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「コンテンツ再生機構」でみなし子コンテンツを救おう

ちょっと前のLessig blogに、「孤児作品 (Orphan Works)」に関する記事が出ていた(オリジナル記事はこちら)。Orphan Worksに関するアメリカ著作権局からの問いかけへのコメントの話だ。クリエイティブ・コモンズは106ページもの長文のコメントを提出している。

日本ではどうだろう、という思いつきから出たなぐり書き。

あ、最初に書いておくが、orphan worksとは、簡単にいえば、権利者の所在がわからない作品のことだ。CNETの記事には「孤児作品」との訳がついていたが、私は純粋な好みの問題で、「みなし子コンテンツ」という表現をしたい。権利者がわからない以上、使用の許諾を受けられず、再利用は進まない。さてどうするか、という問題だ。

日本でもこうした問題は昔からあった。昔のテレビ番組などでなかなか商品化できないものがあったりするのはそのせいだと聞いている。たとえば「宇宙戦艦ヤマト」や「キャンディ・キャンディ」のように権利者間の争いがある場合、利用は難しくなる可能性が高い。それに、権利者がそもそも行方知れずになってしまうことだってめずらしくないのだ。法人が権利者の場合、倒産し清算された際に、価値のないものとされたみなし子作品は、売却されることもなく放置されるおそれがある。製作委員会方式は任意組合だから、再利用しようとすれば権利者の承諾がいる。もとの構成員企業がなくなっていたり、他の会社に吸収されたりしていると、仮にその存在はわかっても、担当者がいないなどの理由で、再利用が進まないなんていうこともあるのではないか。

今ふうの問題点もありうる。これからコンテンツの証券化やら組合スキームやら信託やらを使った資金調達がますますさかんになるだろう。ゴンゾの「バジリスク」ファンドなどでは、最終的には権利はゴンゾに帰っていくスキームになっている。それはそれでいいことなのだが、すべてのコンテンツがそうした「手厚い」扱いを受けられるとは限らない。ただ権利を保持しておくだけでも、それなりに経費がかかったりするはずだ。森さんなどは、SPC解散後の受け皿機関が必要と主張されている。特に今のように、記録媒体が日進月歩で進んでいく中では、媒体の世代交代コストなどはばかにならないだろう。結果として「捨て子」になってしまうコンテンツが出てくるのではないか。

こういうものこそ「市場の失敗」に属するものであり、政府の出番だ。諸外国ではコンテンツ振興政策として、制作資金への援助を行う例も少なくないが、もともと競争力のあった日本のコンテンツ産業においては、必ずしも得策とはいえない。政府には政府の役割がある。みなし子コンテンツ問題は、まさにそうだ。「コンテンツ再生機構」でも何でもいいが、公的な機関で権利整理を行う機能を持つべきだ。民間企業が負うべきコスト負担を、といった堅いことはいうまい。博物館と考えればいいではないか。

権利者のわからないコンテンツに関して、遺失物の処理のように、みなし子コンテンツの再利用の申請に応じて、公告など一定の手続きの上でパブリックドメインに移行し、そのまま権利を維持して、一部の権利につき申請者に利益が落ちるしくみにする、なんていうのはどうだろうか。もちろん事後でも元の権利者が名乗り出れば、その収益を還元する。権利の帰属に争いのある場合は、裁判所との連携で迅速に決着をつけるようはかる。売れないコンテンツを抱えた企業から、安い値でコンテンツを買い取り、再事業化を狙う。それ以外にも、コンテンツとその権利者を登録したデータベースを持つといい。コンテンツ版JASRAC、といったところか。とにかくコンテンツの利用促進をはかる方向で行動する機関とするのだ。

今は国会図書館でも電子図書館構想が進んでいるらしい。これは基本的に「保存する」を主眼とした構想だ。上に書いた「コンテンツ再生機構」は、アーカイブ機能を前提としていても、より能動的な活動をするような、むしろ産業再生機構や整理回収機構のような色彩を持たせるべきだろう。

こういうの、「コンテンツ立国」にふさわしいと思うがなぁ。

関連リンク:
Orphan Works」の運営は次の3つの団体が行っている。
Free Culture Movement
EFF
PublicKnowledge

※追記
シルチョフさんからコメントをいただいた。多謝。いわれているのは、著作権法の裁定手続きのことだと思う。この手続きはこれまでほとんど使われていなかった。要件がよくわからんし手続きもめんどくさいし。しかしこの3月、利用条件が緩和され、裁定申請の手引書も公表された(ニュースリリースはこちら)。新しい情報を反映していなかったのは私の調査不足で申し訳ない。上記の記事は、こうした「みなし子コンテンツ」対策と、民事再生機構みたいなのとJASRACみたいなのと国会図書館みたいなのが入り混じっていて、何がいいたいのかはっきりしないのが読み返すとわかる。要はそういう機能をまとめた機関があったら、ということなのだが、だったら「コンテンツ再生機構」というタイトルはまぎらわしい。こういうとき、本当に自分の未熟さを自覚する。

※追記
関連記事:「goo、過去の人気テレビドラマを配信--複数の権利者がいる番組はまだ無理

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Comments

合理的な労力の範囲内で権利者が見つからない場合は申請して一定の手続きを踏めば利用できる、という制度は今でも一応存在してますよね。ろくに使われてないからもっと使いやすく法整備すべきだけど。

Posted by: シルチョフ | April 09, 2005 at 03:44 PM

シルチョフさん、コメントありがとうございます。
著作権法67条ですね。すっぽり抜け落ちてました。すいません。ご指摘ありがとうございました。
今度の新しい手続きですが、これで改善しますかね?こういうのって、制度を作る側と使う側で考えてることが全然ちがったりするので、使う側の意見って聞きたいなぁ。
それから、森さんと話してて一致したのは、「みなし子」になる前の段階が重要ではないかということ。その段階で気軽に利用できるしくみ作りが。そのときは、安心して成仏できる「コンテンツのお墓」なんていってましたけど、将来の復活を期するわけですから、お墓というよりピラミッドみたいなものかもしれませんが。

Posted by: 山口 浩 | April 10, 2005 at 01:40 AM

今回の緩和も
・個人や小規模企業あるいは青空文庫のような活動ではとても使えなくて、あくまで相当のコストを払えるビジネスが対象。
・みなし子コンテンツの再生そのものを振興する/できるのではなく、映画などの大プロジェクトで権利関係の障害が判明したような場合を想定。

とはいえ、新聞雑誌への広告掲載要件がウェブだけでもよくなったり、権利者探し窓口にもウェブを使うというのは方向としてとても正しいというか希望が持てます。

将来的にはもっとコストを下げて、誰でも使える&みなし子再生そのものを振興できるようなかたちに立法でもっていければいいのですが。

最悪でも、映画以外の著作物も70年に延長するようなことになってしまったときには何らかの対策を抱き合わせるようにもっていかなきゃなあ、と思います。

Posted by: シルチョフ | April 10, 2005 at 02:43 PM

シルチョフさん、再びコメントありがとうございます。
やはり決め手はコスト水準、ですかね。
圧倒的に下がれば、参加者の層も変化して、全体に質的な変化をもたらす可能性があるかもしれませんからね。

Posted by: 山口 浩 | April 11, 2005 at 11:05 AM

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