかというと物語としての盛り上がりを作りにくいが、例外もある。中でも「ポケットモンスター」は、一見次の「成長の物語」系のように見えるが実は主人公が成長しないという面白いパターンだ。ゲーム、テレビアニメ、映画、グッズなどの複合的な展開で、盛り上がりと日常をうまく共存させていて非常に興味深い。

(1)-b. 巻き戻る時計
時間が経過していったはずなのに、いつの間にか元に戻っているパターンだ。典型的なのは「名探偵コナン」。小学1年生が夏休み、冬休みと来てまた春が来れば2年生になるはずだが、なぜかまた1年生に戻っている。そういえば昔NHKでやっていた「あずきちゃん」も、主人公の小学校5年生が4月になるとまた5年生に戻っていたりした。原作マンガでは主人公は成長したんだが。


(2)成長の物語
主人公が成長していく物語だ。この場合、いつまでも話を続けるのは難しくなる。相当長期間にわたるものもあるが、いずれ終わる運命にある。

(2)-a. 永遠の階段
どんどん相手が強くなるパターン。スポ根ものの基本だ。強敵を1人倒すとさらに強い敵が現れる。「ドラゴンボール」や「ターミネーター」あたりもそうだろうか。映像ではないが、トム・クランシーのジャック・ライアンものもこんな感じだった。CIA分析官から始まってどんどん出世していき、最後は大統領にまでなっちゃったわけで。当時、この次は「pope」にでもなるのかね、などと軽口を叩かれていたっけ。などという時事ネタはともかく。

(2)-b. 大河ドラマ
成長は、必ずしも「強く」なる方向とは限らない。人間としての成熟とか、そういったかたちでの成長を描くものがある。実写の映画やドラマでもこの手法は使われる。アニメとちがって、俳優は歳をとるからだ。たとえば、「北の国から」「踊る大捜査線」「スターウォーズ」シリーズ、「ハリー・ポッター」シリーズ、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ、「ER」シリーズあたりはこの類だろうか。「ドカベン」「あぶさん」もこれだな。少女マンガ系にもよくある。敵が強くなるというよりは、自分が成長していくというドラマ。「カードキャプターさくら」なんかはこれか。

(2)-c. ウラシマ効果
何しろストーリーが進まないもの。なんといっても「ガラスの仮面」。1976年、「花とゆめ」創刊号で連載がスタートしたこの作品。このとき13歳として設定された北島マヤは、本来なら私とほぼ同年齢のはずだが、昨年末に発売(6年ぶり!)された42巻でもまだ20代前半、らしい。あと何年たったら紅天女役が決まるんだ?(情報源はファンサイト「千の仮面」ほか)


(3)後日譚
その後、を語るもの。

(3)-a. 新しい仲間
それまでのキャラクターに、新たなキャラクターを加えてちがったストーリー展開を可能にするもの。「ふたりはプリキュア」「おじゃ魔女どれみ」なんかはこのパターンだ。キャラクタービジネスには必須かも。

(3)-b. 人生山あり谷あり
その後何があったかをつないでいくもの。「ガンダム」シリーズにはこの流れがある。うらぶれたシャアの悲哀に涙せぬ者はいない。変わったところでは、「のらくろ」を挙げておきたい。猛犬連隊に二等兵で入隊して大尉にまでなったのらくろは、戦後は除隊して喫茶店のマスターとなる。その後のらくろの孫を主人公にした「のらくろクン」まで作られたのはご愛嬌。そういえば「ドカベン」とか「あぶさん」なんかもそうかも。野球だと「巨人の星」なんかも右投げで復活したりしたよなぁ。


(4)パラレル・ワールド
世界観、キャラクターを利用しているが、オリジナルとは異なったもの。

(4)-a. サイド・ストーリーズ
同じ世界観、キャラクターを使いながら、オリジナルとはちがう物語を作るもの。「踊る大捜査線」でサブキャラだった真下や室井を主人公にした映画が作られたのもそれ。マニアックなところでは、たとえばマンガ「あずきちゃん」のサブキャラのかおるちゃんを主人公にした「かおるちゃん」もある。主人公が死んでしまった場合などもこうした例になる。「攻殻機動隊」のテレビシリーズなどは、原作や映画の流れからみれば、まさにパラレル・ワールドでのサイド・ストーリーだ。

(4)-b. スター・システム
別の作品のキャラクターが、あたかも映画スターのように別の作品に登場するもの。
一連の手塚治虫作品は有名。それ以外にも、「ツバサ・クロニクル」は「カードキャプターさくら」のキャラクターが総出演だし、「名探偵コナン」に登場する怪盗キッドなどはこの例に入るかも。「となりのトトロ」に出てきたススワタリが「千と千尋の神隠し」にも登場したのは、「スター」といえるかどうか別として、まあこの例だ。

(4)-c. ねじれた世界
設定はちがうが、主人公同士はなぜか兄弟、なんていうのがある。いやウルトラ兄弟シリーズのことをいっているのだが。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」までは、兄弟にする予定はなかっただろうと思う。「帰ってきたウルトラマン」になってから、「ウルトラ兄弟」というコンセプトが作られた。で、「帰ってきた」にはMATという組織(Monster Attack Team:怪獣攻撃部隊という意味らしい)が出てくるが、じゃあ「「ウルトラマン」の科学特捜隊や「ウルトラセブン」の地球防衛軍はどこへ行ったのだ?というわけで、ヒーロー側は兄弟で連続性があるのに、地球側ではパラレルワールドなのだ。


(5)終わっても終わらない
いったん終わらせたはずのストーリーがまた復活することがある。

(5)-a. 奇跡の生還
主人公が死んでしまっても心配ご無用。奇跡的に生還してしまえばいいのだ。有名なのはシャーロック・ホームズ。「13日の金曜日」って見たことないけどこの類か?

(5)-b. 昔ばなし
オリジナルのストーリーの前の時代に何があったかを綴るスタイル。「スター・ウォーズ」のエピソードI、II、IIIはこれ。「ルパン三世:ファースト・コンタクト」もそんな感じ。

(5)-c. 残された人々
オリジナルのストーリーで主人公が死んでしまったりいなくなってしまった場合、続編ではオリジナルのサブキャラ等が主人公となる場合がある。典型例が「イノセンス」。

(5)-d. もう1人いた!
前に死んだはずのキャラクターと同じようなのがまだいた、という類。念頭においているのは「ジョーズ」シリーズ。「エイリアン4」でDNAからクローン人間としてよみがえるリプリーなんてのもこの類か。


(6)リメイク
同じテーマで再度作品を作るもの。ある程度期間が経過した後でないとできない。オリジナルをどの程度受け継ぐかについては千差万別。よく考えてみると、「水戸黄門」シリーズは、ある意味でこのカテゴリーにはまるかも。


(7)モチーフいただき!
オリジナルのモチーフを別の作品で生かすものの、リメイクというにはちがいすぎてる場合。これも千差万別。「攻殻機動隊」と「マトリックス」の関係なんかはこれにあたるだろうか。それ以外にも、よくあるまねっこものはこれに含めるべきか。


とりあえず思いついたのはこのあたり。他にもあるだろう。カテゴリ分けが不適切なのもあるだろうし、複数のカテゴリーに入るものも本当はあるはず。もし「こんなのがあるぞ」と思いつかれたらぜひご教示いただきたい。

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Comments

パラレルワールドや続編の一種かもしれませんが、関連作品の登場人物全員集合なんていうのもあるかもしれません。

小説だとロバート・A・ハインラインの晩年作(獣の数字、ウロボロスサークル、落日の彼方へ向かって)など。ルブランのルパンvsホームズなんていうのもそうかもしれません。

映画だとエイリアンvsプレデターかな。

特徴は、パラレルワールドではなく個々の作品の設定、キャラクタ、世界観をそのまま利用していることです。

Posted by: 四十九次 | April 12, 2005 12:10 PM

sequelってのが続編。スターウォーズみたいにさかのぼるprequelってのもあるみたいですね。

Posted by: miyakoda | April 12, 2005 02:05 PM

四十九次さん
「全員集合!」ですか。なるほど、ありますよねぇそういうの。ありがとうございます。

miyakodaさん
そうか、prequelっていうんですね。ありがとうございます。

Posted by: 山口 浩 | April 12, 2005 10:56 PM

コンテンツの対象を映画に絞ると、「男はつらいよ」シリーズ・・・確か48作って凄いのでは。n匹の、ではないかもしれませんが。

これは終わらない日常と、庶民派(死語)と、恋愛相手が変わるという強度なパターンの組み合わせなのでしょうか。

Posted by: yoshi | April 13, 2005 01:42 AM

yoshiさん
コメントありがとうございます。「男はつらいよ」は確かにすごいですね。47匹ドジョウがいたわけで。「終わらない日常」型は、実写だと登場人物の加齢という点で難しいものがあります。寅さんも最初は自分が恋してたわけですけど、最後のころは若者を応援するストーリーになってましたよね。ここらへんの工夫が実写の場合には必要なんでしょう。

Posted by: 山口 浩 | April 13, 2005 03:06 AM

リメイクといえば、歌舞伎や狂言、演劇、ミュージカル、オペラなどの舞台ものの分野だと同じ題目を誰が演ずるのか?誰が演出するのか?の違いだけで観客を呼べる場合がありますよね。

あと、年末お馴染「忠臣蔵」でも筋立ては一緒。演者が違う。

話に観客の興味があるのではなく、演者や演出に興味が集中しているコンテンツというものもありますね。これは、n匹目のドジョウの話とは違うかもしれませんが。

Posted by: 四十九次 | April 13, 2005 10:08 AM

キャッシュフローのとても長いコミックに「ゴルゴ13」があったので追加します。

1969年から35年間休まず連載しているそう。知りませんでした。挙げられていた類型にはないような気もします。
ヒローものですが、終わらない(解消しない)時事情勢と、デューク東郷という独特のキャラ設定によるものなのかな、と。

Posted by: yoshi | April 14, 2005 12:17 AM

コメントありがとうございます。

四十九次さん
歌舞伎とか狂言とか、あと典型的なものでいえばクラシック音楽なんかはいわゆる再現芸術ですね。こういう場合はリメイクとかいうのとはちがいますが、今後映画のネタが尽きてリメイクばかりになってしまうと、映画も再現芸術化することになるんでしょうか。

yoshiさん
「ゴルゴ13」かぁ。確かにそうですね。似ているのでは「ルパン三世」がありますね。あれもマンガの連載は70年代の初頭だったのでは?こういうのは何ていうんですかねぇ。周りは変化するのに自分は歳をとらない「不死鳥型」とでもいうんですかね。

Posted by: 山口 浩 | April 15, 2005 10:34 PM

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